ILC NewsLine 2010年9月23日号[英文記事]
■特集記事
CERNより:CMSが観測する新しい可能性と興味深い結果
(From CERN: CMS observes a potentially new and interesting effect)
CMSで観測された7TeV陽子-陽子衝突。100個以上の荷電粒子が生成している。
6ヵ月近い運転を終えた大型ハドロンコライダー(LHC)実験で新しい可能性を示唆する興味深い結果が見始めている。今日、CMS共同研究グループは、7TeVの陽子-陽子衝突で生成する粒子間の相関関係の測定について発表した。
LHCの陽子-陽子衝突では、ときとして100個以上の粒子が生成することがある。CMS共同研究グループは、そのような事象で衝突点から飛び出す粒子間の向きの相関を分析した。その結果、従来の陽子-陽子衝突では見られなかった相関があることが見いだされたのである。
見つかった効果は微妙なものであるため、確認のため、多くのクロスチェックや細かな調査が行なわれた。これは、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の相対論的重イオン衝突型加速器施設(RHIC)での原子核衝突実験で見られた効果に似ている。RHICでの結果には、原子核の衝突時に起きる高温・高密度物質の生成と関係するのではないか、との解釈が存在する。だが、CMS共同研究グループは、他の現象説明もありうると考え、欧州合同原子核研究機関(CERN)の研究者グループへのプレゼンでは、広汎な可能性議論を促進することを念頭に、実験的根拠の説明に多くの時間が費やされた。「いまは、より多くのデータで、何が起こっているのかについて十分な解析をおこない、LHCが拓く豊かで新しい物理への第一歩を踏み出したいと思います」と、CMSスポークスパーソンである、Guido Tonelli氏は語る。
LHCでの陽子ビーム運転は10月末まで行われ、それまでの間、CMSは大量の追加データを蓄積する。2010年の残りの運転期間では、LHCは鉛の原子核を衝突させる。
大きな関心を集めるもう一つのCERN実験は、ALICEである。この測定器は、原子核の衝突実験に特化して建設されている。RHIC実験と同様、ALICEは、ビッグ・バン直後の数分の一秒の間に存在した高温・高密度条件での物質の状況の研究を目指している。目標は、そのような高温・高密度状態からいかにして現在のような宇宙を構成する物質ができたのかを調べることである。このたびのCMSでの陽子-陽子衝突の研究は、LHCの新運転フェーズの先駆けとも言える。
既知の物理事象の確認を今夏の会議までに済ませ、LHC実験は、現在、新しい物理事象を探り始めようとしている。ATLASは最近、クオークの励起モードの質量限界を更新し、LHCbはb-クオーク・反b-クォーク対の既知の束縛状態の観測を確認し、測定器の性能を実証した。
参照:
ATLASとLHCbからの最新結果
[英文記事]
■世界の各地よりFermilabより:Fermilabで加速器の先端試験施設を建設
(From Fermilab: Fermilab constructs pioneering accelerator test facility)
イリノイ州、バタヴィア―米エネルギー省フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)は、今日、粒子加速器の次世代にきわめて重要な技術を進めるための先端施設が建設第二フェーズに入ったことを発表した。3つの建物を使い、全長460フィート(140m)の試験加速器を擁する新施設は、米国では最初のものである。
Fermilabは、米国再生・再投資法(ARRA)から拠出された予算5270万ドルを使い、SRF先端加速器試験装置の建設をはじめとする超伝導高周波技術の開発プログラムを進めている。建設の第一フェーズは、280万ドルを2010年3月に始まり、既存建造物の拡張が行われた。第二フェーズでは、420万ドルを費やし、2つのビルを新設する。ARRA資金は、さらに、建物に必要な水・電気・空調ほかの設備整備に使われる。Fermilabは、こうした施設を使って、超伝導高周波(RF)の機材を試験し、米国企業による機材生産上の担当能力の確認を行っていく。「次世代の加速器は、超伝導RF技術を必要とします」と、Fermilabの加速器部門のJay Theilacker氏は語る。「この新しいSRF試験施設の制作は、そのための重要な一歩です」
加速空洞は、クライオモジュールと呼ばれる真空容器におさめられ、華氏-456度(摂氏-271度)まで冷却されて電気抵抗がゼロになった状態で運転される -- 「超伝導」という用語が使われる理由である。Fermilabのこの施設でテストするクライオモジュールは、二つの将来計画に向けて開発が行われているものである。一つは、Fermilabで建設予定のプロジェクトX、もう一つは国際協力による建設が想定される次期高エネルギーコライダー ILCである。研究所の現在の基幹加速器(テバトロン)は、2014年以後は引退予定である。テバトロンは、超伝導磁石を使っているが、SRF技術を使用していない。
ミシガン州に拠点を置くBarton Malow社がSRF試験施設の土木建設を担当。施設は三部構成になっている。まず、SRF試験加速器の建物。次に、SRF加速器に欠かせないクライオモジュールの試験エリア。最後に、試験加速器や試験エリアのクライオモジュールを冷却する強力な新冷凍機設備を収容する建物である。
さらに、試験加速器から得られる粒子ビームは、測定器や加速器技術の開発研究に利用される。これらの中から、医療や工業用への応用が行われるものも出てくることが期待される。
3月から、Barton Malow社とその下請け業者は、この仕事のためシカゴ地域からおよそ200人を雇用した。
「毎週20人ほどがやってきました。みな地元の人たちです」と、Barton Malow社のプロジェクトマネジャーであるKeith Wiederhold氏は語る。残る2つの新建屋建設にもほぼ同数の人手が必要とされる考えられる。同社は、2011年秋までに、プロジェクトを完了予定である。
Fermilabは、高エネルギー物理学と関連した分野の研究を統括する米エネルギー省科学部の監督下にある研究所で、フェルミ研究連合有限責任会社が、DOEとの契約のもとに運営している。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
TDRを越えて
(Beyond the Technical Design Report)
ILC国際共同設計チーム(GDE)の活動の主な焦点は、ILC成功のための重要なR&Dプログラムを行うこと、そして、政府にたいして予算働きかけを行う際のより所となる技術設計報告書(TDR)を作ること、そのためにILC基準設計の足場をしっかり固めることである。TDRに向けたベースライン構成の具体的内容は、今後数ヶ月をかけて決定され、引き続き2012年のうちに技術設計を完成し、文書化することになっている。その時できあがるのは、TDRとプロジェクト実施計画(PIP)である。で、どうなるのか?ILCに向けた開発努力の多くは、高加速勾配の超伝導空洞のR&Dプログラムに向けられている。プログラムはグローバルに実行されており、その中に含まれるのは、加速空洞の高信頼度での制作、クライオモジュールへの組み込み、連結した複数クライオモジュールのシステム試験、ILC仕様のビームでの動作デモ、などの仕事である。この壮大なプログラムの多く、とくに工業化や大規模テストは、2012年以後も継続する。
国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)、監督官庁、GDEでは2012年以降どうすべきかについての議論が始まっている。そこで考慮する必要があるのは、物理コミュニティがILC提案を各国政府にたいして行うかどうかの判断時期はいつか、である。TDRとPIPの完成時期を2012年とした当初の理由は、その時間スケールでLHCからの結果によってILCの計画意義が確かになりうるとして、そのときまでに提案書が出来ている必要があると、考えたからである。LHCからの初期のデータで2012年までに何らかの発見があった場合に備え、GDEの準備作業は依然として上の時間スケールで進めるが、最近の立ち上げスケジュールやCERN理事会が承認した中期計画によれば、LHC運転の進捗はよりゆっくりとしたものになる見込みである。結果、LHC以降の次世代加速器にかんする決定は、2012年の数年後となる可能性が高くなってきた。そこで、2012年にTDRとPIPが完成し、レビューされたあと、ILCが踏むべき次のステップは何なのか、の課題が出てくる。7月にパリで開催された高エネルギー物理学国際会議(ICHEP)の会期中、Jon Bagger氏(米国ジョン・ホプキンス大学)が委員長をつとめる、ILCSC(GDEを監督する委員会である)の議論は、この課題にかなりの時間を費やした。確固とした決論は出なかったけれども、非常に建設的な議論が行われた。そこで、私は少しその会議で出された重要な指摘を今日紹介したいと思う。私たちはILC R&Dの進捗や計画に関する詳細な報告書とILCガバナンスに関しての中間報告書を発表した。これはICHEP席上でも紹介された。まず、私が上に書いたような分析にたいして、ILCSCからの同意が得られたことに触れたい。2012年内のTDRとPIPの完成に向けたGDEの作業進捗は順調であり、2013年中ごろまでには、ILCSCによるレビューと承認は可能、ということである。現在進行中である縮小R&Dを受けて、そのあとの期間、プロジェクト承認と予算要請にむけて行う活動計画にも同意が得られた。
ILCSC席上、GDEがTDRを完成し、ILCSCがこれをレビュー・承認した時点で、当初目標の成功達成宣言を行ってはどうか、との指摘がされた。そして、ILC計画の次の推進段階としてのR&Dを続行するためには新組織を設立し、その際、世界の主要研究所のパートナーシップを強調してはどうかとの興味深い指摘がなされた。これは、将来のグローバル研究施設計画一般における、最終段階直前の組織形態として構想しうるものである。
そうしたモデルを採った場合、GDEはどうなるのか?の質問が出てこよう。名称、組織、階層構造、目標などは恐らく変わるが、GDEの技術的な、そして世界組織としての成功は広く認められるところとなろう。どのような新組織が形成されるにせよ、その主要な出自はGDEにあり、引き続くR&Dと正式計画発足まえの仕事を続けるための工夫が凝らされるはずである。願わくば、これがILC起動前の最終ステップとなり、LHCを補完する新しい世界的な計画へとつながることを期待したい。
[英文記事]
ディレクターズ・コーナー・バックナンバー■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
Topical
Workshop on Electronics for Particle Physics (TWEPP-10)
Aachen,
Germany
20-24 September 2010
Symposium on the
Superconducting Science and Technology of Ingot Niobium
Jefferson Lab,
Newport News, USA
22-24 September 2010
1st International Workshop on Accelerator-Driven Sub-Critical
Systems & Thorium Utilization
Virginia Tech, Blacksburg, Virginia,
USA
27-29 September 2010
19th International Spin Physics Symposium (SPIN
2010)
Juelich, Germany
27 September - 2 October 2010
EUDET Annual Meeting 2010
DESY, Hamburg, Germany
29
September - 1 October 2010
High precision
measurements of luminosity at future linear colliders and polarization of lepton
beams
Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel
3-5 October 2010
eCloud 2010
Cornell University, NY, USA
8-12 October
2010
International
Workshop on Linear Colliders 2010 (IWLC2010) ECFA-CLIC-ILC joint
meeting
CERN and CIGC, Switzerland
18-22 October 2010
今後のスクール
Fifth
International Accelerator School for Linear Colliders
Villars-sur-Ollon,
Switzerland
25 October - 5 November 2010
■ニュース記事
| From the Telegraph 22 September 2010 LHCのシグナルは『ビッグ・バン状況の兆候可能性』 |
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| From Daily Herald 22 September 2010 Fermilabの新加速器研究、次フェーズへ バタヴィアに拠点を置く国立研究所で提案中のプロジェクトとILCなど、極低温加速器建設のためのモジュールの中の装置をテスト。 |
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| From Science 21 September 2010 米国物理学者『神の粒子』レースになりふり構わず 米国唯一の素粒子物理学研究所の所長は、物理学研究で最も探索されている粒子(ヒッグス粒子)を追い続けるため予算のおよそ3分の1を工面する、と語った。 [英文記事] |
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| From AFP 21 September 2010 加速器研究者は、新しい発見に気づく: ジュネーブ、CERN -火曜日、世界最大の加速器の研究者は、宇宙で最も深い謎を解く探求で、これまでに見られなかった現象を観測したようだ、と語った。 |
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| From CERN Press Release 17 September 2010 CERN理事会は、CERNの中期計画を承認 |
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| From Fermilab Today 17 September 2010 科学的な機会:テバトロンとLHC こうした国際競争の側面は、本当に存在することで、科学研究にスパイスを加えるものだが、そうした報道によって、調味料入れの胡椒を、料理のうえに全部ぶちまけられたように感ずることもある。 ■アナウンス ◇arXiv preprints1009.4184 Beauty and charm to study new physics at future linear colliders 1009.3929 Charged Higgs-boson production at Linear Colliders - SUSY-QCD corrections in the framework of a numerical calculation of loop integrals 1009.3571 Neutral Higgs boson pair production at the LC in the Noncommutative Standard Model 1009.3554 e+ e- to μ+ μ- scattering in the Noncommutative standard model |































