ILC NewsLine 2010年10月21日号 [英文記事]
■リサーチ・ディレクター・レポート
包括的プロジェクト計画ガイダンスに関する白書
(White paper on Comprehensive Project Design Guidance)
国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)は、さきごろ、包括的プロジェクト計画ガイダンス(CPDG)に関する白書(案)を公表した。これは、2012年までの技術設計フェーズの後、ILCをどのように推進するかについての考察を記述したもので、今夏パリで開催されたILCSC会議に、ILCSCのサイト選定ワーキンググループが提案し、議論されたものである。現在、ILCSCは、CPDGについて研究者グループからのコメントを募集している。
去る8月の報告で書いたように、TDR以降の活動については、ILCSCの主導性への期待が高まっていたところであり、私はこの動きを大いに歓迎する。CPDGは、ILCの実現に向け、2012年以後のILC推進に関する研究者間での真剣な議論を活性化するものである。とくに、諸般の困難が増しつつある昨今の環境の中での意見交換は、時宜にかなったものである。困難の第一は、詳細ベースライン設計の完成に向けた測定器の個別R&D、システム設計、シミュレーションでは、十分とは言えない予算・人員配分のもとでの作業が続いていることを指す。第二は、ILC以外の研究テーマに勢力が分散する問題である。この二つの問題は、分かちがたく結びついている。前者の解決のためには、後者を避けることができないのだ。そうしたことから、詳細ベースライン設計(DBD)の後どうなるのかという疑問も出る。これはコミュニティーが持つ不透明感を示し、ILCに向けた盛り上がりに陰りを生ずる恐れもある。
R&Dは、2012年以降も、継続する必要がある。同時に、プロジェクトの実現にむけ、新たな一歩を踏む出す必要もある。この両方の面を推進するための、現実的かつ骨太の活動構想が切望されている。ILCSC文書は、そうした構想について、方向性を明らかにしようとするものである。
現時点の白書(案)は、一般ガイドラインと主要ポイントを述べているが、具体的な詳細については、多くを今後の議論・検討に委ねている。したがって、これ自体は、完成形のものではない。が、今後の活動を強化するには何をすべきか、を考える上でのきっかけは、そこここに見いだすことができる。歩みを真に前に進めるには、推進組織の具体的な構造や運営手法を詰め、白書(案)でいま空白に残されている部分を埋めていくことが必要である。基本原則や路線上での合意に到達したうえで、具体的な詳細についての議論を進めることになろう。したがって、研究者グループの意見をまず集約することが現段階での焦点となる。提案のなかで提示されている直近のステップは、現在の推進体勢の拡張である。そのために何処にどのような改善を図るべきか、研究者グループは十分な経験を積んでいる、と私は考える。
みなさんにCPDGを読んで、ご意見を寄せることを強くお勧めしたい。http://cpdg.kek.jp(ユーザー名とパスワード『cpdg』)にアクセスすることで、コメントと意見は直接ILCSCに送られる。寄せられたコメントや意見は、同じウェブサイトで閲覧することもできる。測定器マネジメントとして、測定器趣意書プロセスを進めてきた経験を踏まえ、私たちもCPDGに向けた意見集約のプロセスに参加したいと考えている。私は、測定器グループや物理・実験委員会の意見をとりまとめ、コメントをまとめるつもりである。その際、現在の測定器・物理の活動の障害となっている問題をどのように軽減するか、そのための新方策についての提案も行っていこうと考えている。CPDGに向けた議論を通して、ILCに対する私たちの熱意を新たにし、表明し、提案を改善することを、期待している。
[英文記事]
■特集記事
ジュネーブから
(Live from Geneva)
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ジュネーブの写真(写真アルバムはこちらから) |
ス イス・ジュネーブで開催された今秋のリニア・コライダーの国際ワークショップでは、初めての試みとして、国際リニア・コライダーILCとコンパクト・リニ ア・コライダーCLICの双方の計画に携わる研究者を集めて開催された。会議運営は将来加速器欧州委員会(ECFA)が行い、会場には欧州合同原子核研究機関(CERN)と、ジュネーブ市内の国際会議センターが充てられた。本会議では、二つの加速器の設計・開発状況と、そこで行いうる物理を扱う。並行セッションは、加速器技術や測定器技術のそれぞれに関する意見交換が行われる。アルバムには、初日からいくつかの写真を掲載する。
■ディレクターズ・コーナー
宇宙物理学と素粒子物理学の収束
(The convergence of astrophysics and particle physics)
過去10年での、私たちの分野の重要な進展に、素粒子物理学と宇宙物理学の融合があげられる。近年、素粒子物理学の一分野として、粒子宇宙物理学と呼ばれるものが大きく発展を遂げ、現在、素粒子物理学の重要課題のいくつかは宇宙物理学にとっても重要課題である、という状況を見せている。天文学と宇宙物理学に関する新10年展望Astro2010は、こうした中、米国の今後10年間の天文学と宇宙物理学領域の優先課題を整理している。これは、素粒子物理学の立場から も多いに興味を喚起されるものであって、そのことは、米国科学財団(NSF)物理学や米エネルギー省(DOE)高エネルギー物理学プログラムに対するこ の分野の研究計画への予算承認数が増加していることからも分かる。
粒子宇宙物理学の重要性が増してきていることについては、他にも徴候がある。高エネルギー物理の大きな研究機関の多くで、粒子宇宙物理に特化したプログラムが立案されつつあり、新分野での長期計画策定が始まっている。たとえば、ヨーロッパ宇宙粒子物理学協調(ApPEC)コンソーシアムとAStroParticle European Research Area(ASPERA)ネットワークは、欧州における宇宙粒子物理学のためのロードマップを共同で発表した。昨年は、Particle Astrophysics Scientific Assessment Group(PASAG)から、HEPAP報告書が公表された。これらの報告書から読み取れるのは、野心的な将来計画提案を手にした新分野が開拓されつつあり、これが素粒子物理学に大きな影響を及ぼしうる、ということである。
粒子宇宙物理学は、天文学者、宇宙物理学者のコミュニティからも認知を受けた分野である。米国科学アカデミーの学術研究会議が行った、天文学のための10年展望は、中でも最も影響力をもつ長期計画策定の試みである。この10年展望は、10年毎に、研究機関と研究者グ ループ向けに、天文学と宇宙物理学のための優先順位とロードマップを設定するものである。Astro2010はその最新版で、粒子宇宙物理学は、その勧告のなかで大きな部分を占めている。10年展望の策定は、天文学に関係する五つの「先端科学パネル」の作業に始まり、白書の配布・回覧や研究者グループとタ ウンミーティングなど一年の時間を費やして行われた。素粒子物理学に最も関係するパネルは「宇宙論・基礎物理パネル」である。研究課題の科学的優先順位付けはこれらのパネルが行い、報告はさらに、四つのプログラム優先順位付け委員会に送られた。私はそのうちの「粒子宇宙物理学と重力に関するプログラム委員会」に参加した。最後に、10年展望の親委員会がすべての情報を総合し、次の10年間における地上ベース、宇宙ベースの双方でのプログラム優先順位を検討した。
天文学分野で、ダークマターに関する大きな提案はこのたび無かったため、ダークマターの話題はこのたびの展望からは除外された。だが、ダークエネルギーの問題は、大きく取り上げられた。
Astro2010調査には、宇宙空間ベースと地上ベース双方での重点活動投資リストが掲載されている。最優先とされたプロジェクトは、いずれも複数の目標をもっているが、宇宙(広域赤外線探査望遠鏡、WFIRST)と、地上(大型シノプ ティック・サーベイ望遠鏡、LSST)のいずれにおいても、ダークエネルギーに関する新データを得ることがその重要な動機の一つであり、また、いずれも DOE高エネルギー物理学プログラムからの大きな予算拠出提案を含むものである。LSSTはさらに、天文学分野でのNSF予算拠出も視野に入れている。 ダークエネルギーは、いまや、最重要な基礎物理問題のひとつとして、素粒子物理学の核心探求のひとつとみなされている。素粒子物理学、宇宙物理学、宇宙論の融合は、非常に健全なことである。素粒子物理研究の優先順位が最も重要な基本的な問題に基づいて決められるのも、健全なことである。そのような研究が大きな国立研究所での粒子加速器を使わずに行われる、というのは、私たちの学問分野が複数の研究手法を必要としていることの現れである。私たちはそうした現 実への順応を始めている、ということであろう。粒子加速器が、将来も素粒子物理学で中心的な役割を果たしていくのは、疑いがないところだが、粒子宇宙物理学的アプローチも採り入れることによって、この学問分野は、さらに豊かなものになるだろう。宇宙物理学と素粒子物理学とで興味を共有する課題の研究は、私 たちの分野の最も基本的な問題の多くに答えてくれるはずである。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
International Workshop on Linear Colliders 2010 (IWLC2010) ECFA-CLIC-ILC joint meeting
CERN and CIGC, Switzerland
18-22 October 2010
2010 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference
Knoxville, Tennessee, USA
30 October - 6 November 2010
SiD Workshop
University of Oregon, Eugene, Oregon, USA
15-17 November 2010
X-Band Structures, Beam Dynamics and Sources Workshop (XB-10)
Cockcroft Institute, Daresbury, UK
30 November - 3 December 2010
今後のスクール
Fifth International Accelerator School for Linear Colliders
Villars-sur-Ollon, Switzerland
25 October - 5 November 2010
US Particle Accelerator School (USPAS)
Old Dominion University, Hampton, Virginia, USA
17-28 January 2011
■ニュース記事
From Phys Org
19 October 2010
イオンビーム・ガン療法の見込み
ある種の腫瘍にたいして、最も顕著な効果をもたらすのはX線やガンマ線ではなく、陽子ビームやより重いイオン(例えばカーボンとネオン)ビームを使う治療法である。
From Telegraph
18 October 2010
宇宙線の源を見つけるために、南極氷の下1マイルの地下に据えられた『望遠鏡』
南極氷の中に深く埋められた「望遠鏡」で、最初の信号を検出。宇宙から地球に飛来する粒子の源の解明を期待。
[英文記事]
From Wired
15 October 2010
首位に立ち始めるLHC
LHCは、素粒子物理学の標準模型を越えようとする初期運転を始めた。わずか4ヵ月間の収録データで、“怪物”コライダーは、ライバルである、テバトロンを追い越そうとしている。
[英文記事]
■アナウンス
◇arXiv preprints
1010.4198
Higgs boson decays and production in the left-right twin Higgs model
1010.4139
The neutral heavy scalar productions associated with ZL in the littlest Higgs model at ILC and CLIC
1010.1931
Probing Anomalous Top-Gluon Couplings at Colliders
■今週のイメージ
CLIC設計検討
(CLIC design study)
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CLICの同僚らは、来年発表される概念設計報告書の執筆作業の合い間、ロゴやウェブサイトの改訂も行っている。www.clic- study.orgで、プロジェクト、加速器設計、研究構造、ロゴ、そして、もちろん彼らのスローガン:「将来のためのCLICを!」などの情報が閲覧できます。

































