ILC NewsLine 2009年11月5日号 [英文記事]
■特集記事
神秘的な宇宙-アルバカーキへ
大勢の聴衆を引き寄せた一般講演
(The mysterious Universe – brought to Albuquerque
Public
lecture draws impressive crowd)
10月1日にアルバカーキ大学で開催された一般講演を行ったJim Brau氏(Brau氏はオレゴン大学教授であり、ILC物理測定器研究の米州地域コンタクトでもある)は、特に若い観衆に来てもらいたいと考えていた。もっともそれは、ティーンエイジャーや大学生を念頭においてのもので、7才の子供までも考えての上のことではなかった・・・。しかし、Brau氏の言葉は最年少ファンにも素粒子物理学をきちんと伝えたようである。-Abigail Zwartzさんは、熱心に取ったメモを、翌日学校で発表するほど、彼の講演にひきこまれたというのだ。
Brau氏の講演は、リニアコライダー・ワークショップ(正確には、アメリカ線形加速器物理学グループ会議:ALCPG09)中に開催された一般講演のはじめに行われた。「宇宙の神秘-粒子加速器で探る私たちの世界-」というタイトルの講演は、素粒子物理学に留まらず、周辺分野、ガリレオ、ニュートン、アインシュタイン、宇宙論、空間と時間、粒子、力、反物質、ダークマターとダークエネルギーなど全ての世界へ誘う、1時間の冒険物語であった。もちろん、これは次世代の素粒子物理学の大型プロジェクトを念頭においてのものである。今月、稼働再開予定の大型ハドロンコライダー(LHC)、そして近未来の将来計画、ILCのことである。ニューメキシコ大学の人類学部の講堂で開催された一般講演には、多くの大学生、地元の天文クラブのメンバー、物理学教師、そして、もちろん、Abigailさんと彼女の両親など、100名以上が集まった。(Abigailさんの母は素粒子物理学者で、ワークショップの主催メンバーであり、一般講演も主催したのSally Seidel氏。)人目を引くポスターが作られ、この講演を宣伝するため数日のあいだキャンパスで掲示された。いや、されるはずだった。どうやら告知ポスターは学生たちのあいだで余りに人気を博し、ほとんどが一晩で掲示板から消えてしまったそうである。
この一般講演は大変に好評だったので、今後もリニアコライダーの会議に合わせて、同じような催しが行われることだろう。講演を引き受けてくださる方は、コミュニケーターまでご連絡ください!講演会は現地語で行われるので、プレゼンをしたり、真空、粒子、ブラックホール等についての質問に答えるときに何語で対応できるか、なども教えてください。
Brau氏は、1時間にわたり、基礎から始まって、仮説と実験を組み合わせ、様々な理論の位置づけを行い、今後の物理学の中心課題について話した後、アインシュタインの言葉を引用し、講演を締めくくった。「最も美しい経験は、神秘的なもの。そしてそれこそが、真の芸術や真の科学の揺りかごとなる根本的な感情だ」
- 「宇宙の神秘-粒子加速器で探る私たちの世界」のスライドはこちら。
- ポスターのダウンロードはこちら。
[英文記事]
■世界の各地より
Fermilab Todayより:SRF冷凍機システムは、なぜクール(冷たい、格好よい)なのか
(From Fermilab Today: SRF cryogenics system proves its 'cool' factor)
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| 最近、エンジニアは、2K(摂氏-271℃)まで、このSRF試験ユニットを冷却した。 |
米国フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)は、超伝導RF(SRF)の専門技術の獲得にむけさらに一つの重要マイルストーンを通過した。
10月初め、新ミュオン実験棟のRFユニット試験設備の冷凍機システムの初のテストで、Fermilabは、超伝導前段加速空洞の絶対温度2度(2K:摂氏-271℃)までの冷却に成功した。これは、構想中のプロジェクトXなどの次世代加速器で使用が想定されている空洞の運転に必要な低温である。このテストの成功で、新試験設備での冷凍機システムは完了した。「テストの成功によって、システムがきちんと機能し、仕事に自信をもってよいことが証明されました」と、エンジニアのJerry Leibfritz氏は語った。
今後、まず、空洞一台を格納できるこの小型クライオモジュールを使って、新ミュオン実験棟に最近設置された冷凍機とRF電源システムのテストが行われる。次に、FermilabはプロジェクトXやILC用で使われるのと類似のクライオモジュールの試験も行う予定である。
この極低温設備の建設にあたっては、予算制約のため、担当者たちは、Fermilabのテバトロンからの部品を使い回し、また、トーマス・ジェファーソン国立加速器施設(J-lab)から巨大な真空ポンプの払い下げをうけた。今後は、米国の再生・再投資法による予算拠出により、Fermilabでは新ミュオン実験棟に隣接した敷地に、劇的に能力を増強した大規模な極低温設備が建設される。
クライオモジュールの制作・試験を行う施設は、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)に大規模なものがあり、また、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)でも稼働・拡張中である。米国では、Fermilabが、一台数百万ドルもするILC型クライオモジュールの制作・試験を行うことができる唯一の研究所である。Fermilabでのこの設備立ち上げは、DESY、INFN、KEKやアルゴンヌ国立研究所、J-lab、スタンフォード国立加速器研究所、コーネル大学などの内外のパートナーによる協力で可能となったものである。[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
CLICワークショップ報告
(Report on the CLIC workshop)
9月に米国アルバカーキで開催されたALCPGとILCの合同ワークショップの目玉は、Jean-Pierre Delahaye氏によるコンパクトリニアコライダー研究(CLIC)についての講演だった。彼は、CLICの状況と計画について非常に素晴らしい解説を行い、ILCからの観衆に好評を博した。これは、CLICとILCという2研究グループ間でのコミュニケーションと協調をより円滑にする活動が、さらに一歩進んだことを示すものだ。お礼に、私は、10月12日に欧州合同原子核研究機構(CERN)で開催されたCLIC09ワークショップでILCの状況と計画について講演した。アルバカーキでのDelahaye氏と同じように、私はCLICワークショップでも手厚いもてなしを受け、CLICの観衆と意気投合することができ、光栄であった。この熱心な研究者グループは、同じ究極の目標をもち、LHCを補完する私たちの次世代レプトンコライダーに取り組んでいる。個人的には、ワークショップに参加したことが、CLICの効果的な短期集中コースとして役立った。そこで私はワークショップでうけた個人的感想をいくつかお伝えしたい。
今回のワークショップでは、2つのトピックが際立っていた。一つは、概念設計報告書(CDR)の2010年中の完成にむけた詳細な活動計画。もう一つは、CLICコンセプトを支える2ビーム加速方式の実現可能性を実証するためにCLIC試験設備(CTF3)で進められている野心的な実験である。LCにむけた測定器研究と多くの相乗効果をもたらしているCLIC物理学測定器の開発状況については、山本均氏がILC NewsLineで既に触れている。
CLICのCDRは、技術的な詳細さにおいて、2007年に作成されたILC基準設計報告書(RDR)に対応する、とのことである。RDRは、計画概要、加速器、物理・測定器の3巻から成る。しかし、ILCのRDRとは対照をなすのは、CLICのCDRでは、2ビーム実現可能性の試験結果の文書化が強調されている点である。ILC RDRがSCRFに基づいた加速器の概念設計を提示したところように、CLIC CDR は、二ビーム加速の考え方に基づいた加速器の概念設計を論ずることになる。留意すべきなのは、ILCとCLICでは基本技術が大きく異なってはいるが、コスト、性能、リスクなど、多くの重要な比較参照箇所があるところである。私たちは合同ワーキンググループ(ディレクターズ・コーナー6月18日号参照)を結成し、どのような点で、どのような比較を行えばよいのか検討をおこなうべく、対話を始めているところである。CLIC CDRは、2011年前半にCERN理事会が重大な決定をするうえでの材料を提供する、非常に重要なマイルストーンである。CERN理事会は、CLICに関して、2016年までの複数年を通ずる技術設計に着手するか否かを決定することになっている。技術設計に加え、R&D、コスト対パフォーマンスの検討、エンジニアリング最適化、工業化といった課題についての作業が続けられる。CLICの指導部の見解では、この技術設計フェーズを経て、2020年代半ばのタイム・スケールで、CLIC建設に関する決定が可能になろう、とのことである。
建設準備にむけた私たちILCのアプローチは、多少異なっているので、コメントしておきたい。ILCでは、類似タイプのシステム運転やビームテストを重視している。その最初のものはDESYのFLASH施設であり、ここからは非常に多くのことをすでに学んでいる。また、より長期的には、ILCクライオモジュールを運転し、ビームテストを行う施設として、FermilabとKEKの両方で試験設備の建設のためにに大きな投資が行われている。
CTF3試験の成否は、CLIC技術をベースにレプトンコライダーの設計が可能かどうかを占う極めて重要な事項である。CTF3で現在行われているの試験には、2ビーム加速のテスト、RF構造、超低ビーム・エミッタンスとビームサイズ、測定器バックグラウンド問題、運営上のマシン保護問題などといった、多岐にわたる詳細なR&Dプログラムが含まれている。
私は、これまでも数回、CLIC/ILC共同研究グループについて書いてきた。ILCとCLICの間で実際に有用で意味をなす比較や情報交換を行っていくうえで、こうしたワーキンググループの役割は重要である。私たちは、こうした課題にいかに取り組むかに関して、ワーキンググループを通じてCLICと緊密に共同していきたい。
全体として、私はCLICで行われている熱心で献身的な仕事ぶりに大変感銘をうけた。ILCまわりの私たちは、LHCの次は、LHCが指し示すエネルギー領域で稼働するレプトンコライダーを建設するのが仕事になる、と考えている。CLICまわりの同僚諸氏もその点は同様である、次世代リニアコライダーに向け、異なるアプローチを継続するのは健全なことである。次世代の科学の可能性を考え、それに正しく適合する加速器技術を適切に準備していくうえで、これは必要なことである。[英文記事]
ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■ブログライン
4 November 2009 - Ingrid Gregor
Capricorn One
30 October 2009 - Ingrid
Gregor
The Naked Die!
29 October 2009 - Frank
Simon
The IEEE/NSS conference: Exciting new Technology, Fun… and
suffering
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
Linear Collider
Testbeam Workshop
LAL, Orsay, France
3-5 November 2009
ILC
Accelerator Design & Integration Meeting
DESY, Germany
2-3
December 2009
■ニュース記事
From Science Daily2 November 2009
「ダークマターとダークエネルギーは95%の宇宙を構成」詳細な測定で明らかに
From CERN Courier30 October 2009
加速器R&Dは、協力的な後押しを得る
EU委員会、および欧州の大学、研究センター、産業界は、新4年プロジェクトEuCARDを立ち上げた。これは、CERNがコーディネートする高エネルギー物理学、原子核物理学、光源のための加速器R&Dを中心とするもの。
[英文記事]
■アナウンス
◇トリック?不具合?
11月1日(日)、ドメイン名不具合があり、読者やILC共同研究者のみなさんがlinearcollider.orgウェブサイトの閲覧ほかを行うことができなくなりました。不具合の修正はすぐに行われたが、問題の性質上、正しいドメイン登録が全ネットワークに行き渡るには数時間かかりました。トラブルの原因は、現在調査中。
ILCウェブ・チームは、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
◇arXiv preprints
0911.0006
SiD Letter of Intent










































































