ILC NewsLine 2009年1月22日号 [英文記事]
■リサーチ・ディレクターズ・レポート
米国大学測定器R&D予算に復活の兆しか
(Cautious optimism for US-university detector R&D funding)
今月のリサーチ・ディレクター・レポートは、リニアコライダー物理・測定器国際研究組織(WWS)の共同議長であり、米州地域測定器コンタクトのJim Brau氏の執筆による。
ILCの実現に向けて、最近いくつかの明るいニュースがある。たとえば、測定器R&D関連のめざましい結果や、コンセプトグループによる測定器趣意書(LOI)執筆作業の進展については、シカゴのイリノイ大学で開催されたリニアコライダーワークショップで報告されたところである。一方、米国以外のILC研究者グループの多くはR&D予算を継続的に受けているなか、米国や英国では大幅な予算削減のもと過去一年のあいだ苦闘を強いられてきたが、ここに来て大学の測定器R&D予算に復活の兆しが見えてきた。ILC測定器R&Dは完了にはまだほど遠く、そのためにも安定・継続した予算は極めて重要であるから、復活はまことに喜ばしいことである。
高レベルでの政治的判断によって昨年の米国での予算執行は中断されることとなり、その結果、多大な悪影響が発生している。今年度(FY2009)はおよそ三分の一を終えているが、正式な連邦政府予算はまだ存在しておらず、「予算継続決議」のもと、前年度レベル(削減されたFY2008予算)を基準とした、予算執行が行われているところである。これは特に、大学研究者グループの測定器R&D活動にとっては極めて好ましくない状況である。この記事の執筆中の今、正式なFY2009連邦予算が成立したとしても、どの程度の予算を見込めるのかを確実に知る人は誰もいない。米国、英国、二か国の研究者は、このような困難な状況のなか、グローバル・パートナーシップのもとでなんとか基幹R&Dを継続し、測定器コンセプトLOI準備を続けてきたのである。
しかしながら、米国では、明るい兆しが見え始めている。新大統領と議会は、素粒子物理学を含む科学分野での予算増加を行う姿勢を示している。米国の測定器R&Dの予算復活については、P5報告書が高エネルギー物理学プログラムの戦略計画のなかで提言しているところである。(2008年6月12日号のリサーチ・ディレクター・レポート参照)。この明るい兆しが現実のものとなるかどうかを言うには早過ぎるが、最善の展開の場合を考え、米国の研究者グループは準備を始めている。監督機関(米国エネルギー省(DOE)と米国科学財団(NSF))との協議では、ILCの測定器コンセプトを推進するうえで鍵となる、重点R&D項目に沿った大学研究への予算拠出の可能性が高いことが挙げられている。監督機関は、それぞれのLOIグループにおける米国代表者に対して、関連する研究項目の提案取りまとめを求めている。承認が得られた場合の予算規模は総額30万ドル~200万ドルの程度とされている。
作業の第一歩は、大学グループによる希望研究課題の計画書作成である。研究計画書作成のガイドラインは、ここに掲示されている。締め切りは2009年1月23日。参考に、過去3年間の米国リニアコライダー測定器R&Dプログラム(LCDRD)の一環として予算を受けた研究課題のリストをここに置いておく。
大学からのこれらの課題提案は、次に、各LOIグループの米国リーダーが取りまとめ、提案書として、2月18日までに監督機関に提出する。いまの会計年度(FY2009)での予算化には長い時間がかかるため、監督機関への提案書提出(2/18)はLOIの提出締め切り(3月31日)に先立って行う必要がある。この提案所には、大学での研究計画の優先順位つきリストが、公式に記載される。提案書はまた、研究計画が米国内外の主要研究機関での仕事とどのように関連するのかについて、説明することが求められている。詳細なガイダンスはこちら。各LOIグループの提案では、大学、研究所からそれぞれ一人ずつの、合わせて二名の研究代表者が明記されることになっている。
締め切り日程をまとめると、大学グループから研究計画書の提出最終期限は1月23日。各LOIグループの指導者によるDOEとNSFへの研究提案書の提出期限は2月18日、となっている。
監督機関では、各LOIグループの米国のリーダーから提案を受け、春遅くにレビューを行い、それを経て、全体枠に対応した予算割り当てを発表する。これによって、いまの会計年度(FY2009)末の9月30日までに使用できる新予算が決まる、ということである。
ILCのための科学研究上の動機が極めて強いことには依然として変わりはない。しかし、他にも連邦予算を求め、競合しているプロジェクトが存在する。私たちは、獲得した予算から最大限の成果を出し続け、成功については時機を逸することなく広く伝える努力を続けていく必要がある。
[英文記事]
■特集記事
KEKより:先端加速器試験装置でATF2ビームラインが運転を開始
― ナノメートル電子ビーム技術の開発研究 ―
(From KEK: New beam line for R&D of nano-meter electron beam has been started at Accelerator Test Facility)
先端加速器試験装置(ATF)において、ナノメートルレベルでの先端的電子ビーム開発研究を行うATF2ビームラインの建設を進めてきたが、建設作業が完了し、このたび本格的なビーム運転を開始する運びとなった。
ATF では、ILCなど将来の加速器で必要とされる電子ビーム生成、ビーム計測およびビーム制御などの先端的な技術開発を行っている。ATFは、ダンピングリングと呼ばれるビーム蓄積リングを用いてILCなどの将来の加速器で必要とされる平行度の極めて高いビーム(超低エミッタンスビーム)を実現し、そのビームを用いた先端的な技術開発研究を行うことが可能な、世界的にも特徴のある加速器だ。
今回運転を開始したATF2ビームラインでは、超低エミッタンスビームを利用し、垂直方向で35ナノメートルの極小ビームの達成を目指す。さらに、このビームをナノメートルレベルで安定に維持するための技術開発研究を行う。
ATF2ビームラインは、ILCの最終収束系と同じビーム光学系を基に設計されており、ILC実現のための技術的実証試験を行う。
ATF2 ビームラインの実現には国内外の大学・研究機関が多く協力している。基本設計は日本および米国、電磁石は日本・中国・米国および仏国、世界最高性能の空洞型ビーム位置モニターは日本・韓国・米国および英国、などのように国際的に分担している。今後進められるナノメートルレベルでの電子ビーム開発研究も、引き続き国際的な体制で行われることになり、ILCでの国際協力体制のモデルとしての成果が期待されている。
今後は、このナノメートル電子ビームを達成するための調整を段階的に進めつつ、同時にそのようなビームを診断・維持するための技術開発研究を進めていく。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
次世代の加速器研究者を育成する
(Training the next generation of accelerator scientists)
2008年10月19-20日に、米国イリノイ州、シカゴ近郊のオークブルックヒルズマリオットホテルで第3回国際リニアコライダー(ILC)スクールが開催された。2006年に日本で第一回が、2007年にはイタリアで第二回が開催されたスクールの第三弾である。今年のスクールは、ILC国際共同設計チーム(GDE)、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)、ICFAビームダイナミクスパネルの共催であった。スクールのホストは、米国フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)がつとめた。次世代の加速器研究者を育成することは、分野の将来、役割にとって重要であり、私たちが行っているILCスクールの意義と成果は広く知られているところである。
ILCスクールは、大学院生、ポスドク、若手研究者、若い実験家を特に対象としている。2008年のスクールには、37カ国から245名にものぼる応募があり、大部分の応募者から優秀な学力を示す推薦状が寄せられた。しかし、定員は少数に限られていた。カリキュラム委員会は、慎重に各々の申込者の履歴書と推薦状を厳正に検討し、困難な議論の後、14カ国から57名の学生を受け入れることにした。残念なことだが、スクールへの参加を認められた学生のうち、12人は実際には参加することができなかった。理由の大部分はビザの問題による。スクールに参加した45人の学生は優秀で非常にやる気があり、8日間にわたる厳しい講義と最終試験を終えた。
カリキュラム内容は、12の講義、宿題、そして最終試験である。講義は、線形加速器、ダンピングリング、リニアコライダー、ミュオンコライダーなど、基礎から上級まで様々な話題をカバーし、多くはGDEメンバーである、よく知られた加速器物理学者が講師をつとめた。講師は日中講義だけでなく、個別指導も行い、夜には学生の宿題作業にも助言した。また講師は試験問題を作成し、採点も行った。最終日の最終試験は、4時間半にわたった。45名全員の学生が最終試験を受けた。講義スライド、宿題、試験問題は、スクール・ウェブ・サイトを参照いただきたい。
講義のほか、学生たちはFermilabの施設見学も行い、本物の加速器について学ぶ機会を得た。Fermilabの加速器部長Roger Dixon氏は、Fermilab加速器施設群がどのように動作するのか、という特別講義を行った。また、学生はメインコントロールルームで研修を受け、実機加速器で若干のビーム測定と操作を行った。ウィルソン・ホール15階の一般公開エリア、リニアック・ギャラリー、インダストリービル、CDF、D0実験ホール、超伝導高周波R&D施設の見学も、行われた。
試験問題は難しかったが、図に示したように、学生のできはよかった。上位9名の学生は晩餐会で表彰され、それぞれ、表彰状と書籍(加速器物理学とエンジニアリングハンドブック。編集:A. Chao、M. Tigner。発行:World Scientific社)を贈られた。
このスクールは、「加速器」という共通の関心と、「リニアコライダー」という共通のキャリア・ゴールをもつ、他地域からの若い優秀な人々と出会う千載一遇の機会である。そのため、学生たちはスクールの期間中、新しい友人をつくることを奨励された。スクールで生まれた友情は、生涯続くものもあるだろう。
今回のスクールの運営は、Fermilabの会議部門が務めた。Cynthia Sazama氏、Suzanne Weber氏、Jean Guyer氏は、スクールの実施計画について数ヶ月にわたっていろいろと骨を折ってくれ、Amanda Petersen氏(Fermilab国際業務室長)は学生ビザ手続きでは大変お世話になった。みなさん大変お疲れ様でした。ここでお礼を述べたい。
スクールは、世界中の監督機関や研究所(DOE、NSF、Fermilab、スタンフォード国立加速器研究所(SLAC)、ILC GDE、欧州合同原子核研究機構(CERN)、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)、IN2P3、INFN、オックスフォード大学、マンチェスター大学、ボン大学)からたくさんの財政支援を受けた。KEKは、アジアから参加した全18名の旅費を負担した。FermilabとFermilab研究協力(FRA)は、現地経費の大部分をカバーした。
スクールで特に問題になったのは、米国への入国ビザの取得であった。参加が認められた57名の学生のうち、24名が米国への入国ビザを必要とした。まえもって計画を準備し、努力したにもかかわらず、9名の学生はスクールに参加するためのビザを取得できなかった。(3名は、個人的な理由で出席できなかった。)これは大問題であり、こうした重要な教育行事を米国で開催する際の障害である。Science誌(2008年11月21日、Vol 322)に掲載された最近の論文によると、米国のビザ発給の遅延状況は、よくなるどころかますます悪化している、とある。私たちは、ワシントンDCの新政府が、国家安全保障を尊重しつつも、より合理的な方針で臨んでくれるようになることを期待するばかりである。
リニアコライダーでのR&Dや設計開発の結果何が残るのであっても、次世代の加速器研究者を育成するうえで私たちが果たしていくこの仕事は、最も誇りにしてよいことの一つであると思う。その多くは、スクールを牽引されてきたWeiren Chou氏の熱意、献身、不断の仕事に負っている。これまでに3回開催されてきたスクールに寄せられた関心、応募、成功とそれらが今後も続くであろうことに基づき、私たちは2009年もスクールを行うことに決めた。スケジュールは検討中だが、現在のところ、2009年9月に中国の北京近郊にある、中国科学院高能物理研究所(IHEP)で開催の見通しである。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
Accelerator Reliability
Workshop TH
Institute: From the LHC to a Future Collider ILD
Workshop Silicon
Detector Design Study Workshop Upcoming school The US Particle Accelerator
School |
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■ニュース記事より
From New Scientist
20 January 2009
どうやって天の川の質量をはかるか?
...天の川の質量[-と言われている]は、過去考えられていたより50%大きく、私たちの隣の巨大なアンドロメダ星雲に近い。
[英文記事]
From The Future of Things
19 January 2009
WIMPsの検出に向けたステップ
カナダ、アメリカ、チェコの天文学者チームは、WINP相互作用による反応をそれ以外のものから分離するのに、これまでのダークマター検出器をはるかにしのぐ性能を実現した。
[英文記事]
From CERN Bulletin
16 January 2009
LHCの最新ニュース
先週現在、セクター3-4で損傷を受けた全ての超伝導磁石は、撤去され、地上に拠出されている...
[英文記事]
From Nature
(subscription required)
16 January
2009
Science wins big in US economic plan
Congressional
stimulus package includes billions in extra research funding.
(要購読申込)
米国の経済再建計画で科学研究に大幅てこ入れ
議会の緊急経済対策には、数千億円の研究予算の追加が盛り込まれている。
[英文記事]
From Neteo
15 January 2009
ポケットサイズの加速器
物理学者たちは、しかるべきときにLHCをさらに大型、強力かつ高額の装置で置き換えたいと考えている。実に、国際リニアコライダーと呼ばれる構想のための仕事は既に始まっている。
[スペイン語記事]
■アナウンス
◇訂正
先週の「今週のイメージ」のキャプションに不備がありました。以下のように訂正します:フランスLALから日本のKEKに届けられたLバンド超伝導空洞用大電力カップラー二台。この「TTF5デザイン」カップラーは、日仏素粒子物理学研究所(FJPPL)プログラムの一環としてKEKに送られたもので、2009年はじめにKEKの超伝導RF試験施設(STF)で大電力試験が行われる。このカップラーは、DESYの基本設計にLALが修正を施したもので、CAREプログラムの一環として開発された。制作はACCEL社。誤りをお詫びいたします。
◇arXiv preprints
0901.2821
Angular distributions as a probe of anomalous
ZZH and gammaZH interactions at a linear collider with polarized beams
0901.2397
ILC
Instrumentation R&D at SCIPP
0901.2257
Higgs boson pair production through gauge boson
fusion at linear colliders within the general 2HDM
0901.2228
Test Beam
Requirements for the ILC Tracking and Vertex Detectors
0901.2099
Unparticle
physics and neutrino phenomenology
0901.1759
Study of
Solid State Photon Detectors Read Out of Scintillator Tiles
■今週のイメージ
ストリング取り付けられる
約2週間前に紹介した3.9GHzのクライオモジュール・ストリングがこれまでに完成した。4台めの空洞は、MP-9クリーンルームでの試験に成功し、写真にあるように空洞ストリングに接続された。この空洞ストリングは、今週、モジュール組立エリアに移動した。つづきはこちら。




















