ILC NewsLine 2009年2月19日号 [英文記事]
■リサーチ・デリレクターズ・レポート
物理・実験委員会議事
(What's going on in the Physics and Experiment Board meeting)
米国シカゴで開催されたLCWS08会議以来、ILC測定器関連の執行部はすべての組織が稼働状態にはいり、活動を続けてきた。コミュニケーションと意思決定の観点から最も重要視されるのが物理・実験委員会(PEB)である。これは、測定器趣意書(LOI)グループの代表者、共通作業グループの世話人、そして役員会のメンバーによって構成されており、毎月の定例会議のほかにも、つねにメールが飛び交っている。
代表者はみな頻繁に報告をおこなっているので、情報の流通は良好である。特にLOIの締め切りが迫ると、LOI内容の包括的取りまとめのために、他のLOIグループメンバーや共通作業グループ、執行部メンバーとのコミュニケーションの場を持つことが大切になってくる。質問事項や問題点を解決するのに、この会議の場は役に立っている。国際測定器諮問グループ(IDAG)にとって解りやすいようにスタイルを統一するなど、会議の度にいくつかの合意事項を積み重ねている。
良い例として次に述べるようなものがある。1月に開かれた前回の会議でのことだが、ビーム・エネルギーと電子の偏極測定に関して、すべてのLOIが同一の参照資料を参照すべきではないか、ということが議論された。開発研究に従事する研究者のすべてが特定のLOIグループに属しているわけではないので、同様の説明がLOIで繰り返されるよりはよいであろう、という結論にすぐに達した。この分野の問題を担当している加速器-測定器インターフェース(MDI)グループに、LOIの期限までにそういった報告書を専門家グループに作成してもらうよう要請が出された。MDIグループは速やかに対応し、ビーム・モニタ専門家グループの了解もすぐに得ることができた。すでにこの参照資料の作成は始まっており、二月のPEB会議までに提出されていることだろう。
これは次の二つの点で満足のいくものであった。まず第一に、PEBとMDIグループの双方は期待通りの仕事ぶりであったことだ。第二に、ビーム・エネルギーと偏極モニタリングの担当者たちの重要な仕事が、公式なLOIプロセスの一環として一つの報告書にまとまる、ということだ。この作業は加速器と測定器の両方にまたがるため、LOIグループだけにこれを委ねるのでは、他の作業で繁忙を極めるなか、後回しにされる懸念があった。MDIグループは世界共同設計チームのビーム転送システムグループとの公式な連携をもっており、測定器側窓口としては最適任であったといえる。
この他にも、単純なものから複雑なものまで、様々な案件をあつかっている。共通作業グループの仕事のなかには長い時間を必要とするものもあるが、定期的な議論の機会を持つことはPEBの改善のために大切なことであろう。ここでは、そのなかから、最近の一例だけをご紹介した。PED会議や共通作業グループは精力的に作業を進めており、今後もいろいろなことをご紹介・報告できると思う。
■特集記事
アジアに新入ILCコミュニケーター
(New ILC Communicator for Asia)
「ILCコミュニケーターに加わり科学推進事業に携わることができるのは、大変光栄です」と林田美里氏は語る。林田氏は、4人目のILCコミュニケーターとして国際設計チームに加わり、アジア地域を高橋理佳氏と共に担当し、欧州コミュニケーターのPerrine Royole-Degieux(CNRS/IN2P3) ・Barbara Warmbein (DESY)両氏とも密に協力することになる。
林田氏は、カリフォルニア州立大学アーバイン校を卒業し、カリフォルニア州立大学サンタ・バーバラ校にて物理学修士を取得。6年
半の米国滞在後に帰国し、日本アイ・ビー・エム サービス株式会社でシステム・エンジニアとしてキャリアを積んだ。しかし、科学コミュニケーションへの興
味から、大阪科学館でのボランティアとして、サイエンス・ガイドとして働き始めた。。「自分に合った仕事は、科学分野での広報なのだとこのとき初めて気が
付きました。KEKの求人広告を見たとき、これしかない、と思いました」と林田氏。「記事の執筆や編集の経験はありませんが、物理の知識でお役に立てれば、と思います」
林田氏がILCを初めて知ったのはKEK就職試験の課題で、であった。「KEKで開催されたInterActionという会議に関する記事を翻訳するというものでした。素粒子物理学や加速器科学の科学者だけでなく、広報の人たちも世界でコラボレーションしている、ということに感心しました」と林田氏は語る。「世界という規模で科学の啓蒙に貢献できるなら、とても嬉しく思います」
ILCコミュニケーターとして、林田氏はILC NewsLine記事の執筆、ILCでの研究結果などの紹介と広報、そして一般の人たちへの情報発信を担当する。KEKの英語版サイトも手掛ける予定だ。
■ディレクターズ・コーナー
(TILC09 will have some special feature)
TILC09が2009年4月17日から21日までつくば市で開催される。ILC物理・測定器のワークショップと、国際共同設計チーム(GDE)の合同会議が再び行われるのである。こうした合同会議は、我々がコミュニティとして一つになる機会でもある。今回のGDE側会議は、ユ ニークな、ある意味実験的なものになりそうである。通常の合同会議とキー・トピックに関するパラレル・セッションに加え、三日半かけての内部的な研究開発 プログラムの技術評価レビューが盛り込まれている。この評価レビューは、詳細な技術評価を毎年おこなっていこうという加速器諮問委員会(AAP)の意欲のたまものだ。このような評価は過去なされておらず、設計・開発の作業を確認したり、新しいアイデアや提案を交換したりすることで内部的な活性化を図っていくためのスタート地点となることを願っている。
TILCは、アジア地域次世代加速器推進委員会(ACFA)リニアコライダー物理・加速器ワーキンググループが主催するILC物理・加速器会議の11回目の会合で、GDEとしても11回目のものとなる。これら二つの会議は、初日(4月17日)と最終日(4月21日)の開会と閉会で合同セッションを開く。またその間の三日間にパラレル・セッションが設けられている。特記事項としては、提出された測定器趣意書(LOI)の加速器諮問委員会評価プロセスがあるということだ。また一般の人や生徒のための特別プログラムも予定されている。
LOI設計は、現実的な加速器設計を踏まえ、測定器側の必要要件も考慮したうえで構想されてきたものである。ILCの設計全般を改善していくうえで、物理・測定器への理解を深めるものとして大いに歓迎したい。たとえば、衝突地点において、提案されたLOI測定器を提案されたプッシュプルシステムに適応させる、という重要な案件がある。また、様々な加速器-測定器のインターフェースや、測定器の物理的パフォーマンスに影響を与える加速器側における問題点などについても検討する予定である。
AAP委員長のBill Willis 氏と副委員長のEckhard Elsen氏が今AAPのGDE技術評価活動を組織している。最初の評価会議はILCの研究開発と設計分野のトピックを幅広く網羅するが、重要な意志決定項目や結果が間もなく期待されている項目についてはとくに詳細な評価をする予定である。次の項目がその分野として選ばれている。
-
超伝導RF(SRF)
- 電子雲
- 一般施設とサイト検討(CF&S)
- 加速器試験施設
詳細なアジェンダや必要な補助資料などを含めた、評価の構成や重点についての「検討項目大綱」が、AAPに よって準備された。おわりに、スケジュールやリスク対コストの最適化を図ることによって設計をシンプルにする作業(ミニマム・マシン研究)も、今回の評価 のテーマである。ミニマム・マシン研究は、トンネルの設計や加速器システムに多岐にわたる影響を及ぼすものである。ミニマム・マシン研究で検討されている 複数の方策がレビュー席上説明されることだろう。
TILC09は内容的に大変充実したものとなるだろう。ぜひ参加しましょう。
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
TH Institute: From the LHC to a Future Collider Silicon Detector Design Study Workshop Technology and Instrumentation in Particle Physics (TIPP09) Joint ACFA Physics and Detector Workshop and GDE Meeting on International Linear Collider 今後のスクール Spring School on Strings, Cosmology and Particles (SSSCP2009)
CERN
9-27 February 2009
SLAC
2-4 March 2009
Epocal Tsukuba, Tsukuba, Japan
12-17 March 2009
(TILC09)
Tsukuba, Japan
17-21 April 2009
Belgrade, Serbia
31 March - 4 April 2009
■ニュース記事より
素粒子物理学者がPhD予算カットを懸念 米国フェルミ研究所、「神の粒子」へ迫る 過熱する「神の粒子」競争 景気刺激法案の内容 経済刺激策で科学はFrom Times Higher Education
19 February 2009
英文記事From New Scientist
17 February 2009
英文記事From BBC
17 February 2009
英文記事From Business Week
12 February 2009
英文記事From Discover
12 February 2009
英文記事
■アナウンス
◇arXiv preprints
0902.2915
Luminosity Performance Studies of Linear Colliders with Intra-train Feedback Systems
0902.2836
ILCWS08 Test Beam Summary
0902.2801
Sensor/ROIC Integration using Oxide Bonding
0902.2800
Possible Single Resonant Production of the Fourth Generation Charged Leptons at γe Colliders
0902.2717
M.i.p. detection performances of a 100 us read-out CMOS pixel sensor with digitised outputs
0902.2458
Higgs boson pair production at the Photon Linear Collider in the two Higgs doublet model
0902.2434
Summary of ILD performance at SPS1a'
0902.2192
Status of the Chronopixel Project
0902.2067
R&D status of FPCCD VTX
0902.2000
Shedding Light on the Dark Sector with Direct WIMP Production
0902.1879
Track Segments in Hadronic Showers: Calibration Possibilities for a Highly Granular HCAL
0902.1855
Infrared weak corrections to strongly interacting gauge bosons scattering
0902.1516
Improvements to the ILC Upstream Polarimeter
0902.1388
Tile HCAL Test Beam Analysis: Positron and Hadron Studies
■今週のイメージ
ILD提案者たちが韓国で会合
(ILD planners meet in Korea)
アジア・欧州・アメリカの世界三領域からのILCの科学者たちが、ILDと呼ばれる測定器の趣意書執筆やディスカッションのなか一息をいれて、韓国ソウル市のEwha Campus 広場に写真集合。この第三回ILDワークショップは今週月曜日から水曜日まで開催。


























