■特集記事
3つのCADを統合
三次元のILC
ILCのトンネルやシャフト、加速器部品、ビームパイプ、サポート・ラインなどを検討するにあたり、これらを具体的にイメージするため、世界各地から集まったチームは、ILC施設の3Dモデリングを行ってきた。これは将来の計画立案や設計の統合を効果的に行うために不可欠な仕事である。今後は試験運用を越えて、ILCの部分のモデリングにも手を広げていくことになっている。
科学者は、「科学とは世界の共通語である」と考える人種である。数学や工学設計に関しては、とくにそうである。一般施設とサイト検討(CF&S)グループは、6ヶ国から集まったメンバーによる国際的なチームだが、たしかに、電話会議や技術設計の会議で意見交換するときには、言語上の問題はない。しかし、自然言語による意思疎通ではなく、ソフトウェアデータの交換ではどうか、というと、単純ではない。三領域から持ち寄られたCAD(Computer Aided Design)データを統合するときには、異なったCADからのデータを互換変換する必要がある。このとき、ソフトにバグがあると、座標が正しく変換されない。そのため、トンネル内の間違った場所に機材が配置される、といったことが発生し、意図しているのとは違う、建設不能な、なにやら不可思議な加速器設計図面が出来上がってしまう、ということがこれまで起こりがちであった。
だが、いまや、EDMS(Engineering Data Management System)を使うことで、それぞれのグループがそれぞれのCADで作成した地下トンネルの機材図面をもちより、統一的な3次元(3D)モデルを作成することができるようになった。この作業の中心になったのは、DESYのソフトウェア・EDMSエキスパートLars Hagge氏である。「部品の形状不整合やパラメータの間違いは、3Dを使えばより容易に見つけることができます」とHagge氏は言う。「3Dモデルに組んでみると、避難路の配置や機材輸送路の選びかた、電源配線や冷凍配管の干渉といった、それまでに気づかなかった問題が見えてくることもあるのです」
ILC
EDMSを使用して、グループはまず異なった3つのCADシステムで作成されたモデルをEDMS内にエクスポートし、そこで統合することで、これらのデータを、誰もが見ることができ、また拡大や回転などの操作ができるようにした。ただし、個別部品の修正変更は、元作成者だけが行えるようにすることで、データの整合性を保障し、混乱が生じないようにした。物理研究上の要請や加速器のラティス設計から出発し、工学的実装概念に到達するまで、沢山のグループの人たちが議論を重ねて、全ての機材部品を表示する詳細なモデルが、ここについに完成したのである。 クライオモジュールは最も大切な機材の一つであるには違いないが、全体で見れば、地下トンネルのごく一部を占めるにすぎない。CF&Sチームがこのたびの3Dモデリングのために選んだのは、トンネルの中でも特に難しく、複雑な部分、ビーム衝突点から2.5キロメートルほど離れた、主線形加速器がビーム収束システムに移行する地点である。これは、シャフト3と呼ばれるシャフトの、上流下流50メートルほどの領域にあたる。「様々な機材と配線配管が入り組んでいるところなので、ここをケーススタディに選びました」とCERNのJohn
Osborne氏。まず、主線形加速器では、電磁石と加速モジュールが周期的に配置されていて、加速器トンネルとサービストンネルの間をつなぐ導波管用の小トンネルが12メートル毎に設けられている。主線形加速器の最下流を過ぎてビーム収束システムに移ると、これまでとは全く異なったパターンで電磁石が配置されている。また、主線形加速器の下流端にはちょっとした地下ホールが設けられており、そこには可動式の放射線シールドが設けられていて、保守サービス時には通行できるが、加速器運転時には加速器上流からの放射線が下流に入ってこないようになっている。
加速器の設計データについては、さまざまな研究所からの情報が、様々のCADフォーマットで寄せられる。SLACからのビーム収束システムのモデル(Solid Edge)、Fermilabからのリニアックモデル(I-deas)、CERNからのトンネルモデル(CATIA V5)、といった具合である。「完全に統合された3Dモデルを構築するためには、様々なCADシステムからのデータに対応しなくてはなりません」とHagge氏。彼のチームの次の課題は、陽電子・電子源、冷凍機・電源などのインフラ、そしてダンピングリングだ。 最終的に、EDMSはILCの全領域の3Dモデル化を制覇するはずだ。これによって、ILC加速器の全貌は初めて一目で分かるようになるのである。「さまざまな研究所からの様々なCADモデルの統合が、これほど早くできるとは思っていませんでした」とSLACのEwan
Paterson氏。「完全3DモデルをベースにしたILC設計作業を行うことができる日も間近だ、ということです!」 ■世界の各地より TILC09会議から
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大きな国際会議には、沢山の人たちの入念な準備が必要である。火曜日までつくば市で開催された会議も例外ではない。200人規模の大会議を円滑に進めるための主催者による準備。参加者もまたしかり。TILC09はILCコミュニティにとって特にハードなものだった。参加者のうちの約半分を占める測定器関係者は、徹夜でILC測定器の測定器趣意書(LOI)の執筆・編集を終えたばかりのところで、この会議に臨んだ。また残りの半分を占める加速器関係者も、加速器の内部評価のため数週間をかけて準備を行ってきたところだ。加速器評価報告書は次の数週間のうちに発行され、測定器認証の結果は今年の秋に発表される。フォトアルバムにて諸相を。
■ディレクターズ・コーナー
FLASH-DESYでの「ILC的」ビームによるテスト
ILCの高勾配の超伝導RF空洞やクライオモジュール、RFシステムの開発は、私たちの中核的なR&Dプログラムである。このプログラムで不可欠なのは、システムの全体テスト、とくにビームを使ったそれである。このテストシステムをILCモジュールを使って建設できるようになる前段階として、私たちは、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のFLASH 自由電子レーザーリニアックを使用した一連の試験を行っている。これを行うことで、基準設計に近い加速勾配で、ILC仕様に近いビームの電子リニアックの運転を通し、ILCの線形加速器で遭遇する様々な課題に、早期に実地に触れよう、という訳である。
FLASHリニアックは6台のクライオモジュールに収められた計48台の超伝導RF空洞を使用しており、これらは3台の大電力クライストロンで運転されている。下流の3台のクライオモジュールのRF源は10メガワット級マルチビームクライストロン1台で、こうした構成はILC基準設計でのRFユニットとよく似ている。FLASHでの実験の目的は、複数ある。フル・ビーム・ローディング(脚注1)条件下の長パルス運転で、多バンチトレインのなかでバンチ毎に一様なビームエネルギーが得られることを確認する;また、ビームエネルギーがパルス毎に安定にできることを実証する;高加速勾配での運転上の制約になる諸問題を整理する;ビーム運転を安定化するために導入する低電力RF(LLRF:脚注2)制御において、必要な予備電力を定量的に確認する;また、冷凍機負荷を実測する、などである。このような目標のもとにFLASHを運転するのは単純なことではない。FLASHの性能限界近くまで運転条件をプッシュすることを意味するからである。
(脚注1:ビーム・ローディングとは、空洞に蓄積され続けるRF電力のうち、どの程度をビームが持ち去るか – それを使ってビームが加速されるか – の割合(比)のことを指す。ビーム・ローディング = (バンチ全電荷・加速勾配) / (バンチ間隔・空洞への供給電力)、である。ILCに限らず、多バンチを加速する主線形加速器では、安定な運転のためには、空洞に蓄積されていくRFエネルギーと、バンチが持ち去るエネルギーが釣り合っていなければならない(ILCでは、電力損失の極めて小さい超伝導空洞を使うので、空洞の表面電流による電力損は無視してよい)。ILCのビームパルスでは、一回のパルスごとに、全部で2625個のバンチが空洞にやってくることになっており、隣接するバンチ間の間隔は369nsである。この場合には、365nsの間にクライストロンから空洞に供給されるRFエネルギーが、正確に次のバンチの加速エネルギーとして全部使われなければならない、ということである。こうした条件が実現された状態のことを、フル・ビーム・ローディングと呼ぶ。この条件が保たれないと、バンチ毎のビーム加速が一様でなくなり、下流のバンチになるほど加速勾配が減少する、あるいは、下流のバンチになるほど加速勾配が上昇しすぎて空洞がクェンチを起こす、といった問題が発生する。)
(脚注2:LLRF – ILCのような超伝導空洞を使った線形加速器の加速制御は、大電力クライストロンからの出力電力と位相を変化させておこなう。実際には、この制御はクライストロンをドライブする低電力RF信号の振幅と位相を調整することで行い、この制御システムをLLRFと呼ぶ。このLLRFを使い、ビームがクライオモジュールに到達するタイミングに合わせて、またビーム電流のふらつきに対応して、クライストロンからの出力電力を調整し、フル・ビーム・ローディングの条件を維持するのである。ここで、想定しうる様々な条件に対応できるためには、クライストロンの最大出力電力に、ある程度余裕を持たせておくことが必要であり、これをpower overhead と呼んでいる(必要なoverheadは、ビーム電流のふらつきや、沢山ある空洞の運転可能な加速勾配やQ値の非均一度に依存するが、ILCでは約22%と見積もられている)。また、クライストロンからの出力は、導波管を伝わる途中で空洞に到達するまえに、少し減衰する。これを見込んだ7%程度のoverheadも勘定に加えておく必要がある。Power overhead の評価が過小だと、空洞自体が高加速電界を発生する高性能をもっていても、最大定格電流のビーム加速を所定の加速勾配で行うことができなくなる)
「9mA実験」のためにはFLASHに改善を加えなくてはならない点があった。特に、LIRFシステム・パフォーマンスや機能、運転条件の変化に対する対応能力などがそれである。FLASHは共同利用施設だが、ILC試験はNick Walker氏 (DESY) とJohn Carwardine氏 (Argonne)が取りまとめてきた。これまで、昨年の秋に3つの試験を行っており、今年の9月に大きな試験が実施される予定である。こういった試験を実施するにあたって、一番難しいのは、表にあるようなILC環境になるべく近い条件を実現することである。昨年9月の二度目の試験では、FLASHをバンチ間隔1マイクロ秒、バンチ電荷3ナノクーロン、バンチトレイン長550マイクロ秒まで運転し、今後の試験にむけた重要な布石を敷いたが、真空系の故障により予定より早く実験を中断した。一月の試験では、主にダンプ(ビームを捨てるところ)直前のビームラインのビーム光学特性の理解、ビームパイプとビームサイズの関係の理解、LLRF系の安定化用フィードバック運転ゲインの強化、LLRFのフィードフォワードのアルゴリズム試験、そして、加速勾配の評価に注力した。
現在は、2009年秋の加速試験にむけた準備が行われているところである。そこでの目標は、最大限まで加速勾配を上げた条件で、パルス長800マイクロ秒、ビーム電流9mAの運転を実現することである。運転は8月から連続五週間が予定されており、直後にFLASHの大規模な改造保守工事が始まることになっている。こうした長期運転が認められたのは、DESYがこの試験を重視していることの現れと言って良い。三週間の改造保守工事では、ビームダンプ周りの真空系の修理が行われ、また、新しい運転診断装置とLLRFのハードウェアを立ち上げた後、9mAチームは二週間のビーム時間をもらって目標達成を目指し、24時間運転体制にはいる。
LLRFシステムは、ビームのエネルギーを制御し、また高速に空洞クエンチを感知する役割をもっているので、9mAプログラムのなかでも重要な項目である。この研究は、DESY LLRFの専門家、高エネルギー加速器研究所(KEK)、国立フェルミ加速器研究所(Fermilab)、そしてSLAC加速器研究所からの研究者による、国際的な共同研究で進められている。
8月・9月の活動計画には、1月16日に開催されるDESYでのミニワークショップも含まれている。技術設計フェーズ1における最後のビーム試験の機会となるので、入念な準備が必要だ。
連結クライオモジュールの試験もまた、ILC建設プロジェクトを提案するにあたり不可欠なものである。KEKやFermilabでは、ILC空洞やクライオモジュールを使用した試験が計画中である。このうち最初のものは、KEKのSTFで行われることになっている、通称S1-global実験である。ここでは、空洞やクライオモジュールが国際協力を通して提供されることになっており、このプロジェクトの国際性を示している。また、プラグコンパチブルの概念についての実地的な試験ともなろう。S1グローバルはILCグループが制作したモジュールを使用して一連の空洞のパフォーマンス試験を行う最初の例である。引き続き、KEKで、そして、Fermilabの新ミュオン研究所内のILC試験エリア(ILCTA-NML :ILC Test Area in the New Muon Lab)で 、より大規模な試験が行われるうとになっている。しかしながら、これらの試験準備には長い時間がかかるため、ILC的なビームパラメータでのエネルギー・位相安定化の実証試験やLLRFフィードバックの試験は、上記のFLASH実験で先行して行われることになったのである。
■カレンダー
今後の会議 Particle Accelerator Conference 2009 (PAC09) 11th European Symposium on Semiconductor Detectors ILC-CLIC LET Beam Dynamics Workshop at CERN Polarized Positron for Linear Colliders Workshop (Posipol 2009) 今後のスクール Terascale Monte Carlo school 2009 School on Calorimetry at the International Linear Collider
Vancouver, Canada
4-8 May 2009
Wildbad Kreuth Conference Center, Bavaria, Germany
7-11 June 2009
CERN, Switzerland
23-25 June 2009
IPNL, Lyon, France
23-26 June 2009
DESY Hamburg, Germany
20-24 April 2009
China Center of Advanced Science and Technology, Beijing, China
22-26 April 2009
■ニュース記事
世界初のハードX線レーザーの「最初の光」により、新しい研究が始まる SiD設計に布石 新しいタイプの量子トンネリング R2重力は暗黒物質の解? PETRA
III加速器リングの立ち上げ無事に達成From SLAC
21 April 2009
英文記事From SLAC Today
20 April 2009
英文記事From Technology Review
20 April 2009
英文記事From Physorg.com
20 April 2009
英文記事From DESY
16 April 2009
英文記事
■ブログライン
22 April - Frank Simon
北京
17 April - Tony Hartin
Bibliothèque/Библиотека/Library/図書館
16 April - Frank Simon
未来加速器: Surfin’ プラズマ波
Quantum Diaries
■アナウンス
arXiv preprints
0904.2213
Spontaneous R-Parity Breaking in SUSY Models
EUROTeV Reports
2008-079
Performance of a Nb3Sn Superconducting Quadrupole in an External Solenoid Field
2008-080
Studies of Damping Ring Low Emittance Tuning
2008-082
DR Deliverable 1: Documented and Experimentally Benchmarked Code for e-Cloud Simulations
2008-083
DR Deliverable 2: Report on Impact of e-Cloud and Fast Ion Instabilities on DR Performance, Including Recommendations for Controlling the Effects
2008-084
DR Deliverable 4: Report on Comparative Studies of Beam Based Alignment












































