ILC NewsLine 2010年12月16日号 [英文記事]
■リサーチ・ディレクター・レポート
前進するSiD
(SiD moving forward)
今月のリサーチ・ディレクター・レポートは、シリコン測定器(SiD)役員会のメンバーであり、最近開催されたSiDワークショップで共同世話人をつとめた、Jim Brau氏(オレゴン州立大学)とAndy White氏(テキサス大学アーリントン校)の担当である。
11月15-17日に、SiD共同研究グループは、ユージンにあるオレゴン州立大学で開催されたワークショップに集まり、進捗を検討し、計画を議論し、2012年末が期限の詳細ベースライン設計報告書(DBD)に向けた活動を整理した。ワークショップでは、2011年8月までに完成予定の、コンパクトリニアコライダー研究(CLIC)の概念設計報告書(CDR)への協力についても検討・議論を行った。SiDの最近の活動の多くは、CLICのCDRにふり向けてられてきたが、これはILCの SiDにも有益なものとしてDBDへの取り組みに活かされることになる。
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2012年末に発表予定の詳細ベースライン設計の作業のために、先月、ユージンにある、オレゴン州立大学で開催されたシリコン測定器共同研究グループ・ワークショップに集まった参加者ら。参加者達は、2011年8月に完成予定のCLIC概念設計報告書に対する協力についても議論を行った。画像:Jim Brau氏 |
SiDワークショップの主要目的は、DBDにむけた計画の検討、進捗を評価し、今後の工程を明確にすることである。DBDの各項目の発表者に求められたのは、設計上今後行うべきR&D、そのために必要な人員・予算、解決すべき課題、スケジュール、ベースラインとオプションの再とりまとめ、エンジニアリング概念やシミュレーションについて報告することであった。
ワークショップの始めにILCリサーチディレクターの山田作衛氏とILCプロジェクトマネージャー、Marc Ross氏がプレゼンを行い、ILCの実験プログラム準備におけるSiDの仕事の意義、また2012年末に公開予定の技術設計報告書(TDR)に向けた国際共同設計チーム(GDE)の活動におけるSiD DBDの位置づけについて説明した。
山田氏は、DBDの目的やそこに盛り込まれるべき項目を再確認しつつも、リソースの制約により、DBDでの検討掘り下げには限定される部分が出てくるであろうことを認めた。彼が強調したのは、現在進行中の測定器R&D、シミュレーション活動、物理研究の重要性である。DBDは、測定器実験の実現に向けて行われる作業が進みつつあることを実体的に示すものとして、2012年以降の活動の計画立案上に役立てられる。山田氏はまた、今後二年のあいだ国際測定器諮問委員会(IDAG)が果たす新たな役割について述べた。山田氏の実験管理組織(Research Directorate)は、来春まで中間報告を国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)に提出することになっており、SiD、ILDと共通作業グループに協力要請をおこなっていることは、ここ数ヵ月にわたって物理実験委員会の会合で議論されてきた通りである。おわりに、山田氏は、ILCSCの主導による包括的プロジェクト計画ガイダンスの試みに触れ、賛意を表明するとともに、みながこれに検討を加えて、ILCSCにコメントを送ることを促した。
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Jim Brau氏のホストで、ワークショップ・ディナーはオレゴン州立大学物理学科がある、ウィラメット・ホールのアトリウムで開かれた。ホール床に刻まれた電子・核子散乱のファインマン図の一部が見える。写真下の円形パターン(の一部)はファインマン図中の核子である。画像:Jim Brau氏 |
Marc Ross氏は、GDEの最近の研究に関する会合の最新情報を紹介した。彼は、9月に、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で開催された第1回ベースライン・アセスメント・ワークショップ(BAW1)の結果を踏まえ、加速器設計のベースラインを再設定することや、1月18-21日に米SLAC国立加速器研究所(SLAC)で開催されるBAW2にむけた準備について述べた。BAW1からの結論は、研究設計報告書に記載された加速勾配は平均値として維持、主線形加速器の構成については、もともとの二本のトンネル設計から一本のトンネルに変更することを提言した。GDEディレクター、Barry Barish氏は、これらの提言を受け入れた。BAW1には、測定器研究者グループから多くの参加があった。 BAW2では、加速器の運転電力の縮小や加速器施設の中心部分施設への陽電子源の再配置といったテーマを扱うが、これらにより、物理研究上のポテンシャルが影響を被ることが分かっており、測定器研究グループからの多数の参加が求められている。
GDEはまた、TDP中間報告書の準備を行っている。この中間報告書は、2011年始めに完成予定である。これらを経て、3月開催の、米国線形加速器物理学グループ・ワークショップ(ALCPG11)までには、新たなベースラインが確立され、2012年以降のR&D計画の立案が進み、1テラ電子ボルトのエネルギー・アップグレードへの設計も始まることが期待される。
SB2009の物理測定器ワーキンググループの世話人である、Jim Brau氏は、新しいベースライン設計についての物理・測定器研究者グループに関するワーキンググループの見解とりまとめについて説明した。SB2009設計に対する研究者グループの当初懸念については、これまでの一年間の検討・議論を通して対策検討が行われると同時に大幅に理解が進んだことをBrau氏は強調した。
R&Dの観点で特筆されるべきは測定器開発に関する最近の進捗である。1立方メートルの高抵抗電極板ハドロン・カロリメータの米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)での試験からの最初のデータに関するLei Xia氏の発表はその一例である。
ワークショップの締めくくりに、Andy White氏は、DBDの現状やDBDにむけた作業計画についてまとめた。DBD概略の更新版は、ユージンで開かれるALCPGワークショップにて、IDAGに提出される予定である。DBDに含まれる内容、また、予算・人員の制約で含まれない項目について、そこで明らかにされるはずである。
ワークショップで、DBD関連の議題と並ぶもう一つの議題は、CLIC関連でSiDが行っている活動をより幅広く周知することであった。このため、欧州合同原子核研究機関(CERN)のLucie Linssen氏とPeter Speckmayer氏による講演が行われ、他のプレゼンでもILCとCLICの話題をまとめたものが行われた。
ワークショップ・ディナーは、オレゴン州立大学の物理学科がある、ウィラメット・ホールのアトリウムで行われた。ワークショップホストを務めたJim Brau氏と、有意義な会議運営のための労をとった大学院生、スタッフにたいしては、ワークショップの終わりに、あたたかい拍手が贈られた。
[英文記事]
■世界の各地より
トンネルの展望
ILC土木施設とサイト選定グループがハンブルグのDESYにある欧州XFELとFLASHの訪問。Wilhelm Bialowons氏による報告記
(Getting a vision of tunnels
Wilhelm Bialowons reports from the visit of the ILC civil facilities and siting group to the European XFEL and FLASH at DESY in Hamburg.)
11月上旬、GDE土木建築設計とサイト検討グループのメンバー4人と、日本の産業界から2人が、2日間にわたり、ハンブルグにある、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)を訪問した。訪問の目的は、欧州X線自由電子レーザー(XFEL)土木建設の現状視察と、関連してDESYのFLASH加速器の情報入手である。
初日は、XFEL入射器棟(現在は、巨大な穴が掘られてあるだけだが)、ほぼ実地と同等の条件下でXFELモジュールの輸送と据え付けを練習するためのモックアップ・トンネル、ILC測定器のための研究を行っているHERA西ホール、そしてHERAの加速器トンネルを訪問した。翌日、火曜の定期保守日には、FLASH直線加速器トンネルをまず見学、午後には今回の目玉、Schenefeldという町にある欧州XFELの研究棟の建設エリアを視察した。
スラリー壁と水中のコンクリート平板製の実験ホール穴の掘削は、すでに終わっている。実験ホール全体は、地下水面内に位置するので、その基盤は数百の摩擦アンカーで地下に係留され、壁面はコンクリート梁を格子状に組んだもので安定化されている。グループは、スラブ面に降りて、実験エリアを擁することになる 90メートル x 50メートルの大きさの感覚をつかむことができた。最終建設の様子を、実験ホールにつながる光ビームラインのトンネル掘削の準備作業の様子を見ることができた。
二本目の直線加速器トンネルの建設は、数週間前に、このエリアから始まった。トンネルの内径は5.3メートルである。トンネルは、トンネル掘削機(TBM)を使って掘られ、プレキャストされた防水コンクリートで内装される。TBM切削ヘッドは、ベントナイトと呼ばれる、加圧された液体で満たされた部分で回転する。ベントナイト液は、それによる懸架装置でヘッドの軸ずれを防止するとともに、ズリの吸い出しにも使われる(吸い出された土砂の固体部分は、地上の遠心分離機で分離される)。ヘッドの後方に位置する、シールドと呼ばれる鋼製の円筒内では、プレキャストされたコンクリートブロックを組み合わせてトンネル壁が組み立てられる。
CFSグループの3地域からのリーダー三名は、掘削モードで運転中のTBM(TULAあるいは「レーザートンネル」と呼ばれる)を訪れ、TBMの制御ルームを実地に視察し、コンクリートブロックからトンネルの壁リングが一セット据え付けられる様子を見学することができた。トンネル建設の設計位置からのずれが、わずか3ミリメートルに留まることを目の当たりにし(!)、三名は、軟弱地盤であるにも関わらず高い精度をもつトンネル掘削機の運転に非常に感心した。
この訪問では、また、水で飽和した土壌で浅いトンネルや地下建築物を造る方法、単一のトンネルで成る加速器トンネルの実装と部品の設置手順なども見ることができた。
2日間の訪問は非常に実り多いものであり、CFSチームは多くのアイデアやレッスンを持ち帰ることとなった。
- More about the European XFEL
- Follow the XFEL tunnel-boring machine
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
ILCベースラインを発展させる:一本の主線形加速器トンネル
(Evolving the ILC baseline: single main linac tunnel)
先々週、私は今後2年にわたって取り組む技術設計活動でのベースラインをどのように発展させていくのか、その動機、考え方、進め方について解説した。技術設計の仕事は、2012年末にTDRの発表で完了する。先週、私は「トップレベル変更管理」の4つの案件のうちの第一項目について論じ、主線形加速器運転の加速勾配に関する提案の承認決定を発表した。今日、私は二件目の変更案件について解説したい。提案は以下の通りである:「主線形加速器について、そのトンネル建設を単一の加速器トンネルのみに変更することを提案する。すなわち、基準設計にある、RF機材設置用の副トンネルは除去する。単一トンネルに適応するため、ハイレベルRF(HLRF)電源とRF分配装置については、基準設計報告書(RDR)での提案に替えて、2つの新しいスキーム(「クラスター化されたRFシステム:KCS」と「分散RFシステム:DRFS」)をベースラインとし、その開発を進めることを提案する。これらの新スキームの開発進行が良好でない場合には、RDRのHLRFスキームに戻ることは可能である」。変更評価委員会のアドバイスを取り入れ、私はこのベースライン変更を承認することにした。
RDRの時点で、私たちが二トンネル構成を選択したさいの主な理由は、2つあった:一つは、建設サイト未定の時点で、建設時・運転時の人員安全確保上の諸条件を完全に満足できるかの懸念、もう一つは、ILC加速器の運転上の信頼度や稼働率を確保するうえでの懸念である。安全確保の問題については、その後、広範な研究が行われ、トンネル一本の構成であっても世界中の安全基準をクリアすることが可能であると結論づけられた。信頼度・稼働率については、Tom Himel氏(SLAC)らの開発したシミュレーションプログラムを使い、既存加速器での実績データを踏まえての研究が行われ、トンネル一本の構成でも良好な稼働率が達成可能と結論した。
安全上や稼働率上の問題が解決したならば、トンネル一本の構成への変更は単純で、ただちに地下トンネルの施工工数の大幅削減が可能と思う人もあろう。しかし、沢山の仕事が必要になる別の問題が起こってくる:それは、一本のトンネルに収まるようなコンパクトな加速器をどのように作るのか、の問題である。その結果、超伝導クライオモジュールにマイクロ波電力を供給するために、異なった二つのプランが考案されることとなった。
提案の一つ(いわゆるKCS)は、クライストロンを地上に設置し、およそ1キロメートルごとに切り離された巨大な建物にまとめる(クラスター)ものである。各クラスターからは、オーバーモードの導波管を使って、大高周波電力が地下のクライオモジュールまで送られる。このソリューションの特徴は、クライストロンをトンネルから地上に追い出したことである。KCS構成では、従って、比較的小さなトンネル内径でのシステム実装が可能となる。このシステムでの積み残しの課題は、システムの実機規模での検証である。潜在的な問題としては、一クラスターの何処かで何かが故障した場合、その影響は線形加速器のなかの約1キロメートルに及びうる、ということで、システムの信頼度要請が厳しい点が挙げられる。KCSソリューションは、深度の大小にかかわらず適用可能と考えられる。※
※Barish氏の記述には、KCSソリューションは、深度の大小にかかわらず適用可能と考えられる、とある。しかし、これは、「クライストロンクラスターのための地上の建物立地が得られて、地下へのアクセス施工が容易ならば」という条件のもとの話である。
もう一つの提案システムは、DRFSと呼ばれ、これはトンネル内におよそ8,000台の小型クライストロン・システムを設置する方式である。DRFSの1ユニットでは、1台の800kW出力の小型のアノード変調型クライストロンが2台の空洞に高周波電力を供給する。DRFSシステムもまた、比較的小さなトンネル内径に実装可能であるが、運転上、空洞の性能ばらつきにきめ細かく対応した優れた柔軟性をもっている。これの課題は、コストとメンテナンスは重要な問題であって、この方面で多くの研究が必要とされている。
最後に、二つの新たに提案されたソリューションのR&Dが未完成であることを踏まえ、RDRと同じタイプのRFシステムであるがこれを一本のトンネル内におさめるソリューションも追求している。この場合には、いくぶん大きなトンネル内径(~6.2メートル)に機材を詰め込むことが必要となる。ただし、これは欧州のX線自由電子レーザー(XFEL)システムと類似しているので、KCSやDRFSの開発で問題に遭遇した場合には適切かつ信頼性の高い代替システムと呼べる。
トンネルを二本構成から一本構成に変更することの意味合いについて、この一年間詳細な研究が行われた。広範な課題について系統的な検討を行い、一本構成のトンネルについて異なったタイプのサイトに対応する技術ソリューションと、それへの確信を持つに至ったことを喜びたい。複数の可能性をカバーするために、HLRFとしては複数のオプションを追求することになった。しかし、その結果、私は、設計のなかにいかなるサイトにも適応できる柔軟性が取り込まれたと考えている。技術設計フェーズの後半では、上に触れたような残された問題への取り組みを通じて、一本構成にトンネルに基づく堅牢なILC設計が必ずTDRに提示できるはず、と考えている。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
Second Baseline Assessment Workshop (BAW-2)
SLAC
18-21 January 2011
今後のスクール
US Particle Accelerator School (USPAS)
Old Dominion University, Hampton, Virginia, USA
17-28 January 2011
Excellence in Detectors and Instrumentation Technologies (EDIT 2011)
CERN, Geneva, Switzerland
31 January - 10 February 2011
■ニュース記事
From People's Daily
13 December 2010
中国初の深地下研究所、ダークマターのための運転を開始
中国初の深地下研究所が、12月12日、四川省のJinpin水力発電所で公式運転を開始した。中国が、現在物理学で独自の地下科学の実験研究のための最先端施設を得たことを意味する。
[英文記事]
From nature
10 December 2010
LHC、ヒッグス探索のための運転
コライダーは、未発見粒子の探索のため、2012年も運転を継続する。
[英文記事]
From Spiegel
10 December 2010
"Science Slam"-Finale - Große Show mit Schlaumeiern
Hier wird das Referat zum Event: Beim "Science Slam" wetteifern Studenten und Doktoranden darum, wer besonders amüsant über Exotisches sprechen kann - von Quantenwissenschaft bis zur Stringtheorie.
[ドイツ語記事]
From industrie.com
8 December 2010
Pour la science : Philippe Lebrun
Le mécanicien des particules.
... Clic aura pour vocation d’étudier de près les phénomènes découverts au LHC. Tout comme le projet concurrent ILC (International linear collider), qui réunit lui-aussi un impressionnant panel international de scientifiques.
[フランス語記事]
■アナウンス
◇NewsLineの休刊予定
NewsLineは、2週間休刊します。次号は1月6日に発行。良い年末年始をお過ごしください!
◇ILC Memo
2010-004
GDE Change Evaluation Panel - TLCC-2 – Decision Memo
2010-003
GDE Change Evaluation Panel - TLCC-1 – Decision Memo
◇ILC Internal Document
2010-050
BAW-1: ML Accelerator Gradient - Summary of Discussions and Proposal
◇arXiv preprints
1012.2792
Vertex Tracking at a Future Linear Collider
1012.2367
Precision Electroweak Measurements and Constraints on the Standard Model
1012.1730
Discrimination of SUSY breaking models using single-photon processes at future e+e- linear colliders
◇ILC-HiGrade Report
2010-007
2nd Sound as quench localisation tool
■今週のイメージ
芸術の(CLIC)研究
この画は芸術と科学の二つの分野の触れあいから生まれたもの。CLIC CDRの編集の合間に、CERNのHermann Schmickler氏は、スイスのChataigneriaeインターナショナルスクールでの芸術の授業で、次世代コライダーについてプレゼンを行った。15~17歳の生徒がCLICのイメージを描いた-ここに示すのは、提出された40の作品のうちの二つ。CERNでは最近、全作品の展示が行われた。このうちひとつは、CLICのCDRの表紙で使われる予定。




























