ILC NewsLine 2010年8月19日号 [英文記事]
ILC NewsLine特別号:次世代加速器とプロジェクト
(ILC NewsLine special issue: future machines and projects)
| 今号は、次世代特集号である。ILCのような次世代プロジェクトにとって、次世代はもちろん常に存在する。しかし、今週素粒子物理学における他の可能性のあるプロジェクトについての連載をスタートする。一般的な概要に続き、個々のコンセプトについて取り上げていきたい。 読みたいと思うものがありますか? 教えてください。 |
■リサーチ・ディレクター・レポート
詳細ベースライン設計の後、どう進むか
(What will happen after the DBD)
現時点で、2つの測定器グループは、2012年の完成をめざす詳細ベースライン設計(DBD)に向け、各測定器コンセプトの更新作業に努めている。これには、例えば、構成要素のR&D、測定器構成要素の統合、その上での加速器との統合、性能のシミュレーションなどが含まれる。過去の記事で述べたように、これらの活動を行うには資金の確保が不可欠であり、支援の要請をしてきた。もう一つ重要な点があり、それはプログラムを実施するグループにとってのインセンティブにかかわる。測定器グループは、しばしば、DBD完成後にそれがどう使われるかという質問も提起している。この問題は、別の質問の可能性、すなわち、ILCプロジェクトが現在のTDRフェーズ後にどのように進むのかを反映している。これらは、私の任務を越えているがILCの次世代プログラムの今後の進め方についての設問である。ともかく、こうした問は、研究者グループの士気に強い影響を与えるため、私はとても注目している。DBDがILCの物理学の研究を示す準備ができたとき、ILCを実現するための計画にとって役立って欲しいと測定器グループが望むのは全く自然なことだ。そして、この望みは、難しい環境の下で一生懸命に働く彼らに、やる気を与えるものだ。私には、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)の最近行われた会合がそのようなやる気をもたらしたという印象をもった。
プロジェクトを支え、推進する原動力となるのは、研究者グループの熱意である。研究者グループはまた、そうした活動と熱意が、将来報いられることを願っている。いったん、この望みが弱まり始めると、熱意は急速に冷めていくかもしれない。研究者グループというものは、実はもろくて、移り気でもある。ILCの測定器R&D向けの資金は、各々の参加グループの努力によって得られているものだ。ILCが建設され、素晴らしい物理学研究の機会が得られる、という「希望」が、これらの研究グループを一体にして、ILC測定器開発という共通の目標のために懸命に努力する力の源となっているのだ。
私たちは、明確なスケジュールに沿って、DBDに向け、いわゆるLOIプロセスの最中にある。現在の目標に達すると、私たちは次のステップへと進む。DBD完成の後も、R&Dプログラムや残っているシミュレーションの改善が行われる。ILCの建設提案の前には、多くのステップを必要とする。それでも、私たちが実機を建設するある見通しを持って、新たなステージへ更に進むことができるよう、最終的な目標に近づくための、いくつか具体的な方法が計画されなければならない。私は、ILCSCがTDRフェーズ後のための次のステップを考慮していることに、非常に勇気づけられた。パリで開催された高エネルギー物理学国際会議(ICHEP)の会期中に開かれたILCSC会議では、出来得る方法を議論し、前進するためのはっきりした動きが示された。結論に達するにはより多くの時間かかるかもしれないが、私は議論の詳細が公表されるとき、そのような動きのコンセプトが、かなり測定器研究者グループを励ますものであると期待している。私は、研究者グループもまた、最終的な目標に向けた道を確立するために考慮すべき問題に参加することを願う。これは、研究者グループが念入りに仕上げたDBDをより有意義にするよい機会である。
[英文記事]
リサーチ・ディレクター・レポート・バックナンバー■特集記事
紹介:次世代についてのILC NewsLineミニ連載
(Introducing: ILC NewsLine mini series on the future )
最初のカテゴリーは、最も差し迫っているだけでなく、最大でもある。それは、更に2つのサブカテゴリへと分類する必要がある。まずは、詳細にLHC実験からの発見を研究するプロジェクトと次世代のLHCそのものについてのアイデアだ。ILCとCLICは、明らかに、前者のカテゴリーに入るが、ここでは細かい説明は省く。LHCの実験結果によって、これらのうちのどちらが建設されるかが決まるが、それらの結果が未だ生み出されない時点で次の加速器の準備ができているのは、奇妙なようにみえるだろうが、リニアコライダーの初の衝突が2020年代に期待できるとすると、世界中で進行中の計画や設計や試験がすでにたくさんある理由がわかり始めるだろう。ミュオン・コライダーもまた、このカテゴリーに分類される。これは比較的サイズが小さいために、相対的にコストも安くすむ円形加速器だが、より高いエネルギーでエキサイティングな精密研究をすることが可能となる。加速ミュー中間子への挑戦に取り組むために、いくつかのR&Dプロジェクトが進行中である。
![]() 次世代のイオン:多くの可能な次世代プロジェクトのうちの一つである、ロシアのドゥブナにあるドゥブナ合同原子核研究所のNuclotron-based Ion Collider fAcility(NICA)の略図。 |
サブカテゴリ2 ― LHCそのものの将来 ― は、広範囲である。LHCアップグレードには2種類ある。一つは、より多くのルミノシティによって数多くのデータが取得できすことによる発見の可能性の増大であり、もう一つはより高いエネルギーである。ルミノシティ・アップグレードが実質的には目と鼻の先にあるのに対して、エネルギー・アップグレードは、遠い未来(ICHEPのRoger Bailey氏の講演によると2030年頃)のオプションである。LHCは、電子-陽子加速器、「スーパーHERA」、LHeC(「e」は電子)に変わるかもしれない。LHeCは、LHCの陽子を、リニアコライダー、またはエネルギー回収型リニアックにより運転されるリニアコライダー、あるいは別々の電子リングからくる電子を衝突させる。その狙いはQCD、電弱物理、標準理論を越えた物理学の測定だ。
そして、LHCのLHCb実験のように、世界中のB物理学実験を補って拡張する加速器がBファクトリーである。一つはイタリアで提案中であり、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、KEKB加速器を増強に向け改造し始めたところだ。必要な予算がそろったわけではないがが、ルミノシティを40倍にする予定であり、確かに、現行の次世代プロジェクトのうちの1つといえよう。イタリアのBファクトリーは放射光源でもあり、ILC、ミュオン・コライダー、最終的にはニュートリノファクトリーへと貢献する、加速器R&Dプロジェクトである米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)の『プロジェクトX』と多機能性の面で共有している。
カテゴリー3のイオン・コライダーは、相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)とLHCのALICE測定器によるクォーク・グルーオン・スープの問題を取り上げる。RHICに続く、RHIC-II、またはLHCを大型ハドロンイオンリングに変える計画があるが、しかし、ドイツで建設中のFAIR施設を補う、NICAと呼ばれる、ドゥブナの重イオン・コライダー計画がかなり進んでいる。これらのアイデア実現のために必要となる挑戦-たとえば、衝突させるのに十分長い間ミュー中間子を安定させる方法、または別のウェイクフィールドで電子ビームに電力を供給する方法などは、4つ目のカテゴリーに入るだろうFermilabはミュオン加速器プログラム(MAP)の計画に取り組むのに忙しく、依然として技術的に大きな挑戦であるけれども、ミュオン・コライダーは加速器物理学者にとって重要なテーマでもある。プラズマ・ウェーク場または誘電性加速のようなものに対する技術制御を進めようとするプロジェクト存在の全範囲、そして、更に詳細に紹介できるよう、これらのチャレンジに取り組んでいる人々を招き、連絡を取っていきたいと思う。
素粒子物理学は地球規模で行われており、そして、大部分の次世代加速器は単独で1つの国または1つの研究所で建設されるというよりは、むしろ世界的な共同研究グループによって建設されるのだ。技術がより挑戦的なものになればなるほど、これはよりあてはまることであり、アイデアから、設計研究、運転加速器へと進化するには長い時間がかかる。従って、私たちがちょうど今LHCのスイッチを入れて、発見を待っているだけの間、私たちがすでに次世代を計画することは外部の世界からは奇妙なようかもしれないが、結果がそこにある最適品を作ることができる引き出しでいろいろな選択をしていかなければならないのだ。詳細な報告は今後のILC NewsLineをご覧下さい!
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
ICHEPは、高エネルギー物理学の次世代に取り組む
(ICHEP addresses the future of high-energy physics)
先週のディレクターズ・コーナーで、先月パリで開催された第35回ICHEP2010の目玉をいくつか紹介した。この会議では、中心的な話題であったLHCに加え、次世代加速器に重点を置いた、次世代の素粒子物理学に関する、いくつかの並列セッションと全体講演が行われた。この方向性は、会議の最終セッションでの講演、Tor Raubenheimer氏の「新しい加速器技術」とJean-Pierre Delahaye氏の「新加速器プロジェクト」、「高エネルギー物理学の次世代」に関する議論、そして、Michel Spiro氏による、再び次世代方針による包括的な閉会講演でも強調された。
Tor Raubenheimer氏(SLAC)は、問題の提示から講演を始めた。Tor氏は「加速器は高エネルギー物理フロンティアを進める主要なツールでしたが、加速器は規模とコストが継続的に増加し、予算的な支援は限界に近づいているようにみえます」と述べたが、彼は、ここで研究を中止すべきという意味ではなく、私たち研究者が「コスト効率の良い解決を目的とする新技術」を開発するモチベーションとなるものとして、この問題を提示したのだ。彼は「加速器研究は、材料からRF、非線形動力学にいたるまで非常に幅広いもの。ですから、技術の進歩は基礎研究からも、応用を目的とした直接的R&Dからももたらされます」と強調した。それから、Tor氏は、加速器研究の進歩と主要な課題について言及した。多くの応用が期待されるビーム・エネルギー、ビーム電力、ビーム輝度について、また、ILCに代表される直線加速器から、プラズマ加速器のような次世代開発加速器にいたる話題をカバーした。プラズマ加速器についてTor氏は、50GV/メートルの加速勾配がすでに達成されたと述べている。
Tor Raubenheimer氏の講演から。プラズマ加速コンセプト(ドライブされるビームまたはプラズマ) |
潜在的高エネルギー物理学プロジェクト、そのスケジュール、ありえそうな決定について書いたPierre Delahaye氏の概要。 |
Tor氏に続き、Jean-Pierre Delahaye氏が講演を行った。Delahaye氏は多くの次世代の高エネルギー物理学プロジェクト候補について検討を行った。全部を建設することが不可能なのは明らかだが、プロジェクト候補が並んだ長いリストは私たちの分野の活力を示している。厳しく、賢い選択が必要だ!Delahaye氏は、主要な潜在的次世代プロジェクトの全てを1つの表にまとめるという大胆な試みをした。アイデアからプロジェクトを実行するまでのステップが多くの要因により異なり、プロジェクトごとにも異なるため、これは、非常に難しい。彼は直接各プロジェクトの支持者から情報を得たが、もちろん、支持者の楽観主義の程度もまたさまざまである。それでも、LHCや他の実験から結果が出て来るにつれて、ものごとがどのように展開するか、そして、どの時点で決定が下されるのかを見るのは興味深いことである。
会議はMichel Spiro氏の講演で幕を閉じた。Spiro氏はおよそ40分で示した107枚のスライドの中で素粒子物理学の全てを見直した。Spiro氏の包括的な講演は、LHCのエネルギーフロンティアから宇宙粒子物理学、宇宙論にいたる全分野をおさらいするものだった。
ILCは、ICHEP会議でよく取りあげられた話題であった。並列セッションで、私は私たちの進歩と計画についての講演を行い、そこで、基準設計報告書からのR&D業績のいくつかを示した。そして、Brian Foster氏はILCのための私たちのガバナンス研究についての中間報告をした。加速勾配目標達成に向けた素晴らしい進歩については、Tor Raubenheimer氏とJean-Pier Delahaye氏が報告した。
最後に、Michel Spiro氏が「次の(巨大)加速器の展望」として、ILCかもしれないし、CLICもあり得るとし、新たに修正されたアイデアであるLHCのエネルギー倍増も可能性も示唆した。彼はまた、最近の欧州合同原子核研究機関(CERN)の研究から、最高1033 cm2sec-1のルミノシティを提供するLHCでILC型のエネルギー回収型リニアックを衝突させることで、高エネルギー電子-陽子コライダーをつくる可能性があるかもしれないと引用した、たとえどんな新たな巨大プロジェクトが次世代にあったとしても、私たちは決定に対する戦略とタイミングを作り、科学的な結果と責務から私たちの選択の決定を行う。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
First Baseline Assessment Workshop
KEK, Tsukuba,
Japan
7-10 September 2010
XXV Linear Accelerator
Conference (LINAC10)
Tsukuba, Japan
12-17 September 2010
Topical
Workshop on Electronics for Particle Physics (TWEPP-10)
Aachen,
Germany
20-24 September 2010
Symposium on the
Superconducting Science and Technology of Ingot Niobium
Jefferson Lab,
Newport News, USA
22-24 September 2010
1st International Workshop on Accelerator-Driven Sub-Critical
Systems & Thorium Utilization
Virginia Tech, Blacksburg, Virginia,
USA
27-29 September 2010
19th International Spin Physics Symposium (SPIN
2010)
Jülich, Germany
27 September - 2 October 2010
EUDET Annual Meeting 2010
DESY, Hamburg, Germany
29
September - 1 October 2010
今後のスクール
Fifth CERN-Fermilab
Hadron Collider Physics Summer School
Fermilab, Batavia, IL, USA
16-27 August 2010
Fifth
International Accelerator School for Linear Colliders
Villars-sur-Ollon,
Switzerland
25 October - 5 November 2010
■ニュース記事
| From New Scientist 17 August 2010 レーザーは、仮の粒子を本物にすることができる |
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| From Discover magazine 16 August 2010 天文学者、優先順位を発表:ダークエネルギー、太陽系外惑星、宇宙の起源 |
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| From New Statesman 16 August 2010 科学における20の新アイデア |
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| From Physics World 13 August 2010 米天文学者、10年計画を公開 |
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| From Electron cafe August 2010 原子をより深く見ることのできる次世代の加速器-物理学者Marc C.Ross氏インタビュー |
■アナウンス
| ◇arXiv preprints 1008.2407 ILC phenomenology in a TeV scale radiative seesaw model for neutrino mass, dark matter and baryon asymmetry 1008.2318 Particle Showers in a Highly Granular Hadron Calorimeter 1008.2257 Extra dimensions and Seesaw Neutrinos at the International Linear Collider |
■今週のイメージ
グリルパーティに集まる、DESYの博士学生
ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)で博士学生が一斉に集まった。DESYの多くの分野-理論、光子科学、素粒子物理学、加速器開発-で博士号に備えて勉強している80人以上の若者が、会話を楽しみ、ソーセージをグリルで焼いた。また、DESYの研究展望において博士学生は中心的な役割をしていると強調した、DESY所長Helmut Dosch氏と意見交換を行った。イベントはDESYの『DOIT』学生イニシアティブが主催し、主催者は結果に非常に満足している:博士学生80名、所長1名、4つの講演、ソーセージ176本、ステーキ20枚、ビール4ケース、コーラ1ケース。そして、もちろん無数のチャットとやりとりがあった。
































