ILC NewsLine 2010年6月24日号 [英文記事]
■世界の各地より
DESYより:FLASHで自由電子レーザの最短波長記録達成 - 初の4.5ナノメートル以下
(From DESY: Record wavelength at FLASH – First lasing below 4.5 nanometres at DESY's free-electron laser )
ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY) FLASH加速器からの最新報告によれば、TESLA技術共同研究グループは、米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)で制作された新しいクライオモジュールを使い、電子ビームのエネルギー増強と、レーザー光のスポットサイズ絞り込みに成功した。FLASHによる波長4.45ナノメートルのレーザー光生成はこれが初めてで、軟X線源で従来得られていた6.5ナノメートルを大幅に更新した。同時に、光パルス一発あたりのピーク強度は0.3ミリ・ジュールで、従来のほぼ二倍。超伝導線形加速器の大幅な改良やハンブルグ大学との実験機器の据え付けなど、5ヵ月間にわたる加速器のアップグレード作業の結果得られた成果である。
世界初のX線自由電子レーザーであるFLASHは、光子科学ユーザーコミュニティーの実験用に、レーザビームを2005年から提供している。昨年冬、この施設では大幅なアップグレードが行われ、加速器に7台目の超伝導加速器モジュールを追加、最大電子エネルギーが1.2ギガ電子ボルト(GeV)まで増強された。さらに、加速電子バンチの性質を改善するために特殊な3.9GHzモジュールが設置された。現在の立ち上げ運転での試験結果は非常に良好で、線形加速器は1.207GeVで運転、3.9GHzのモジュールを使った電子バンチの調整によって、レーザー光輝度の世界記録達成が可能となった。
「大幅なアップグレードを行った後、無事運転している、FLASHの実現の速さと有望性は、ものすごく印象深いものです。FLASH加速器チームは本当にすばらしい」と、Reinhard Brinkmann氏(DESY加速器部長)は祝辞を述べた。現在入手可能なレーザー波長を使うと、有機分子のカーボンの実験は、手の届くところにある。第三調波波長をつかった磁気力学実験は、かなり増強された輝度により進展が期待される。
この成果は、フェムト秒のオーダーで起きている高速な事象と観測しようとしている欧州XFELにとっても、重要なマイルストーンでもある。FLASHにこのたび組み込まれた加速器モジュールは、XFELでの加速器モジュールのプロトタイプであり、そして、3.9GHzの特殊モジュールもまた、XFELの入射器運転での決め手となるものだ。FLASHのユーザー向け運転第三期は、8月末に開始の予定である。[英文記事]
■特集記事
Jie Gao氏:アジアリニアコライダー運営委員会の新委員長
(Jie Gao: new chair of the Asian Linear Collider Steering
Committee)
中国、北京にある、中国科学院高能物理研究所(IHEP)の教授であるJie Gao氏は、アジア地域次世代加速器推進委員会(ACFA)により、アジアリニアコライダー運営委員会(ALCSC)の新委員長(任期3年)に任命された。Gao氏の任命は、第1回世界加速器会議(IPAC'10)中に行われた。「ALCSCの新委員長に指名され、大変光栄です。また、他領域との調和をはかり、コミュニケーションしながら、アジアにおけるILC活動を推進し、調整するというこの役割を全うすることに大きな責任を感じます」と、Gao氏は語る。
Gao氏が引き継ぐALCSC委員長職は、これまで黒川眞一氏が務めていたもの。黒川氏は、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)の前委員長、IPAC'10の名誉議長もつとめている。「私がGao教授と知り合ったのは、ILCSCの委員長になった直後の2005年のことです。それ以来、私は彼と議論し、彼がILCを目指して努力しているご様子を沢山拝見してきました。ILCに対する彼の熱意と高い理想には、いつも深く感銘を受けていました」と、黒川氏は述べた。「米州や欧州と比べて、国や地域の違いが大きいアジアでILC活動を進めることはずっと難しいけれども、果てしない熱意とものすごいエネルギーを持つ彼ならやってくれるものと確信しています」と、Gao氏への信頼と期待を示しながら、黒川氏は述べた。
Gao氏は、ALCSCの委員長としてILCSCのメンバーにもなった。前委員長たちへ敬意をこめて彼は次のように語る「初代ALCSC議長であるWon Namkung教授、そして、前ALCSC議長の黒川さんの、素晴らしいリーダーシップ、そして、アジア、主に日本、中国、韓国、インドにおけるILC活動の推進、調整へのご尽力に、心から感謝しています」。長年、Gao氏はILCに関わってきた。彼は、2003年から将来加速器国際委員会(ICFA)ビーム・ダイナミクス・パネルのメンバーを、そして2006年からはILCスクールのカリキュラム委員会のメンバーをつとめている。「次世代電子陽電子リニアコライダーの推進のために多くの人々と働くことができ、大変楽しかったです」と、Gao氏は語った。現在、Gao氏はIHEPのILCグループ・リーダーをつとめる。彼の中心的な研究分野は、ILC向けの1.3ギガヘルツの超伝導加速技術開発、ILC仕様パラメータ選択と主線形加速器ビームダイナミクス、ダンピング・リング設計、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のATF2である。「Gao先生は、長期ビジョンをもつ厳しく博識な方です。さらに重要なことですが、私は、彼の高い責任感、そして中国の高エネルギー物理学の進展と繁栄を持続的に追求する姿勢が素晴らしいと思います」と、Dou Wang氏(Gao氏の博士学生)は語った。
研究の他に、Gao氏は、哲学と油絵、中国の景色絵、磁器、陶器などの美術収集を趣味としている。「Gao氏は中国の科学者としては少し異色で、研究活動においても社会的な活動においても、強い情熱、夢、責任をお持ちの方です」と、Ji-yuan Zhai氏(IHEPのILCグループメンバー)は語った。「彼の生活の中で、科学、哲学、芸術は自然に一体になっています。彼と付き合うとそのことに気づかされます」
Gao氏は新しい委員長としての今後についても触れた。最初にすべきことは、前議長たちの経験から学ぶこと、そして、アジアの異なる状況を理解するためには、論文や報告を読むだけでなく、現場訪問も行う必要があると言う。「アジアにとって重要なのは、異なる国と領域(例えば台湾)そして、アジアの中のより多くの共同研究グループからのより釣り合いのとれた参加を通して、ILCの世界共同研究グループで重要な役割を果たしていくことであると思います」と、Gao氏は念じている。[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
ILC設計の柔軟性
(Flexibility in the ILC design)
今号のディレクターズ・コーナーは、国際共同設計チーム(GDE)役員会のメンバー、Ewan Paterson氏の執筆である。
ここに相反する要求があることは明らかであるが、加速器・物理の専門家として取り得る可能性は二つある。一つは、想定できるあらゆる展開に対応可能な最大限な柔軟度をもつ設計を行うということ。ただし、その場合の設計は、どの特定の展開に対しても最適解になっているとは言えず、またコストも非常に大きなものになってしまう。もう一つは、コストを削り、ただし、ある程度の柔軟度は維持し、いくつかの明確なアップグレードの途を用意して将来の物理プログラムの展開に備えようとするものである。私たちが取ろうとしているのは、この後者の姿勢であると私は思う。ではあるが、設計ベースラインでどのような加速器性能や物理プログラムを前提にするかは、意見が分かれるところである。ベースラインが何故必要かと言えば、技術設計報告書(TDR)においてエンジニアリング作業や、コスト評価を行う必要があるからで、TDRが何故必要かと言えば、これがプロジェクト承認に向けて必要な1ステップだからである。このジレンマを解くには、どのような設計の柔軟性が考えられるか、アップグレード・オプションが可能性として考えられるかの理解を深めることが必要である。
多くの加速器プロジェクトで、建設前、建設中にアップグレード計画は構想されるが、そうしたアップグレードの実装詳細は、実際の運転を経験するまでは詰められないものである。大型ハドロンコライダー(LHC)は、その好例である。エネルギーや、ルミノシティの増強は典型的なアップグレードの課題で、ILCでも1テラ電子ボルト(TeV)までのエネルギー増強は常に課題として認識されている。ただし、基準設計報告書(RDR)には踏み込んだアップグレード構想が記載されているわけではない。TDRでは、このオプションについてより詳細な検討を加え、他の設計オプションとともにコスト押さえ込みの努力(これまでのディレクターズ・コーナーでたびたび触れられている)のなか、それらがどのように全体設計に取り込まれるかについて記載されることになっている。
ストローマンベースライン2009 (SB2009) 提案の中身をいくつか見てみよう。SB2009は、現在、その新ベースラインへの取り込みが検討されているところのものである。ILCの『中央領域』を見ると、ここでは、最終収束システム、電子陽電子のすべてのビーム源、入射器、ダンピングリング、ビーム輸送部を包含する様子がわかる。この構成を採ったことで、線形加速器(linacs)とそして中央領域から線形加速器上流端まで低エミッタンスの陽電子や電子を運ぶビームラインは、上流に向かって数キロメートルの区間を連続的に比較的単純に伸びていくことになる。従って、物理、ビームエネルギー設定、加速勾配、などのどこかで新展開が見られたり、コスト上の再最適化を行ったりする場合には、この、上流に向かうトンネルとビームラインの長さだけを変更すれば良いことになる。エネルギー増強のシナリオを考える上でも、これは重要な留意事項である。
ダンピングリングは、円形または正多角形ではなく、陸上競技場のような形をしていて、その直線部(長さおよそ1km)はビーム収束系または線形加速器と平行に、それらを遮らないように設置されている。ダンピングリングの周長としては6.4kmと3.2kmの二つのケースが検討されているが、ビーム入射・取り出しのための直線部の設計には互換性がもたせてある。そのため、前出の「ILC中央領域」の詳細設計の多くは、ダンピングリングの周長決定を待つことなく進めることができるようになっている。RDRでは、陽電子源は250GeV線形加速器の途中150GeVのところに置かれていて、線形加速器の下流端やILC中央部に設置されてないが、それは何故か?ILCでは、いくつかの物理やエンジニアリング上の理由(陽電子偏極や、標的にあてるビーム電力など)で、ヘリカル・アンデュレーターを電子ビームが通過するときに発生する光子を使って、陽電子を生成する。ただし残念ながら、全陽電子システムからの陽電子の生成歩留まり(もとの電子ビーム中の電子一個あたり、陽電子が何個作れるか、の割合のことである)は、電子がアンジュレータを通過するときのビーム・エネルギーに強く依存する。そのため、広いエネルギー範囲、たとえばビームあたり100~500GeV、で大ビーム電流(高ルミノシティ)の運転が必要となると、設計最適化は非常に難しくなる。RDRでは、電子ビームのエネルギー範囲として重要なのは150~200GeVとされ、その下限150GeVはちょうど陽電子で十分な性能歩留まりを与える最低エネルギーになる、ということで、アンジュレータをはじめとする陽子生成システムはそこに設置、ここを通過した電子ビームは衝突点で必要なエネルギーに向かって加速されるか、減速される、とした。今日、これに替わるオプションとして私たちが検討しているのは、ライナックの終端に陽電子源を置く方式である。
もし250GeV、5ヘルツの繰り返し率で運転するライナックを建設したとすると、大凡、125GeV、10Hzで運転するための十分な高周波電力と低温冷却能力を持つことになる。したがって、より低いエネルギーでの運転向けに検討中の運転シナリオは、電子入射器、ダンピングリングおよびライナックを10Hzで運転することであり、そこでは、交互に重ねられた5Hzが、RDRで想定されたものと同様のアンデュレーターを通した電子エネルギーで、ライナック終端において、陽電子を生成する。 電子の(もう一方の)交互の5Hzが、同じく5Hzの陽電子(陽電子ライナックは、5Hzでまだ運転する)との衝突に使われる。 その電子は、陽電子生成用の電子ビームより低い(またはより高い)エネルギーとする事ができ、また、減速の必要無く全ライナックを使用する。(ある)ライナックの大きなエネルギー・バンド幅は、これを可能にし、現在進行中のこのような研究は、魅力的で明解である。 私たちは、中心領域における全ての資源(ソース)によって、妨げられない電子リニアックの柔軟性を保ちつつ、RDRの性能は維持するであろう。
現在進められている研究は他にも沢山ある。とくにサイトに依存した設計選択、最適化がそれであるが、上のような例を見ることで、TDR向の「ベースライン」に取り組みながら、「柔軟性」も取り組むことは可能である、という実例があることを理解していただけるかと思う。「柔軟性」は、なにかのきっかけでILC計画が思いのほか早く承認され、迅速に建設を進めなければならないことになったときの備えとして、必要なことである。
[英文記事]
ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
LoopFest IX: Radiative
Corrections for the LHC and Lepton Colliders
Stony Brook University
Campus, NY, USA
21 June - 23 June 2010
TeV Particle
Astrophysics 2010
Paris, France
19 July - 23 July 2010
35th International
Conference on High Energy Physics (ICHEP2010)
Palais des Congrès, Paris,
France
21 July - 28 July 2010
First Baseline Assessment Workshop
KEK, Tsukuba,
Japan
7-10 September 2010
今後のスクール
Fifth CERN-Fermilab
Hadron Collider Physics Summer School
Fermilab, Batavia, IL, USA
16-27 August 2010
■ニュース記事
From {sciences2}, blog of Libération
23 June
2010
Physique des particules : le Cern s'élargit
"Le
principal enjeu de ce grand jeu mondial est le site de la prochaine machine
mondiale, post LHC.(...) La technologie de ce collisionneur linéaire est elle
aussi en discussion, entre un système dit ILC avec des cavités supraconductrices
et CLIC un projet plus futuriste et plus puissant."
[フランス語記事]
From Science Magazine
22 June 2010
新加速器の建設競争で、イタリアに先駆けて日本は1億ドルの予算措置
「次の3年で日本政府が承認した予算は、しかし、スーパーKEKBアップグレードに必要な3億5000万ドルのごく一部を賄うに過ぎない」
[英文記事]
From BBC News
22 June 2010
『幽霊粒子』ニュートリノの質量を測定する天文学者
「多数の銀河にかんする過去最大規模の観測データから、天文学者たちはニュートリノの質量は0.28電子ボルト以下であると見積もった。」
[英文記事]
22 June 2010
ブリティッシュコロンビア州、次世代の加速器技術開発に予算
「・・・物理学と医療用の同位元素を生成し、研究するための新研究施設を建設。中心装置となるのは、超伝導高周波(SRF)技術を利用する大電力線形電子加速器である」
| From CERN 18 June 2010 CERN理事会は、より大きな統合にドアを開く |
From CNRS and CEA
17 June 2010HESS-II:ダイナミックな宇宙を探査するための新しいカメラ
「このカメラは、第五望遠鏡の鍵となる鋭い眼と言って良い。IN2P3/フランス国立科学研究センター(CNRS)がプロジェクトマネージャをつとめる、フランスの重要な貢献である。」
■アナウンス
2010-045
ILC Global Design Effort – Project Managers' Report – May 2010
◇arXiv preprints
1006.3991
KEK GRID for ILC Experiments
1006.3744
ISIS2: Pixel Sensor with Local Charge Storage for ILC Vertex Detector
1006.3712
AHCAL Energy Resolution
1006.3674
Progress towards a Technological Prototype for a Semi-Digital Hadron Calorimeter based on Glass RPCs
1006.3662
Monte Carlo Studies of the CALICE AHCAL Tiles Gaps and Non-uniformities
1006.3626
Shintake Monitor in ATF2 : Present Status
1006.3623
Status of Simulation Tools for the ILD ScECAL
1006.3551
Using Single Photons for WIMP Searches at the ILC
1006.3503
The SiD Detector Concept
1006.3434
Analysis of Little Higgs Model with T-parity at ILC
1006.3427
Measurement of Higgs Anomalous Coupling with H → WW* at International Linear Collider
1006.3421
Simulation Study of FPCCD Vertex Detector
1006.3402
Studies on the Electron Reconstruction Efficiency for the Beam Calorimeter of an ILC Detector
1006.3396
The International Large Detector: Letter of Intent
1006.3263
Photon detection efficiency of Geiger-mode avalanche photodiodes
1006.3220
A Lightweight Field Cage for a Large TPC Prototype for the ILC
1006.3081
Numerical relativity for D dimensional space-times: head-on collisions of black holes and gravitational wave extraction

































