ILC NewsLine 2010年4月22日号 [英文記事]
■世界の各地より
Fermilab Todayより:新施設でのクライオモジュール一号機据え付けに共同する加速器部(AD)と技術部(TD)
(From Fermilab Today:AD & TD collaborate on first cryomodule for new facility)
細長いコンクリート建ての新ミュオン実験棟(NML)は、米国フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)の敷地の北端の空き地に面して位置している。飛行機格納庫ほどのサイズがあるこの建物には、Fermilabの超伝導RF試験施設が展開している。ここでは、最近、人と機材の出入りがとみに増し、高エネルギー素粒子物理学研究の新天地を切り開く研究のための準備作業がたけなわだ。
研究所の加速器部門と技術部門が結成するチームは、クライオモジュール第一号のビームライン真空システム接続での一ヶ月に及ぶ共同作業をこのほどおえた。このモジュールは、プロジェクトXやILCといった次世代粒子加速器向けの基幹技術要素である。迷路のように入り組んだ厚さ6フィートのコンクリート壁の内部に隠れているのは、大きな図体の、マリーゴールドイエロー色の管に、8台のSRF空洞(強力なエネルギーで粒子ビームを加速するメカニズム)が収められているものである。正しく動作するためには、これらの空洞の内部はとてつもなく清浄な状態に保たれなければならない。わずかなちりがあっても、大問題が起きてしまうのだ。
加速器部門のJerry Leibfritz氏(SRF試験施設プロジェクト・リーダー)は、「この空洞内部を清浄に保つ、という課題は、空洞ストリングの真空システムを組み立てるスタッフにとって大問題でした」、と言う。
「全ての接続部分、そしてそこで使うすべてのナットやボルトは、エアガンから純粋窒素を吹き付けてゴミを取らなければなりません」と、彼は述べた。そこで、クライオモジュールの周りでの作業のために、移動式のクリーンルームを用意された。真空システムの接続作業には、五人のスタッフが残業・週末を含めてまるまる4週かける必要があった。
真空システムの弁や配管にはむき出しになっているものがあり、その保護のために、透明ケースが設けられている。その透明ケースをコツコツと叩きながら、「防弾ガラスと同じ素材で作られているので、簡単には壊れません」と、Leibfritz氏は言う。技術者がレンチを落とすなどの事故からSRF空洞を保護するためのものなのだ。「空洞内に何かが入ってしまうと、何年もかけてきたこれまでの作業やものすごく高価な技術が台無しになってしまうのです」と、彼は述べた。
Tug Arkan氏(技術部)は、こうした注意深さについてよく理解している。Arkan氏は、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)の同僚らとともに、FermilabでSRF空洞のアセンブリ作業を指揮した。「いまのところ、皆の仕事は報われつつあります」と、Arkan氏。
「初期チェックの結果は良好です」と、彼は言う。「空洞が汚れていたら、真空引き開始後、これほど短時間のうちにビームラインが高真空にはならないはずですから」
加速器担当の副所長である、Steve Holmes氏は、「研究所の各部門がこの計画にそれぞれの専門技術を持ち寄ってくれました」と語った。技術部にはクリーンルームの、加速器部には高真空の専門家がいるのだ。
「こういう仕事での成功で最も大切なのは、連携です」と、彼は語った。「加速器部にしても技術部にしても、単独ではやり遂げる力はありませんでした」
このクライオモジュール一号機は、NMLでの加速器試験施設で最終的に6台使われるもの(Leibfritz氏が言うところのミニILCとなる)のうちの1台である。
「これは、Fermilabにとって全く新しい技術です」と、Leibfritz氏は述べた。「将来はここにあります」
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■特集記事
超伝導空洞、核廃棄物放射線毒性低減への応用可能性
(Superconducting cavities could help reducing nuclear waste radio-toxicity)
ILCと環境保護に共通するものとは?答えは、超伝導空洞である。欧州MYRRHAは、加速器ベースのシステムで核種変換過程をおこなう技術実証をめざした実験施設である。加速器の主な構成要素要は、一連の超伝導空洞である。イタリア、ミラノにあるイタリア国立核物理研究所(INFN)のグループは、TESLAやILC開発で得た経験を総動員して、この仕事のために必要な陽子用の楕円型空洞を開発した。そして先月、低ベータ用の楕円型空洞1台をおさめたクライオモジュール試作機が、仏オルセーにあるIPNO/Supratechの専用試験台に設置された。核種変換過程の基本目的は、高レベル核廃棄物を最終貯蔵所に送る前に、その放射毒性、体積、発熱量を低減することである。ここで解こうとしている問題は、いかに核廃棄物を処分するか、である。放射性核種のなかには半減が百万年を超えるものがある。核種変換とは、おおざっぱには、そうした核種を「燃やし」、半減期が数百年の程度のものに変換することを指す。欧州の加速器ベース核種変換構想(ADS)では、核破砕標的に陽子ビームをぶつけるものだが、これには大電力の陽子加速器が必要となる。そこからもたらされる大強度の中性子線が未臨界の炉心(画像2参照)に供給される。ベルギーのMolで数年後に建設が予定されている、MYRRHAプロジェクト(ハイテク応用のための多目的ハイブリッド研究炉)では、原子炉と加速器を組み合わせた運用の実証を行うことを目標としている。
イタリア、ミラノのイタリア国立核物理研究所(INFN)/LASA(Laboratorio Acceleratori e Superconduttività Applicata)と、フランス、オルセーのフランス国立科学研究センターCNRS/IN2P3研究所にあるIPNO(原子核物理学研究所)との欧州の二つの研究機関は、欧州連合枠組み6プロジェクトEUROTRANSの中で、ADS陽子線型加速器用の700メガヘルツのクライオモジュールの設計と建設に携わってきた。先月、INFNの研究者と技術者からなるチームは、オルセーを訪問し、いわゆる「低β(ベータ)」の楕円空洞を収めたクライオモジュールの試作器完成品をIPNO Supratechプレートフォーム試験台に設置した。イタリアチームは、ILC用の超伝導空洞の設計製作や、ILCタイプのブレード・チューナーの設計・製作に貢献した人たちである(KEKで行われたILC S1グローバル実験向けに、チューナーを製作した件についてはILC NewsLineを参照)。彼らは、また、クライオモジュールそのものの設計も担当した。IPNOのフランスチームは、高周波源、カップラー、冷凍機機材の開発を行った。EUROTRANSは、この(2010年) 3月に、クライオモジュール・プロトタイプの引き渡しを終えた。「何年もかけて、設計図とレイアウトについての会合を重ね、パズルの全てのかけらが組み合わさったように、プロトタイプが完成し、満足しています」と、INFN/LASAの研究者、Paolo Pierini氏は語った。
![]() The MYRRHA demonstrator. Image: SCK*CEN/Mol & CNRS/IN2P3/IPN Orsay.MYRRHAのデモ画像:SCK*CEN/Mol&CNRS/IN2P3/IPNオルセー。 |
![]() 2010年3月19日、オルセーでADSクライオモジュール・プロトタイプの据え付け完了を祝うINFN/LASAとIPNOチーム。画像:Paolo Pierini氏。 |
欧州ADSに使われる100~200台の超伝導楕円空洞は、ILCの空洞とは非常に異なっている。ビーム・エネルギーは、最大600MeVと比較的小さい(「低β」空洞(βは光速を単位とした速さ)が使われるのはそのためである)。これらの空洞は、700メガヘルツで動作する(TESLA型ILC空洞は1.3ギガヘルツ)。しかし、基礎技術の多くは、テスラ試験施設共同研究、欧州XFEL、ILCに由来する。INFN/LASAとIPNOはこれらのプロジェクトに長年携わっており、EUROTRANSの空洞製造はその基盤のうえに行われてきた。まず、これらの空洞はテスラ型ILC空洞と似た楕円形状を持ち、素材も同じニオブを使っている。空洞表面処理レシピは、FLASHやILCからのコピー。同様の電子ビーム溶接やクリーニングを使っている。ただし、必要な加速勾配は8メガボルト/メートル(ILCは31.5メガボルト/メートルである)にすぎないので、表面化学処理としては「標準的な」緩衝化学研磨で十分である。そのため、より高い加速勾配に到達できるけれども技術的には難しい電解研磨技術の適用は省略されている。
IPNOとLASAの専門家にとって、ADS加速器はまた新しいチャレンジでもあった。未臨界の原子炉に中性子ビームを入射する、ということは、対応する陽子ビームをほとんど切れ目無く連続的に運転しなければあらないことも意味する要求する。どのくらい切れ目無くか、といえば、1年のうち1秒以上続けて停止できるのが5回未満、といった程度である。「加速器専門家として、原子炉設備チームと緊密に協力して働く、というのはカルチャーショックでした」と、IPNOの加速器部門のエンジニア、Jean-Luc Biarrotte氏は語った。「そのような厳しい信頼度を念頭には、普通、加速器は設計しませんから」。このように高度な信頼性指向に慣れるため、加速器エンジニアたちは、非常な努力を払うことになった。プロトタイプの最終試験は今月オルセーで進行中である。MYRRHAデモ機の実現に向け、よい結果が出ることが期待される。「このプロジェクトは、高エネルギー物理学のために追求されたFLASH/ILCの副産物として、クリーンな世界を創るのに超伝導高周波技術を適用するうえで、評価されて良いと思います。私たちのライフスタイルと新興国の発展を維持するうえで、必要なことです」と、Pierini氏は結んだ。「高放射線毒性廃棄物は、これからも重要な環境課題です。ADSは、使用済燃料低減の方向性の一つです。私たちの共同開発がお役に立てれば、と思います」
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[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
ILC-CLIC一般問題グループ
(ILC-CLIC general issues group)
北京会議の会期中、Philippe Lebrun氏は、国際共同設計チーム(GDE)役員会にたいして、新設された「ILC-CLIC一般問題グループ」の作業報告を初めて行った。ワーキンググループのメンバーは、コンパクトリニアコライダー(CLIC)研究からPhilippe Lebrun(共同議長)、Ken Peach、Daniel Schulte、GDEからはMike Harrison(共同議長)、横谷馨、Eckhard Elsen、野各氏である。グループは、その任務について概観、ILC-CLIC間のいくつかの共同ワーキンググループの進捗状況を報告、今後の活動予定を立案した。
一般問題グループの任務は、ILC-GDEとCLICの首脳部によって起草され、両プロジェクトの運営委の承認を受けたものである。両プロジェクトの運営委員会とも、この一般問題グループの仕事を非常に大切なものと考え、本グループからの報告を直接受けとるもの、としている。任務内容は、下記の通り: 北京にて。Philippe Lebrun氏(CLIC一般問題グループ共同議長)画像:IHEP/Jie Liu氏。 |
こちらも北京にて。Mike Harrison氏(GDE一般問題グループ共同議長)画像:IHEP/Jie Liu氏 |
ILCSC[国際リニアコライダー運営委員会]とCSC[CLIC運営委員会]は、以下の任務においてILC-CLIC一般問題ワーキンググループの設立を承認する:
- リニアコライダーを推進すること
- ILCとCLICの設計概念構築の効率化を目指し、両者の協力関係の要目を明らかにすること
- ILCとCLICの詳細な活動計画を吟味し、サイト選定、技術問題、プロジェクト計画に関して共通の課題を洗い出すこと
- 双方のプロジェクト実施計画における課題を議論すること
- 2つの技術アプローチ間の比較に必要な要目を洗い出すこと。
Philippe Lebrun氏の報告にあるこの新委員会の最初の成果は、複数のILC-CLIC共同ワーキンググループによる作業内容の調査である。彼は、席上、グループ一つ一つについて、よく整理された概要比較報告をおこなった。網羅されたワーキンググループの数々は、ビーム収束系、加速器測定器インターフェース、土木工事と一般施設、陽電子生成、ダンピングリング、ビームダイナミクス、コスト、建設シナリオなどを扱うものである。この調査に基づき、一般問題グループは、CLIC-ILC間での相乗効果を最も期待できる分野が何であるかを特定しようとしている。
既に報告にあるように、これらのワーキンググループは2008年より活動を開始した。先だってEUROTeVプロジェクトで研究された項目も一部含まれる。ワーキングループは、ILCやCLICでの大きな会議を利用して行う対面協議のほか、普段はWebExを使って月例会議を行っている。全グループには、あわせて7か国の沢山の研究機関から37人が参加し、非常に国際色豊かなものである。調査の途上、様々の肯定的指摘が多方面からなされた:CLICとILC研究チーム間の連携強化、共通の課題についての相互貢献、専門家の共有プール、潜在的問題についての意見交換と確認、経験・手法・ツールの共有とそれを通した作業効率化と透明化、ソフトウェアコードの標準化、実験施設へのアクセスなどである。浮き彫りになった問題点もある:プロジェクト固有の、相互にはあまり共有されない課題にかかわる時間、そして結局は予算と人的資源の不足(!)である。ではあるが、Lebrun氏の結論は、全体として、共同ワーキンググループは大変に実り多いものである、ということだ。彼らはまた、2012年までのILC技術設計の期間中、共同ワーキンググループが何を行うかの計画現状について取りまとめた。なかでも一番重要なのは、コストと建設開発スケジュールに関するものである。そこではCLIC と ILC からのコスト評価情報の共有、比較の努力、内部レビューへの相互乗り入れといったものが含まれる。このような共同作業を通して、双方のコスト評価作業がより信頼性高いものに改善し、コミュニティの将来の意志決定にさいして意味ある比較が可能になることが期待される。
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ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
TESLA
Technology Collaboration (TTC) Meeting
Fermilab, IL, USA
19-22 April
2010
XIV
International Conference On Calorimetry In High Energy Physics
(CALOR2010)
IHEP, Beijing, China
10-14 May 2010
The 1st
International Particle Accelerator Conference (IPAC'10)
Kyoto,
Japan
23-28 May 2010
Polarized Positron
for Linear Colliders Workshop (Posipol 2010)
KEK, Japan
31 May - 2
June 2010
今後のスクール
CERN Accelerator School (CAS 2010): Course on RF for Accelerators
Ebeltoft, Denmark
8-17 June 2010
■ニュース記事
From CERN Bulletin19 April
LHC現状
3月30日、LHCの全4つの実験で最初の3.5TeV衝突が成功裏に観測された後、LHC運転立ち上げチームの焦点は、ビームの入射と加速の手順の統合に向けられている。
15 April
粒子検出器を遮蔽に使われるローマのインゴット
古代の難破船から取り出された鉛が、イタリアのニュートリノ実験で利用される。
From San Francisco Business Times
14 April
ローレンス・バークレー研究所によるSFベイエリアへの経済効果6億9000万ドル
今週発表された調査によると、ローレンス・バークレー国立研究所は、昨年、5,600の雇用と6億9000万ドルの予算でサンフランシスコ・ベイエリアの経済に貢献した。
[英文記事]
■アナウンス
◇ILC-Note2010-053
Ten-TeV e+e- collisions with beamstrahlung compensation for linear collider
2010-052
Multi-TeV upgrade concept for international linear collider based on proton driven plasma acceleration
◇arXiv preprints
01004.2783
Collider signatures of the Gauge-Higgs Dark Matter
01004.2587
Particle Showers in a Highly Granular Hadron Calorimeter
1004.2188
Electroweak non-resonant NLO corrections to e+ e- → W+ W- b bbar in the t tbar resonance region






















