ILC NewsLine 2010年7月22日号 [英文記事]
■世界の各地より
IHEPの超伝導空洞で重要な進歩
(Important progress on IHEP superconducting cavity)
7月1日、北京にある、中国科学院高能物理研究所(IHEP)で製作された9セル超伝導空洞の初めての縦置き試験が高エネルギー加速器研究機構(KEK)で行われた。この空洞は「IHEP-01」と名付けられた1.3ギガヘルツ(GHz)低損失型空洞で、今回の試験では、1メートルにつき20メガボルト(MV/m)の加速勾配が達成された。この記録はまだ設計加速勾配には到達していないものの、中国における超伝導RF(SRF)技術の研究開発において重要な進歩を示すものだ。
この空洞は、寧夏省にあるOrient Tantalum Industry (OTIC)社の精製したラージグレイン(結晶粒塊が大きいこと)のニオブからつくられている。2009年2月に製造が開始され、電子ビーム溶接(EBW)の後、2010年4月に完成。その後、IHEPで新たに開発したSRF施設での、遠心バレル研磨、緩衝化学研磨、プレ・チューニング作業が行われた。「IHEPでは、これまでに培われた単セル空洞製造の経験に基づき、9セル空洞の研究を開始し、その他の中間段階を省きました。この戦略は、9セル空洞の完成までの、大幅な時間とコストの節約となりました」と、IHEPのILCグループリーダーであり、ALCSC(アジアリニアコライダー運営委員会)の委員長である、Jie Gao氏は語った。KEKに到着した空洞は、6月4日に超音波洗浄と高圧水洗浄処理を受け、7月1日には2K(絶対温度-271℃)にて、縦置き試験が行われた。試験中、強い電界による放電が存在することが判明した。これを解決するためにはまず、続いて行われる表面処理で、アイリス部の表面状態の改善を行うことが必要であろう。クエンチが起こる要因には、電子ビーム溶接時に生じる、エンドセル空洞の赤道部の欠陥である可能性があり、その欠陥は、表面処理の回数を増やすことで取り除くことができると考えられている。試験結果からは、中央部の空洞3台は、32MV/mの加速電界に達したことがわかる。「研磨加工をすることで、アイリス部の表面状態と赤道部の電子ビーム溶接のクオリティをうまく調整できれば、この空洞は30メMV/m以上の高い加速勾配に到達できるでしょう」と、Gao氏は確信する。今年の後半には、2回目の試験が予定されている。
IHEP-01は中国製の最初の低損失型空洞の一つであり、IHEP革新プログラムにより支援され、2008年末からR&D研究が開始された。1.3GHzの9セル空洞は最も重要なキーコンポーネントであり、今回の試験がプログラム完成に向け鍵となるステップとなったことを証明している。「IHEP-01は、IHEPの超伝導技術開発のマイルストーンです」と、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)の前委員長である、黒川眞一氏はお祝いメールで語っている。
[英文記事]
■特集記事
ILCを一目見る
(The ILC at a glance )
ILCはどのような形なのか?線形加速器は、どれくらい大きいのか?衝突はどのように起きるのか?もし、講演中にどう説明すればよいのかわからなくなってしまった時に、新しいアニメーション「1分でわかるILC」が、ILCとは何か、どんな仕組みになっているのか説明するのに役立つかもしれない。
最初の部分は概略図で、互いに向き合う2台の線形加速器と、中央で衝突する二つのビームの基本原理を示している。それから、アニメーションはILCトンネルに飛び込んで、最終的な衝突までビーム(これを陽電子とみるか電子とみるかは、お好み次第です)をたどる。アニメーションの作者、Rey.Hori氏は、ILCの加速器と測定器分野のKEK研究者とそしてILCコミュニケーターと緊密に協力してきた。イラストレーター/ウェブ・デザイナー/アーティストであるRey.Hori氏がILCコミュニティの新顔メンバーではないことは、多くの人がお気づきであろう。彼の多くの作品を、目にしたことがある人は多いと思う。2004年から、彼はKEKと仕事をしてきた。ILCのために制作した全ての作品は、コンピューターを使った設計システム(CAD)からつくられたもので、非常に写実的だ。
本日公開するのは、最も短いバージョンである。1分ちょっとでILCの全体を示すことができるもので、講演で使用して頂ければ、とても簡単に聴講者の目を惹き付けることができるだろう。もうすぐ、講演資料に組み込むことができる、便利な軽いフォーマットを提供する予定だ。これはYoutubeのようなビデオ共有システム上で簡単に共有も可能で、ILCに関する講演をする方はどなたでも利用することができる。二本目として、主に報道関係者向けの約3分のバージョンを公開する予定である。テレビ局がインタビュー番組や報道番組を制作する時に使用されることを想定している。字幕を追加すると、どの映像部分が必要なのかより明確になるので、最終的には、3分バージョンにはILCプロジェクトの全体図を説明するナレーションや字幕説明を補足する予定だ。最終バージョンは、単体でILCプロジェクトを伝えるためのツールとして役立てることを目指している。
ILCの中を飛び回る「1分でILC」で、ILCがどのように動作するのか見てみよう。画像:ILC/Rey.Hori氏 |
ご覧の通り、Youtube上のILC-テレビ・チャンネルは、まだほとんど空だ。このチャンネルで見たい候補作品について、コミュニケーターに意見をお寄せください!
- アニメーションの閲覧、ダウンロードはこちらから
- Rey.Hori氏の 'Worksphere'の他の作品
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
動くILC
(An animated ILC)
「百聞は一見にしかず」という古いことわざは、絵で見れば言葉を尽くすよりずっと良くわかる、という意味だ。おそらく現代では、「アニメーションは、1000枚以上の絵を見るより価値がある」と言い変えることができるだろう。ILCを伝えるために、私たちはILCの様々な画像をつくり、使ってきた。しかし、これまで、私たちはコミュニケーションに必要なものとして、コンピューター・アニメーションを使用することに、足を踏み入れることはなかった。本日、私たちの最初のILCアニメーションを発表する。日本の堀内営氏(別名:Rey.Hori)が制作したものである。
新しいILCアニメーションはこちらから。 |
アニメーションはかつて、映画やビデオ業界のものだった。しかし、これらの業界の躍進の結果、アニメーションはコミュニケーションツールとして当たり前のように使われるようになってきた。もちろん、初期のアニメーションは、少しずつ異なる手描きの画像を使ってつくられており、次々と示されると、そのコマの微妙な違いが動きとして認識される「目の錯覚」を利用していた。現在では、コンピューターでアニメーションを作成することによって、同じコンセプトを非常にフレキシブルで効率的に実現している。
アニメーション技術は、現代の映画制作に使われる過程で、非常に洗練されたものへと変わって来た。モーション・キャプチャーを使って、人間や動物の動作は記録され、二次元あるいは三次元のデジタルキャラクターモデルを写実的にアニメ化する。パフォーマンス・キャプチャーは、詳細な顔面運動、指、実際の表情などもとらえることができる。このようにつくり出されたキャラクター、画像、アクションのリアリティとその人気については、ジェームズ・キャメロン氏の最新作「アバター」のような超大作映画がよい例である。私たちのアニメーター、Rey.Hori氏のバックグラウンドは、アーティストというよりはむしろ機械技術者である。私たちの活動は芸術ではなく、洗練された技術概念を伝えることである。Rey.Hori氏は、最初は趣味で三次元コンピュータ・グラフィックを製作し、アニメーションの技術を習得。それから、フリーのプロになった。こうした背景により『普通の』イラストレーターより加速器や技術者と緊密にコンタクトをとることで彼のアニメーション技術をより効果的に使用することができたと述べている。
ILCアニメムービーは、彼がこれまでに作ったなかで最も長いムービーである。ここ10年の間、1年に、静止画像や芸術作品、2、3の短いムービーの制作を行ってきた。彼の作品のほとんどは、電気部品(例えばコネクタ、スイッチ、その他)の構造や機能を説明するものである。彼は、アクション・スクリプトを使うアドビ・フラッシュによる、製品用のプロトタイプ・ユーザーインターフェースの開発にも携わった。
彼はほぼ1年前、何千もの高解像度画像をレンダリングすることで、ILCムービーの作業を開始した。彼のやり方は、ILCの部品を、コンピューターを利用した設計(CAD)プログラムをレンダリングするのと非常に類似しており、彼はMac上で日本の商業ソフトウェア『Shade』を操作する。彼は、精密なオブジェクトにはアドビ・イラストレーターや2D CADソフトを使用し、Shade上でモデリングのために最初に線画―概略や部品の横断面を作成する。それから、Shadeにインポートし、トンネル、クライオモジュール、空洞、測定器の3D画像にする。実際、彼のILCムービーは、早野仁司氏(KEK加速器研究施設)の助言の下、KEKのいろいろなILCリーフレットのために作ったイラストを使っている。Rey.Horiという名前がどこから来たか知りたいかもしれない。彼に尋ねてみた。彼がエンジニアをしていた時代にプロのコンピュータ・グラフィックスの仕事を始めたが、その時は、勤めていた会社には隠しておきたかった。それで、彼はイラストレーター名をつくった。Horiは、彼の名字の堀内から、Reyは『水路』や『チャンネル』を意味する日本の漢字に由来している。
アニメーションの将来の発達と、私たちが自分たちのコミュニケーションニーズにアニメーションを利用する方法を考えるのは、興味深いものである。アニメーション技術はもはや映画への利用による後押しよりもおそらく、創造力と進歩は数十億ドル規模のコンピューター・ゲーム産業界向けに行われている。アニメーターのためのツールボックスを大いに強化する技術的な前進が期待できる。たとえば、ホログラフィック3Dディスプレイ、そして、おそらく、私たちの好みに反応し、画像やゲームを修正するインタラクティブな脳波ソフトウェアまで使って、居間でバーチュアルリアリティーシステムをもてるようになるのを楽しみにしている。
ILCの私たちの目的、または技術的なトピックのために、異なるコミュニケーションツールがある。これらの新ツールを最大限に利用していかなければならない。話を伝える際に、画像の力を決して過小評価してはならない!私見だが、この最初のアニメーションで、私たちは複雑で取り組みがいのある話を語る強力な新たな手法に向け、小さいが、重要な第一歩を踏み出したのだ。
[英文記事]
■ブログライン
19 July - Katie Yurkewicz
Sneak peak at Tevatron results for ICHEP
19 July -
Jester
Expectations for ICHEP
17 July - Marco
Delmastro
Luminosity is not the whole story
15 July -
Barbara Warmbein
Less of a rumour, more of a fact
Follow Blogging ICHEP
2010
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
TeV Particle
Astrophysics 2010
Paris, France
19-23 July 2010
35th International
Conference on High Energy Physics (ICHEP2010)
Palais des Congrès, Paris,
France
22-28 July 2010
First Baseline Assessment Workshop
KEK, Tsukuba,
Japan
7-10 September 2010
XXV Linear Accelerator
Conference (LINAC10)
Tsukuba, Japan
12-17 September 2010
Topical
Workshop on Electronics for Particle Physics (TWEPP-10)
Aachen,
Germany
20-24 September 2010
Symposium on the
Superconducting Science and Technology of Ingot Niobium
Jefferson Lab,
Newport News, USA
22-24 September
2010
今後のスクール
Fifth CERN-Fermilab
Hadron Collider Physics Summer School
Fermilab, Batavia, IL, USA
16-27 August 2010
■ニュース記事
From World Radio Switzerland
22 July 2010
計画中のより巨大で、より良いハドロンコライダー
WRSのPete Forster氏はBrian Foster教授(ILCの欧州地域ディレクター)に尋ねた。「LHCではなく、ILCが行うものはなにか?」
[英文記事]
| From The Sun 21 July 2010 最大の宇宙創世器 ILCは、直線の全長31kmの粒子加速器を建設する野心的な計画である。この種の加速器は巨大な円形のLHCとは非常に異なっている。 From Popular Science 過去最長のリニア粒子加速器を建設するCERNの物理学者
| |
■アナウンス
◇arXiv preprints
1007.3185
Probing anomalous ZZH and γZH
interactions at an e+e- linear collider using
polarized beams
1007.3097
Neutral Trilinear Gauge Boson Couplings in
Little Higgs Models
1007.3087
Semi-DHCAL software developments: Digitization
and Display
1007.3077
Status of the Micromegas semi-DHCAL
1007.3053
Branching
ratio study of ZH → qqcc/qqbb
1007.3019
ILC
Beam-Parameters and New Physics
1007.3009
Test Beam Results Using an RPC Semi-Digital
HCAL
1007.2992
top FCNC physics at a Linear Collider after the LHC
1007.2748
Model
independent WIMP Searches in full Simulation of the ILD Detector
1007.2636
Identification of new physics and general WIMP search at the ILC
1007.2634
Development of Fast and High Precision CMOS Pixel Sensors for an ILC Vertex
Detector
1007.2553
Scintillator-Based Electromagnetic Calorimeter
Prototype and Beam Test Results at FNAL
1007.2522
Test Beams
Summary
1007.2471
R&D Status and Plan for FPCCD VTX
1007.2440
Influence
of beam related background on ILD reconstruction
1007.2358
CALICE
Second Generation AHCAL Developments
■今週のイメージ
ICHEP、本日スタート
(ICHEP starts today)

素粒子物理学の重要な会議のうちのひとつが、本日パリで始まった。ILCセッションは土曜日に開催予定だが、残りの会議もエキサイティングなようだ!詳細は、会議ウェブサイトの予定表、ライブブログをチェックしてください。




ILCの中を飛び回る「1分でILC」で、ILCがどのように動作するのか見てみよう。画像:ILC/Rey.Hori氏 





















