ILC NewsLine 2009年11月25日号 [英文記事]
■特集記事
CERNより:LHC で2つのビームが回って最初の衝突観測された
(From CERN: Two circulating beams bring first collisions in the LHC)
ジュネーブ発2009 年11 月23 日:本日初めて2つのビームが同時に周回した。加速器オぺレーターは2つのビームの同期を図り、実験チームははじめての陽子・陽子衝突現象が起こるか探した。時計方向と反時計方向にそれぞれ1つずつのビームバンチを回すと、加速器のリング上の2カ所でビームバンチが交叉する。午後一番には、アトラスとCMS 実験が位置しているポイント1と5でビームバンチが交叉するように調整し、衝突現象の発生を探した。その後、アリス実験とLHCb 実験があるポイント2と8でもビームを交叉させた。
「短時間でここまで達成できたことは素晴しい」とロルフ・ホイヤーCERN 所長は語った。「しかし我々は長期的な視点を持つ必要がある。LHC 物理実験を開始できるまでには、まだまだ多くの作業がある。」ビームは最初にアトラス測定器の場所で衝突が起こるように調整され、午後14 時22 分に最初の衝突現象の候補が観測・記録された。その後ビームはCMS 実験に最適なように調整された。夕方にはアリス実験、そしてLHCb 実験に合うように調整された。
「これは大きなニュースである。素晴しい物理と新発見が期待される時代の幕開けである。前例のないほど複雑で高機能な加速器と実験装置の建設を世界が協力して20年前に始め、ようやくここまでたどりついた」とアトラス実験のリーダーであるファビオラ・ジアノッチ氏は語った。
「これは自然の秘密を発見する途方もない航海の後半の始まりを示すものだ」とCMS 実験リーダーのジム・バーディ氏は述べた。「アリス実験のコントロール室では全員が立ち上がり、最初の衝突に喝采を送った」とアリス実験のリーダーのユグレン・シュクラフト氏は語り「これは端的に言ってものすごい」と。
「我々が観測した粒子の飛跡は美しかった」とLHCb 実験のリーダーのアンドレ・ゴルトバン氏は語り「あと数日したら本格的なデータ収集を始める準備がすべて整う」と。LHC 運転が再開されてからほんの3日でこれらの進展が起こったことは、ビームを制御するシステムが素晴しい性能であるということを示している。運転開始より加速器オペレーターは、入射エネルギーである450GeV(ギガ電子ボルト)のビームを、まず1方向に、次に逆の方向にリングを周回させた。ビームの寿命は飛躍的に10 時間まで伸び、そして今日初めて、ビームエネルギーは450 GeV のままで両方向に同時にビームを回した。
次のステップは、ビームの強度を上げてビームを加速する始動段階であり、多くの作業が存在する。すべてが順調に進めばクリスマスまでに、LHC は1ビームあたり1.2 TeV(テラ電子ボルト)のエネルギーに到達し、数多くの衝突データを提供して実験装置を較正することができるようになる。
※こちらに掲載の日本語訳を転載しました。http://atlas.kek.jp/sub/CERN-LHC/PR17.09J.pdf
[英文記事]
CERNより:LHCの復帰(From CERN: The LHC is back)
ジュネーブで世界最強の粒子加速器である、欧州合同原子核研究機構(CERN1)の大型ハドロンコライダー(LHC)で加速器稼働の後、再び粒子ビームが周回したとのニュースが2009年11月20日水曜朝に届いた。その晩の10時には、時計回りにビームが周回したことが確認された。LHCで最初の物理発見を2010年に行うための重要な一歩である。
「再びLHCの中をビームが周回するのを見ることができてうれしいです」と、CERN所長、Rolf Heuer氏は語った。「物理の発見のためには、まだいくつかの段階を踏まないといけませんが、このマイルストーンを達成することで、かなり近づくことができました」
LHCは、2008年9月10日に最初のビーム周回に成功したが、その9日後に深刻な故障に見舞われた。一部の電気接続部の不良が深刻な損害をもたらしたのだ。CERNはそのような事件が二度と起こらないよう、その後一年をかけLHCの修理と整備を行ってきた。
「1年前に比べ、LHC加速器についての理解がはるかに進みました」と、CERNの加速器部長、Steve Myers氏。「経験から学ぶことで、先へ進むための技術を獲得しました。こうやって進歩していくのです」
LHCの再稼働は夏に始まり、それ以降は、定期的に一連のマイルストーンを通過してきた。10月8日、LHCは1.9ケルビン(およそ-271℃)の運転温度に到達した。10月23日、粒子は入射されたが、まだ周回させていない。11月7日にはビームは加速器の一周の8分の3まで到達し、今やビームの周回を再現できた。次の重要なマイルストーンは、来週の今日に予定されている、低エネルギー衝突である。これらにより、実験グループは、最初の衝突データを得て、重要な較正ができるようになる。重要なことだが、今まで実験グループが記録した全データは、宇宙線を使ってのものだったのだ。7TeV(1ビームにつき3.5TeV)の衝突に向け来年はビームのエネルギーを徐々に高めていく。
素粒子物理学は国際的枠組みでの活動であり、また、CERNはLHCの稼働、再稼働に際して、世界中から支援を受けた。
「ここまで来るのは非常にたいへんなことでした」と、Myers氏は述べた。「CERNや世界中の研究機関から参加してくれた関係者のみなさんに感謝したいと思います」。
11月23日(月)午後2時、CERNの科学とイノベーションのためのホール、「グローブ」にて記者会見が行われる。ウェブキャストはこちらを:http://webcast.cern.ch/.。質問は@CERNツイィター経由で。全ての質問にお答えできるとは限りません。
LHCに関するツイィター: www.twitter.com/cern
写真、ビデオ、最新情報: http://press.web.cern.ch/press/lhc-first-physics/
コンタクト : http://press.web.cern.ch/press/ContactUs.html
1CERNは、素粒子物理学分野における世界の主要な研究所である。本部所在地はジュネーブ。現時点での加盟国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイスとイギリス。オブザーバー加盟国はインド、イスラエル、日本、ロシア連邦、米国、トルコ、欧州委員会、ユネスコである。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
技術開発を推進するものとは?
(What drives the development of technology?)
今号のディレクターズ・コーナーは、国際共同設計チーム(GDE)プロジェクト・マネージャー、Marc Ross氏の執筆である。
ILCの基幹技術に超伝導高周波(SCRF)技術が5年前に選ばれた際、高勾配(35MV/m)の性能を持つ空洞はほとんどなかった。今や状況は全く異なっている。この秋、日本と米国の産業界や共同研究機関が複数の高性能9セル超伝導空洞の制作、表面処理、試験に、成功をおさめたことを喜びたい。また、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)の欧州XFELチームにも祝辞を送りたい。欧州XFELチームは、『ILC級の性能』(平均32MV/m)を持つクライオモジュールの制作、アセンブリ、試験といった点において最初の成功を達成した。これまでのILC空洞を振り返ると、全世界ベースで行ってきた開発が結実しつつある様子は明らかで、今や自信を持って、2005年にスノーマスで設定した目標を達成する、あるいは、それを上回る見込みさえつきつつあると言えよう。化学洗浄、空洞の検査診断法、会社への訪問、標準化されたレシピ、そして研究機関が協力して結成したデータベース・チームといったこれまでの来歴や話題については、私や山本明氏が執筆した『ディレクターズ・コーナー』の過去記事を参照されたい。
もちろん、道のりはまだまだ続く。技術開発の成功につながる重要な決め手とは何か?ビートルズの歌にあるように、お金なのか?もちろん、予算は大切だ。しかし、「競争とチームワーク」と「多様性と集中化」という正反対の要求にしくものはない。逆説的ではあるが、これらの2つの相反する要求は私たちの進歩の鍵であり、それこそがどのような計画にせよ分散管理された活動の成功の鍵だ、というものもいる。GDEでは、多様性を受容するが、相互互換性(いわゆる『プラグコンパチビリティ』)も課している。そして、産業競争は言うに及ばず、研究機関の間での競争も避けられないものだ。
SRF2009では、大学の環境でよく見られる多様でいくぶん自由競争的で基礎的なR&Dと、特定のプロジェクト推進のためより管理された形態でおこなわれるR&Dとの間の相互関連についての話し合いがあった。後者の例は、ILC-GDE SCRF目標(『S0』-加速勾配制限についての研究、『S1』-ILCクライオモジュールの建設、『S2』-最強度ビームでのいくつかのクライオモジュールのテスト)を目指したR&Dである。通念的には、一般基礎的なR&Dが最もよく進捗するのは、それを必要とする高次のプロジェクト的な目標のもとにおいてである、というように考えられている。ここ20年のリニアコライダー(当初はTESLA、そして現在はILC)を目指したRF超伝導特性の技術進歩が示すのは、加速勾配に関する基本的なR&Dを効率よく進めたのは、たしかに、明確な目標概念を伴った『プロジェクト』であった、ということだ。これは基礎的な加速器研究と現実の加速器実装技術の間のギャップを埋める(DOEシンポジウムで掲げられた最新の目標)一例であれ。ここで起きているのは、基礎的R&Dの強化と、プロジェクトの目標達成という二つの作用である。このシンポジウムの目標は次の3つの項目をバランスさせつつプロジェクトを達成することであった。即ち、1)定まった目標をもつプロジェクト、2)研究機関の(あるいは産業界の)インフラストラクチャーとスキル、3)基本的な一般研究戦略。この二十年の応用科学向け加速器の激増に伴い、米国では国立研究所における技術担当能力のより効率的な協同が可能となった。現在では、主要研究所のそれぞれの技術能力は互いによく知られたところとなり、計画や共同開発を新たに立ち上げるうえでの強みとなっている。
GDEは、研究機関間あるいは地域間のR&D協力を推進するうえで必要な枠組みを提供するものである。私たちは最終目標(ILC計画)のために必要な性能仕様を明示的に定めることで、開発現場からの一連の目覚しい成果を享受するのである。
[英文記事]
ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■ブログライン
21 November - Frank Simon
Strategy Discussions – And LHC Excitement
20
November - Ingrid Gregor
Scotty, beam me up…
... and don't miss Paul
Jackson's coverage from shifts at ATLAS
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
ILC
Accelerator Design & Integration Meeting
DESY, Germany
2-3
December 2009
今後のスクール
The US Particle Accelerator Schoolsponsored by the UC Santa Cruz
Santa Cruz, CA, USA
18-29 January 2010
■ニュース記事
From Next Big Future
20 November 2009
次世代コライダー
New Scientist誌は、LHCを越えた次世代の粒子コライダーに焦点をあてる。粒子としてどういうものが発見されるのであれ(ヒッグス、あるいはヒッグスボソンではない粒子)、研究すべき新しい物理や、精査すべき(標準模型または他の何か、超対称性やストリング理論による)宇宙のモデルがあらわれるだろう。
[英文記事]
From Softpedia
20 November 2009
次世代の粒子加速器
LHCが最後の加速器ではない。
[英文記事]
From New Scientist
20 November 2009
次世代コライダー:LHCを越えて
LHCは、決して最終加速器ではない。最近、CERNの研究グループは、ジュネーブで陽子衝突から生まれる様々なシナリオ可能性を調査し、その結果、次に私たちが建設すべきコライダーはどのようなものであるかを検討した。各シナリオの、キーポイントを述べる。
[英文記事]
■アナウンス
◇今週号は前倒しに発行しました
今週木曜は、米国が感謝祭の祝日のため、ILC NewsLineの発行を早めました。来週からは通常通りです。
■今週のイメージ
CEAのXFEL村を訪れるフランスのILC物理学者
(French ILC physicists visit XFEL village at CEA)

11月9-10日、フランス、サークレイにあるCEA/Irfu研究所で、フランスの物理・測定器研究者グループが集まり、SOCLE(電子リニアコライダーへの貢献に向けた重視セミナー)会議の年会を行った。この会期中、CEAのモジュールアセンブリコーディネーターである、Olivier Napoly氏とSte'phane Berry氏は、参加者に、CEAにある新XFEL施設を案内した。新XFEL施設は、2010年末に、103台のXFELモジュールの工業的アセンブリが開始される。写真:CEA。
他の写真はこちらから




































