ILC NewLine 2008年5月8日号
ILC NewLine 2008年5月8日号 [英文記事]
■特集記事
Fermilab Todayから:Fermilab、CALICEをテストビーム施設に迎える
(From Fermilab Today:Fermilab welcomes CALICE to Test Beam facility)
米国フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)にある中間子テストビーム施設で実験装置の設置中、休息をとるCALICE共同研究グループとFermilabの研究者のメンバー。
Fermilabで最も目立つ建物に、新たな入居者が加わった。先月、CALICE共同研究グループのメンバーは、新たに改装された中間子テストビーム施設に、カロリメータを持ち込んだ。グループは、今後2年のあいだ、低エネルギーと高エネルギー粒子ビームを使って、このカロリメータの試験を行う。
「Fermilabはこの共同研究を歓迎しています」と、Fermilabの物理学者Marcel Demarteau氏は述べた。「テストビームラインの再設計を行い、CALICE共同研究グループの要望に応えられるようにしてあります」
リニアコライダー実験の共同研究グループのカロリメータ国際的チームは、これまで、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)と欧州合同原子核研究機関(CERN)で、ハドロンと電磁カロリメータのテストを行ってきた。Fermilabのテストでは、低エネルギーのビームでの試験を行っていく。また、共同研究グループのおよそ200人のメンバーは、CALICE関連の技術に携わる米国研究機関の近所で、研究に従事することになる。関連する米国の研究機関は、シカゴ大学、アルゴンヌ国立研究所、イリノイにある北イリノイ大学など、8つである。
カロリメータは、粒子のエネルギーを測定する測定器システムである。CALICEのハドロンと電磁カロリメータは、高い空間分解能で、測定器を通過するそれぞれの粒子のエネルギーを測ることができる。
CALICEカロリメータのテストから最も直接的に期待されるのは、ILCなど、電子-陽電子リニアコライダーの測定器での最適技術の決定への寄与である。しかし、CALICEプロジェクトリーダーのFelix Sefkow氏によれば、波及効果はもっと大きい。
「試験結果は、例えばテバトロン、あるいは、大型ハドロン子ライダー(LHC)のような、現存のものや建設中の、カロリメータ解析とその理解にも役立てられることでしょう」と、Sefkow氏は述べた。
CALICEは、年三回、それぞれ三週間のビーム試験を行うことになっている。ビーム試験以外の期間にはカロリメータを入れ替え、性能比較を行っていく。
現在、CALICEの電磁カロリメータの部分には、シリコンセンサを使った、主に欧州製の測定器が取り付けられている。これはこの秋、日本製のシンチレーターベースのモデルに取り替えられる。ついで2009年には、ハドロン・カロリメータ部分で、現在のシンチレータベースのものが米国製のガスベースモデルに取り替えられる。こうしたテストからの結果は、コライダー実験で将来どの技術が採用されるべきか決めるのに役立てられることとなる。
「CALICEは、ILCでのカロリメータ開発を横断的に促進するものです。測定器の設計開発には、こうしたビーム試験を踏むことが不可欠です」と、Erik Ramberg氏(中間子テストビーム施設のリーダー)は語る。
[英文記事]
■世界の各地より
スピンメディア対策専門家
偏極生成と偏極解析の専門家の初顔合わせ
(Spin doctors
Polarisation and polarimetry experts meet
for the first time)
理論家と実験家は、必ずしもいつも意見が一致しているとは限らない。しかし、意見が割れていないものがひとつあり、それはスピン偏極についてである。スピン偏極とは、ビームの中の粒子バンチを記述する物理量の一つで、粒子群のスピン角運動量の全体的な傾向をあらわすものである。ILCでは、適切な測定器を使った解析を行うことで、偏極を使ってヒッグス、超対称性、ほか、余剰次元のような新しい物理学への手がかりや答えが見つかることが期待されている。偏極ビーム衝突の理解を深めるため、世界では数グループが存在し、およそ30人の研究者が、ビーム衝突の前後で偏極を測る測定器の設計と試作を行っている。この研究者たちが先ごろ、ドイツ、ベルリン近郊にある、DESYツォイテン支局で第一回の『共同研究グループ』会議を行った。
ILC計画での偏極関連のベースラインは、電子・陽電子でそれぞれ、ビーム衝突前と後の二台、全部で四台の偏極測定装置を想定している。ビーム偏極度としては、電子に80%と陽電子に30%が考えられている。陽電子源と偏極ビームの研究者たちが一日オーバーラップできるように会議が組織されたのは、陽電子側については、この仕事は偏極陽電子を生成できるよう陽電子源と不可分に結びついているためである。
「国際共同設計チーム(GDE)のプロジェクト・マネジャーMarc Ross氏が会議に出席し、GDEの計画について話すと同時に、偏極測定装置関連の技術とコストの理解を深める手助けをしてくれました」と、Jenny List氏(DESYハンブルグの偏極解析の専門家)は語る。「上流か下流のいずれかの測定器を省略してはどうか、という話がありますが、私たちは、偏極測定は衝突前後からの結果を比較してはじめて意味をなすものだ、ということを指摘しました。これについては、非常に面白い議論をすることができました。」スピン回転装置の調整のため、バンチのスピン測定は測定器側の人たちだけではなく、加速器を運転する人々にとっても重要なことである。
米国スタンフォード線形加速器センター(SLAC)には、この話題には欠くことのできない、経験を積んだ研究グループがあるが、彼らはツォイテンに来ることができなかったた。そこで、主催者は時間割を数時間ほど後ろにずらし、ベルリン時間午前11時に開始、午後8時に終了することにして、米国西海岸と数時間の電話会議を行うことができるようにした。かつてのSLD実験で使われたSLACの偏極測定器は、いまはハンブルグに常駐し、昨年後半のテストビーム運転で実験セットの検証試験を行い、有望な結果を得ている。
最終収束系の偏極測定器は、コンプトン散乱-レーザーからの光子一個がビームバンチの電子一個にぶつかってこれをはね飛ばす―と呼ばれる現象を利用している。『コンプトン散乱された』電子は一回のバンチ対レーザーの交差ごとにおよそ1000個発生し、これらは数台の偏向磁石で構成するシケインとよばれる特殊なビームラインに導かれる。シケイン中での電子軌道の曲げ角は電子のエネルギーで決まるものである。シケインを経たあと、電子は内側が鏡面になっているガス管を通り、そこで青白いチェレンコフ光を発生する。チェレンコフ光はガス管内の鏡面で反射されながら最下流部に到達し、そこで検出測定される。
最終収束系上で、上流の偏極測定器は、衝突点の上流約1.8キロメートルに、下流のものは衝突点のちょうど数十メートル下流に設置される。技術的には、下流測定器(SLACチームが運転)のほうがずっと難しい。これは、衝突後のビームが非常に大きな広まりをもつためで、偏極測定器にかけるまえに強い電磁石でビームを再収束しなければならないからである。
これらのグループの次の研究ステップは、測定器を組み直してもう一度テストビーム試験を行い、データを調べることである。ILCでの偏極測定器は、従来型に比べて少なくとも二倍の性能をもつ必要があるのである。
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■ディレクターズ・コーナー
第3回ILCスクール:応募は早めに!
(Third International Accelerator School for Linear Colliders: apply
now)
次世代の加速器研究のための人材を発掘し、教育するのは、私たちの分野の将来にとって決定的に重要なことである。加速器スクールは、次世代研究者にこの分野を紹介し、先端教育を提供するうえで中心的な役割を果たしている。ILCには、加速器物理学で最も難しい問題に取り組む多くの非常に優秀な加速器物理学者がいる。したがって、私たちの研究に近いテーマを扱うこのスクールを、私たちが後援し、組織するのは自然なことと言える。これまでGDEは、成功裏に2回開催されたスクールを後援し、優先的に講師を提供してきたが、このたびは2008年10月19-29日に米国イリノイ州オークブルックで開催予定の「第三回ILCスクール」の準備を行っている。参加応募の締め切りは5月15日。非常に価値ある経験であることには太鼓判を押せるこのスクールへ、興味を持つ学生諸氏の応募を奨励したい。
加速器と加速器物理学は、医療をはじめとする幅広く多くの応用分野で、しだいに重要な役割を演ずるようになっている。しかし、歴史的に、加速器開発や加速器物理学者の教育は、主に世界の素粒子物理学コミュニティがおこなってきた。新しい加速技術の開発とそれらの次世代加速器への適用は、世界の高エネルギー物理の研究所や大学の研究プログラムの中心課題としてこれまで行われてきたし、今後もそうであろう。
では、若手研究者はどのようにして加速器物理学者になるのか、また、どのような教育を受けるのか?加速器物理学で博士号を取得できる大学はわずかである。そのため、加速器物理学者は物理の他の分野から、例えば実験素粒子物理学からの転向者である。世界の大きな素粒子物理学研究所は、一般に若手研究者が加速器物理に携わることを奨励し、そのための機会を提供したり助言を行ったりしているが、多くは独学にたよっている。こうした中、加速器スクールは、非常に重要なアカデミックな役割を持っている。
ILC加速器スクールは、短期間ではあるが、集中的な学習経験を提供する。前回のスクールは、2007年10月にイタリアのシシリーにある、エレセで開催され、世界中からの243人の応募者から選抜された70人の学生が参加した。旅費・滞在費は、すべてスクールが提供した。スクールのカリキュラムは、およそ12名の講師による専門トピックに関する短期コースであった。今度の10月に開催予定のスクールは、加速器物理学の大部分の領域を網羅するもので、これらはみな、リニアコライダーのような大加速器プロジェクトで必要となるものである。超伝導RF加速技術、ビーム源、ビーム力学、ビーム収束、その他関連した話題である。コース中は宿題が出され、また修了試験がある。私たちはスクールに参加した学生が、互いに交友を深め、刺激しあい、キャリアスキルを発展させていく様子を目の当たりにしてきた。
今年のスクールでも、2007年のスクールと同様の方面から優秀な学生が応募されることを期待している。今年のカリキュラムには、ミューオン・コライダーと常温RF加速器についての講義を追加した。特に、リニアコライダーR&Dのための米国予算が削減された状況にもかかわらず、このスクールを支援されている米国エネルギー省(DOE)とFermilabに感謝したい。また原則として、このスクールは世界の各地域の予算支援を得て、受講学生の地域バランスを保つことにつとめている。同様に、講師は世界の研究者グループから選ばれている。講師となる優秀な加速器物理学者は、本業からいくらかの時間を割かなければならないことになるが、こうしたのスクールを維持するのは、私たちにとって非常に高い優先順位を持つ重要な仕事と考えている。
スクールは、ILC GDE、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)、ICFAビームダイナミクス専門委員会の共催によっている。特に、FermilabのWeiren Chou氏とKEKの黒川眞一氏にお世話になっており、彼らからは様々な触発と尽力をいただいている。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
■ニュース記事より
From Tagesspiegel
8 May 2008
Die
Urknallmaschine
...将来、全長31kmの国際リニアコライダーで電子とその反粒子陽電子を長いまっすぐなラインで加速して正面衝突させることが構想されている。何のために?それは、LHCがまもなく明らかにする現象を、いま一つ別の角度から、もうすこし正確に調べるためである。
[ドイツ語記事]
From New Scientist
7 May 2008
社説:国家の科学研究領域での信用はいかにして損なわれるのか
・・・委員会は、科学に対する政治姿勢における憂慮すべき風潮を指摘。
From Chicago Business
6 May 2008
2008年注目の女性:コライダーの女王
[ビデオはこちらから]
From SLAC Today
5 May 2008
次世代を動かすのを支援する
今月、SLACは次世代線形加速器開発への貢献として、KEKの先端加速器試験装置(ATF)に革新的な電源を38台提供した。
[英文記事]
From nature
2 May 2008
コラム:神話と人間
粒子加速器が世界終末を引き起こすのではないか、という迷信は新しいものではないと、Phillip Ball氏は語る。これは古い神話に発する話で、戯言として一掃するのはなかなか難しい。
[英文記事]
From The Engineer
30 May 2008
コメント:ブラックホールに向き合う
野心的かつ重要な研究への英国の取り組みも打撃を受けた。例えば、CERNさえ観測することができない現象を研究することができるILC計画がそれである。
[英文記事]
■アナウンス
◇学校に帰ろう
10月19-29日に、オークブルックのオークブルック・ヒルズ・マリオット・ホテルで第三回ILCスクールが開催される。参加応募の最終期限(5/15)をお忘れなく。 詳細
■今週のイメージ
コスト管理に向けて
(Stepping up to cost management)
基準設計報告書(RDR)のコストエンジニアなどをはじめとするILC指導部のおよそ十人が、プロジェクトの次フェーズでのコストに関する戦略を定めるべく、現在ハンブルクのDESYで会合を行っている。彼らの主任務はまず全体を見渡すこと。その中には、コスト上昇要因の理解、エクセルの使いこなし技巧の習得(それからハンブルグ港の高い建物に上がること)などが含まれている。会議の結果は今後のNewsLineにて。






























