ILC NewsLine 2010年2月18日号 [英文記事]
■リサーチ・ディレクター・レポート
研究計画を考える測定器グループ
(Detector groups work out their work plans)
12月のリサーチ・ディレクター・レポートで、私は測定器趣意書(LOI)の認証後、新たなフェーズに入った測定器関連の活動についてお伝えした。そのひとつは、2012年中に詳細なベースライン設計を完成することを目標に作業工程を作成する、という、国際大型測定器(ILD)とシリコン測定器(SiD)という2つの測定器グループによる活動である。昨年10月、私は、両グループから作業工程表の初版を受け取った。しかし、両グループとも、工程の実行に若干の不確定性が存在することを指摘し、引き続いて研究計画の詰めの作業が続けられてきた。
主な不確実要素は、予算の展望である。両グループが先に提出したプランは、必要とされる予算は得られる、ということを前提としたものである。これは保障のない作業仮説であって、計画実現のための第一歩は、必要な予算の確保である。測定器の研究活動は、世界中の多数の機関による協力のもとに進められている。参加グループは、およそ40カ国から200以上の機関を数え、予算システムや財政環境は様々である。システム・財政環境の差異は、既存の加速器の多くの巨大実験グループでも経験されている。しかし、従来行われたのは運転中か建設中の加速器のための測定器建設にむけた仕事であった。今回行っているILCの測定器と物理研究は、新規プロジェクト提案の準備を目的にしている点が異なっている。ILC測定器グループへのサポートは、監督官庁や研究所の見通し次第でまちまちである。既に問題を抱えた国がいくつもあり、参加機関の間で望ましくないアンバランスが生まれている。また、現時点で予算が確保できている場合であっても、その状態を2012年まで維持するには努力が必要である。
物理と測定器活動の多くを支えているのは若い人たちだ。これは重要かつ奨励されることだが、彼らのポジションは、任期付きである場合が多い。予算が縮減されれば、これら若い人たちの雇用の途が狭まり、仕事の深刻な遅延が生ずる。将来、ILCが建設されたとき、物理実験を推進するのは彼らだ。彼らがILCの測定器と物理で経験を積むことは、非常に大切なことなのである。測定器活動における複雑さも存在する。LOIプロセスが新しい測定器R&D推進の手法であるためだ。認証されたグループは、測定器要素とソフトウェアを高度なシステムに統合し、かつILC加速器にマッチさせるべく、懸命に取り組んでいる。LOIで各グループはサブ測定器の選択に関して一定の概念的決断を行い、その選択は、認証途上、レビューされたところである。しかし、選択された技術には、実証試験が必要であるし、また、最終的に最善の技術決定を行うためには、いくつかのオプションを残しておくことも必要だ。さらに、将来的に新しいアイデアや技術を取り入れる余地を残しておくことは明言されている。これらのいずれも、R&Dがさらに精力的に行われなければならないことを意味している。いっぽう、R&D項目の多くは、他の実験や医療への応用可能性をもっている。測定器R&Dサブグループが監督官庁に予算申請を行う際には、ILC測定器要素としての提案を行うと同時に、こうした汎用性も念頭においた記述をすることが多い。ILC測定器活動は、そのような活動の集合体であり、ILCの物理の魅力で結びつけられつつも、ILCを超えた要素を併せ持つものであって、グループ間の競争も、こうした文脈のなかで行われている。
2012年に詳細なベースライン設計を完成させるうえで、測定器グループが直面している課題は上記のようなものである。測定器グループがこれらの課題の克服にむけて多大な努力を行っていることは、高く評価されるべきである。研究計画の詰めがすすみ、各グループが目標設定に向けた具体的なマイルストーンを設定し、活動提案がよりしっかりとしたものになることを期待したい。RDマネジメントとしては、作業にまつわる困難を少しでも小さくする努力を行うことで、支援を続けたいと考えている。共通作業グループは、二つの測定器グループ間の協力を促進することで、問題緩和に務めていく。国際測定器諮問委員会(IDAG)は認証グループの活動を見守り、目標実現を支援する視点でのアドバイスを続ける予定である。
[英文記事]
リサーチ・ディレクター・レポート・バックナンバー■特集記事
symmetry breakingより:素粒子理論家の盲点?
(From symmetry breaking: Do particle theorists have a blind
spot?)
![]() Symmetry breakingのワシントンDCで開催された、米国物理学会会議の報告。 |
昨日、ワシントンDCで開催された、米国物理学会会合の講演のセクションで、ラトガーズ大学の理論家Matthew Strassler氏は、理論物理学者の現在の考え方は単純すぎるかもしれない、として、素粒子理論家たちに一石を投じた。理論素粒子物理学が簡単だと思っている人はおそらく少ないだろうが、Strassler氏は、自然法則は物理学者が予想するよりもはるかに複雑なものである可能性があると指摘した。そして、理論家が最も単純な(簡単な)タイプの理論モデルだけを追求していると、(ここでの「単純」とは相対的に単純との意味であるが)、大型ハドロンコライダー(LHC)の将来のデータを解釈するときに方向を見失うかもしれない、とした。
物理学者は、素粒子物理学の標準理論が究極的には正しくないであろうこと認識しているが、それをどのように直せば良いのかは、まだ分かっていない。一般的なアプローチは、新粒子、新しい相互作用、または新現象を導入して標準理論を拡大し、それで何が予言されるかをリストし、実験で新しいデータが得られるたびに、どの理論が一番それを説明するかを調べる、というものである。理論家は、標準理論を超えるモデルとして、普通、最も単純な拡張ケースからスタートする。最も単純な拡張を意味するためには「ミニマル」という用語が使われる。例えば、ミニマル超対称モデルとかミニマル・テクニカラー・モデルといった具合である。
Strassler氏の主張は「ミニマルモデルから始める、というのは文化的偏見である」ということである。彼によれば、多くの理論家の発想は、ミニマルは洗練された見かけをもつからもっともらしいと考え、逆に、非ミニマルはごたごたしているから魅力的でなく、評価しない、という程度のものだ、と言う。
彼は、ミニマリズムが失敗した歴史上の事例をいくつか紹介した。1936年、重い電子とも呼べるミュオンが発見され、一見、完成していたと思われていた電子の理論では説明できない、レプトンの第二世代の存在という知見が得られたとき、Isidor Isaac Rabi氏はショックを受け「誰がこんな粒子を注文したんだ?」と言ったという。Strassler氏は、非ミニマリズムの他の例(例えばニュートリノの質量がゼロではないこと、ダークエネルギーが存在しているという事実等)を挙げ、彼は宇宙定数がゼロでないことに触れた。
Strassler氏によれば、LHCからのデータが得られるようになり、1990年代に積まれたミニマル理論の研究からでは説明できない事象が現れる可能性が出てくる、ということは、私たちがポストミニマル時代に入ったということを意味する。Strassler氏は他の理論的枠組み(例えば彼自身のヒドゥン・バレー枠組み)を模索する必要性を指摘した。ヒドゥン・バレー枠組みには、新たな軽い中性粒子と新しい力が含まれている。彼はまた「気まぐれ」「非粒子」「弱く反応する重い粒子(WIMP)のない奇跡」などその他の枠組みに触れた。これら全ては非ミニマルモデルである。これらのモデルは、テバトロン(TEV)とLHCのデータ、または、BaBarとBelle測定器実験からの既存のデータで検証される可能性もある。「軽い中性粒子は、私たちの分野の盲点だったかも知れません」と、彼は言う。Strassler氏は、輝度フロンティアでの低エネルギー実験は、理論の理解を進めるうえで不可欠であると主張した。理論家の間では、全ての可能性が調べ尽されたわけではないことに異議は上がらないものの、会議に参加していた理論家や学術誌編集者の一部は、上の主張にたいして全面合意ではないようだった。理論家の時間も有限であって、より複雑な理論を作る際に、どこに向かっていくのが良いのか、実際にはあまり分かっていない。選択肢はあまりも多く、成果を最も期待できるのがそのどれなのかを決める方法は、理論の中だけからは見つけることができない。フィジカルレビューレターズの編集者の一人は、ミニマルモデルを越えた理論をランダムな方向に拡張する論文については、昨年あらわれた一論文のように、新しい相互作用を媒介するZ’という新しい重い粒子を導入し、それが電子・ミューオンのような六つのレプトンを含む非常に特徴的な崩壊モードをもつ、といったような具体的な事象を予言するものでないかぎり、学術誌としては取り上げにくい、とコメントした。
LHCの運転が来週再開し、データの収録が急速に進めば、会議中で多くの発表者が論じたように、その結果を使って過去数十年に提案された理論のどれが正しいのか選別が始まる。その際、データによって大部分の既存モデルが除外されたとき、Strassler氏の指摘 – 正解はミニマルモデルのうちには無いかもしれない – は、重要になってくる。つまり、その時点で却下されずに残っているミニマル的な理論が従って正しい、というふうにただちに結論するのは危険であり、ミニマルでないモデルについても精査する必要が出てこよう、ということである。その作業を行ってはじめて、自然の根本法則がどうなっているのかの核心に近づくことができる、ということである。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
linearcollider.orgのリニューアル:新しくなったILCウェブサイトをご覧下さい
(Change has come to linearcollider.org: take a tour of the renewed ILC website)
今号のディレクターズ・コーナーは、ILCプロジェクト共同ツールマネージャー、Maura Barone氏とBarry Barish(GDEディレクター)の共同執筆である。
リニューアルしたlinearcollider.orgサイトへようこそ!ILCウェブサイトは、開設時からこれまで、ILCプロジェクトに関する情報についての「ワンストップ・ショッピング」、そして、ILC設計の開発を行う私たちの間の大きな地理的距離を埋める、重要な架け橋となることを努めて参りました。有用な情報を提供し、機能的であると同時に魅力的かつ可用性を備えたウェブサイトをめざす、というのが私たちの戦略的ビジョンです。そのもと、従来設計を改め、コンテンツを更新すると同時に、技術をアップグレードすることでウェブサイトの野心的な改善計画を進めてきたところですが、本日、新www.linearcollider.orgウェブサイトをお披露目することができ、光栄に思います。
Maura Barone氏、ILCプロジェクト共同ツールマネージャー |
デザインを変更するにあたり、私たちはユーザに好まれていた旧デザインの雰囲気や機能を残しつつ、より鮮やかな色彩設計、広いページレイアウト、より柔軟なナビゲーションを採用することで、サイトをよりモダンですっきりとした印象へと衣替えしました。ウェブ設計そのものは、私たちのウェブサイトの前バージョンの全設計を担当したシカゴ拠点のウェブ・エージェンシーであるXeno Media社が担当。入念にデザインが変更されたホームページは、ILC画像のギャラリー、特集記事、世界中からの新聞のクリッピングを表示し、ILCプロジェクトの進捗に関する最新情報を継続的に提供し、背景となる話やILCに関連した話題を目玉としています。
Xeno Media社のKevin Munday氏は過去5年間にわたってILCウェブ戦略チームのメンバーであり、常々、「使い方の変化に伴い、ウェブサイトも常に変化するものだ」と言っていますが、このたびは、ユーザフィードバックや内部評価に基づき、ウェブサイトを完全に再構築しました。コンテンツは、トップ・ナビゲーション・バーからアクセスできる「ハイレベル・セクション」に分割しました。各セクションには、コンテンツ表示があり、次レイヤーへのナビゲーションが表示されます。ILCに関する一般的でタイムリーな情報を探したい方、ILCプロジェクトに参加している方、ダウンロード素材を探したり、印刷物をオーダーしたい方には、新しい『ILCについて』コーナーからお入りください。『国際共同設計チーム』と『物理と測定器』と題した技術的セクションには、プロジェクトに関する情報や、広く分散したILC共同研究グループの日々の活動に必要な関連ツールを提供しています。この2つの専門ページには、連絡先、会議日程、プロジェクト報告、最新情報、その他の多くが掲載されています。頻繁に訪問される『カレンダー』『用語集』『画像』『仕事』へのアクセスの便利のために、全ページに新たに『クイックリンク』ボックスを追加しました。また、ILC NewsLine関連情報を集めた、便利なワンストップ・ページも追加しました。新レイアウトの全貌は、ウェブサイトのサイトマップでわかります。
私たちは、サイトナビゲーションの効率化のため、新たな技術的改善も加えました。たとえば、読みやすく、覚えやすいウェブ・ページ・アドレス(URL)です。これについては、これまでに最も多くの要望をいただいていたものです。また、購読できるRSSチャネルを増設、『カレンダー』と『コンタクトパーソン』ページにはマイクロフォーマットを採用、hcalendarなどのクラスを使ってセマンティック情報を埋め込み、RSSリーダほかとの連携を改善しました。
ILCウェブサイトのリニューアル作業は、国際協力でおこなわれました。この実現に関わった以下のみなさんにお礼を申し上げます。まず最初に、共同でこのプロジェクトの目標設定と計画立案にあたった、ILCコミュニケーター、Jim Brau氏、Kevin Munday氏。ILCコミュニケーターからは、ホームページのスタイルからコンテンツの変更まで多数の提案を頂戴し、また、一般向けページのコンテンツ作成に貢献されました。同様に、Jim Brau氏は『物理と測定器』研究者グループを代表し、そのセクションのコンテンツの執筆と準備に尽力してくださいました。
サイト設計の精密化とシステムのカスタム・アップグレードについては、Xeno Media、特にMike Acklin氏とAlex Tarasiewicz氏に感謝します。ウェブ・サーバの完璧な保守をしてくれているTilted Planet氏に感謝します。
一部のILC-GDEメンバーにも特にお礼申し上げます。コンピュータ科学の分野からサマースクール学生として参加されたDavid Seigle氏、それから、多くの追加フィーチャと改良点の開発に携わった『オンコール』契約者の皆さん。コンピュータ技術者であり、GDEウェブ・アプリケーション開発者、Kevin Flannery氏は、プロジェクトの後半から参加されましたが、パフォーマンス改善と最終立ち上げで貢献されました。
最終的なサイトデザイン面に関しては、沢山の方々の強いご意見があり、これをまとめていくのは、なかなか大変なことでした。この点については、小数のではありますが有力なGDEメンバーで構成された小委員会に感謝いたします。この委員会には、極めて有能なPeter Garbincius氏が委員長として、また山本均氏、Brian Foster氏がグローバルな代表メンバーとして参加して下さいました。これらの委員の皆さんは多くの関係者から意見聴取し、自らウェブサイトをテストされ、サイト構築上の助言や今後の継続的改善計画の立案にご提案を頂きました。最後に、いつものように、GDE役員会メンバー、特にMarc Ross氏とMike Harrison氏から、有用なコメントをいただきました。
ここまでこぎつけることができ、大変に喜んでいるところです。どうか、新ウェブサイトをお楽しみください。ご感想をお待ちしています。[英文記事]
ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
International Linear Collider
Workshop 2010 (LCWS10 and ILC10)
Institute of High Energy Physics,
Beijing, China
26-30 March 2010
XIV
International Conference On Calorimetry In High Energy Physics
(CALOR2010)
IHEP, Beijing, China
10-14 May 2010
The 1st
International Particle Accelerator Conference (IPAC'10)
Kyoto,
Japan
23-28 May 2010
■ニュース記事
From SLAC Today16 February 2010
From Brookhaven National Laboratory
15 February
2010
相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)のクォーク・スープに対称性の破れの『泡』
[英文記事]
From Science News
13 February 2010
陽子衝突を開始する巨大コライダー加速器
[英文記事]
12 February 2010
AMS実験、宇宙空間でのミッションへ
From CERN News
11 February 2010
ルーマニア、欧州合同原子核研究機構の加盟候補に
■アナウンス
arXiv preprints1002.2206
The theory and phenomenology of perturbative QCD based jet quenching
1002.1967
Goldstini





One
can easily find the monthly Project managers' reports in the Global Design
Effort section.










