ILC NewsLine 2011年2月17日号 [英文記事]
■リサーチ・ディレクター・レポート
ILC研究者グループ、オレゴンで開催のALCPG11に集合
(ILC community meets in Oregon for ALCPG11)
今月のリサーチ・ディレクター・レポートは、リニアコライダー物理・測定器国際研究組織の共同議長であり、米州地域測定器コンタクトをつとめる、Jim Brau氏の担当。
私は 過去数週間にわたり、私の本拠地、米オレゴン大学で開催予定の次回のアメリカ地域ワークショップ(ALCPG11)の準備にかなりの時間を費やしてきた。世界中からたくさんの同僚たちがユージンにやってくるので、わくわくしている。コライダーや測定器、物理、そしてそれらに横断する問題に取り組む、有益なワークショップになるに違いない。
アメリカで前回会議が行われたのはアルバカーキだが、そのときに比べると、作業は随分進んでいる。当時は、国際測定器諮問委員会(IDAG)評価プロセスをちょうど終えたばかりで、認証された2つの測定器グループは、詳細ベースライン設計(DBD)の準備作業に取り掛かり、 2012年内に完成が目指すDBD報告書の執筆がはじまっていた。現在はその半分を終えたところで、多くの仕事がなされたが、多くの課題も残されている。 認証された2つの測定器グループ、ILDとSiDは、再度、ユージンでIDAGと会合を行い、DBD完成に向けて、現状確認、予想、計画などについて討論 する。
アルバカーキのワークショップでは、国際共同設計チーム(GDE)が開始した再ベース ライン・プロセスに関する全体会議での議論に、加速器家、実験家、理論家など数多くの研究者グループが参加した。将来のユーザーへ向けた、加速器研究者グ ループによる、新たな設計の最初の公式発表が行われたが、これはそのころ、ストローマンベースライン(SB2009)と呼ばれていたものである。そのと き、設計上のコスト、リスク、性能のバランスをとるさい、関係者の見方に開きがあることが明らかになった。設計バランスについて、各研究グループは、それ ぞれ特有の見方をする。実験家や理論家は、ILC性能の将来的展望を重視するけれども、物理研究上の加速器の性能を定量化するのは容易なことではない。物 理についてだけ考える場合でも、得失評価は必要になってくる。だが、コストとリスクは避けて通れない要素であることもよく認識されている。
アルバカーキ会議をうけ、より緊密なコミュニケーション・チャネルが設けられた。リサーチ・ディレク ター、山田作衛氏により、物理と新設計の実験問題について考慮するグループがつくられたのだ。私は、山田氏に、このグループの委員長をつとめるよう依頼さ れた。そして、私たちは問題を整理し、最適設計に向け作業を行っていくために、GDEの研究者たちと密接に協力してきた。2010年3月に、北京で開催さ れたリニアコライダーワークショップに研究者グループが集まったときには、すでに相当の問題理解がすすみ、加速器側では物理測定器グループの懸念に応える 作業が始まり、新たな加速器設計改善のアイデアも出ていた。そして、ベースライン・アセスメント・ワークショップ(BAW)が行われるまでの数ヶ月のあい だ、こうした議論はさらに深められることとなった。
こうして、2010年9月に高エネルギー加速器研究機構(KEK)で開催されたBAW-1、また、2011年1月に米SLAC国立加速器研究所(SLAC)で開催されたBAW-2で、新ベースライン設計に ついての議論が行われ、最終化に至ることができた。多くの努力と対話の後、よりしっかりとした、より高い性能をもつ設計を実現することができたのだ。
ALCPG11という機会を得て、まもなく米国に皆が再び集まる。私たちは、8つの並列セッションと、物理に特化し た2つの全体会議を盛り込んだ、充実した物理プログラムを尾yていしている。全体会議の講演では、ILC以外の話題としてテバトロンの成果、大型ハドロン コライダー(LHC)の現状と展望、コンパクトリニアコライダー研究(CLIC)測定器なども取り上げる。LHCについては、実験報告や物理の講演で多く 触れられるだろう。ILCの展望を論ずるとき重要な意味をもつ話題だからである。測定器のR&Dプログラムも引き続き活発で、沢山の面白い最新の 結果が期待される。SiDとILD の両グループは、各々自分たち自身の全体会議セッションを企画している。そして、この会議では、今回も加速器関連の同 僚諸氏とのより良い交流が期待される。
来月みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。
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■特集記事
symmetrybreakingより:グローバル・フォトウォーク入賞作品の特別展示、世界中で開催
(From symmetry breaking: Particle Physics Photowalk Exhibits Open Around the Globe)
この一連のイベントは、フォトウォーク開催、コンテスト、作品カレンダーの順で展開し、このたび展示会の運びとなったものである。
国際選考委員会が最優秀賞に選んだ、カナダトライアンフ研究所(TRIUMF)の8Pi実験装置の写真。8Pi実験の内部測定器の落ち着いた白黒画像は、物理の対称性を追求するもの。(撮影:Mikey Enriquez氏 )2月11日から、第1回グローバル・フォトウォークで撮影された写真の展示会が、アジア、欧州、北米で開催されている。展示会 は、2月11日から、スイスの欧州合同原子核研究機関(CERN)、米イリノイのフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)、日本のKEK、2月21 日からは、TRIUMFで、そして、来年中には、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)の企画によりドイツで開催予定。
フォトウォークが開催されたのは、2010年8月7日。200人以上のアマチュア・ カメラマンに立ち入り許可が与えられ、CERN、DESY、Fermilab、KEK、TRIUMFにある科学施設を巡った。参加者は、地元コンテストと 世界コンテスト向けに、数千枚の作品を提出した。展示会では、研究所毎のコンテストに入賞した地元入賞者の作品もあわせて展示される。全5か所の展示の目 玉は、国際最優秀作品に選ばれた、TRIUMFの8Pi実験を撮影したMikey Enriquez氏の写真とDESYのワイヤチェンバを撮影したHans-Peter Hildebrandt氏の写真だ。
フォトウォークは、アジア、北米、欧州にある素粒子物理関連の研究所が共同運営する広報組織「Interactions」が企画したもの。次回のフォトウォークの開催を2012年に予定している。
お近くのフォトウォークの展示会場については、http://www.interactions.org/cms/?pid=1030491をご覧ください。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
ILC-CLIC一般問題グループからの中間報告
(Interim report from the ILC-CLIC general issues group)
2010年1月11日、ILC運営委員会とCLIC共同研究グループ委員会は、相乗効果を期して、リニアコライダーなどの一般問題を議論するためのワーキンググループをつくった。このグループはこの一年の間定期的に会合し、今月、各々の上部機関に中間報告書を提出した。これまで、彼らは任務のうちの、最初の2点に集中して取り組んできた。「ILCとCLICの設計概念の深化を効率よく進める協力項目の整理」、「ILCとCLICの詳細な活動計画を吟味し、サイト選定、技術問題、プロジェクト計画に関して共通の課題を洗い出すこと」。中間報告ではこれらに関する検討結果をとりまとめ、いくつかの結論案を提示している。
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CLICとILCの想定スケジュールをLHCから期待される出力と併記したもの |
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ILC-CLIC一般問題グループの共同委員長を務めるPhilippe Lebrun氏とMike Harrison氏 |
| 共同ワーキンググループによる、ILCとCLICでの最終収束必要条件の比較 |
一般問題ワーキンググループのメンバーは、Eckhard Elsen(DESY)、Mike Harrison(米ブルックヘブン国立研究所(BNL)、共同議長)、Philippe Lebrun氏(CERN、共同議長)、Ken Peach氏(オックスフォード)、Daniel Schulte氏(CERN)、横谷馨氏(KEK)。今のところ、それ以上の長期展望については不確定性が大きいということで、グループが集中したのはここ数年についての議論や勧告である。たとえば、LHCの物理結果は、ILCの初期エネルギー設定として望まれるものにどのような影響を及ぼすか?CLICの開発予算縮減と2012年以降の ILC組織上の課題を踏まえ、将来のプログラムはいかにあるべきか?といった課題である。
共同作業は、ビーム収束系と加速器測定器インターフェース、土木工事と施設関連、陽電子生成、ダンピングリング、ビームダイナミクス、コスト、スケジュールなどに関し、ワーキンググループを通じて進められている。一般問題グループの検討では、これらの多くの分野で建設的な作業が進行中で、両プロジェクトに資するCLIC-ILC間の専門合同ワーキンググループの継続が推奨された。
リニアコライダーで遭遇する最大の難題の一つが、サイト選定である。主催国、研究所、サイトが決まっていない時点ではあるが、この問題にはできるだけ現実的に取り組む必要がある。ILC基準設計で、私たちは世界の3領域(アジア、欧州、米州)で『サンプルサイト』の検討を行った。それらの研究や、私たちが現在行っているILC技術設計活動での基本姿勢は、技術的要件がサイト選定にいかなる条件を与え、また、サイト選定がリニアコライダーの設計にいかなる影響を与えるのかを明らかにすることである。
ILC-CLIC一般問題グループは、リニアコライダーの基幹テクノロジーの選択と建設地の関係についての議論も行っている。合同ワーキンググループは、以下の興味深い言明を行っている:
リニアコライダーは、全く新しい加速器複合施設とみなすべきである。すなわち、現在、リニアコライダーの総コスト低減のためはこれを流用すれば良い、というように想定できる既設の加速器基盤施設は存在しない。従って、既設施設の存在をもとにサイト選定とテクノロジー選定を連関させて考えるべし、とする根拠も存在しない。既設の加速器研究所において、あるいはその近傍にリニアコライダーを建設する場合では、既存の技術・事務・研究基盤を流用することで、『サラ地』のサイトと比較して、総コストにすれば無視できない低減を期待することはできる。しかしながら、この規模の国際プロジェクトにおいては、建設・運転双方の期間にわたって国際研究コミュニティの需要に応えるインフラストラクチャはホストが当然提供すると考えられている。従って、既設研究所(またはその近傍)にサイト候補を限定する理由として説得力あるものは存在しない。
この中間報告では、他にもいくつかの実質的な結論が述べられていた。たとえば、グループは、リニアコライダー向けの様々な段階的方法を調査し、「全体として、ワーキンググループは、段階的建設を通してコスト低減を図ることについては、現時点ではさらなる調査に値する方向性を見いだすことができない」という、結論を下した。この問題は、リニアコライダーは必要な建設予算が膨大であるため、これは繰り返しもちあがるものである。将来の開発結果によっては、この問題に再び取り組むことになるかも知れないが、ワーキンググループのこの結論は、取り組むべき課題の一つを除外するものである。
報告書はまた、建設着手推進前に行われるべきシステム試験について、ILCとCLICの研究グループは同意しておくべきこと、そして、コスト予測に関する共同研究のアプローチについて、提言している。
以前にも書いたように、私見だが、LHCによって新たな物理フロンティアが拓け、将来の方向性が見えたならば、私たちのコミュニティは、一つのよく考え抜かれたリニアコライダーを推進する一つの世界コミュニティとして行動すべきだと思う。そのさいのリニアコライダーとは、ILCとCLICのいずれかである。ILC-CLICの一般問題ワーキンググループのこの中間報告は、その到達点に向けた深い考察に支えられた一ステップと言えよう。
[英文記事]
■ブログライン
16 February - Fermilab
Proposed FY2011 budget cut would be tough on Fermilab
Follow all Quantum Diaries
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
End Station Test Beam (ESTB) Workshop 2011
SLAC
17 March 2011
2011 Linear Collider Workshop of the Americas (ALCPG11)
University of Oregon, Eugene, Oregon, USA
19-23 March 2011
2011 Particle Accelerator Conference (PAC'11)
New York Marriott Marquis Hotel, New York, NY, USA
28 March - 1 April 2011
■ニュース記事
From CERN Bulletin
14 February 2011
シンチレーション検出器結晶:最高級品は少量包装で
欧州のプロジェクトENDO TOFPET-USは、(このプロジェクトにはPH部門チームが関係している)先月、公式に開始された。
[英文記事]
From CERN Bulletin
14 February 2011
AIDA-欧州の粒子検出器研究の地平を拡げる
欧州連合(EU)ほかから総額2600万ユーロの予算拠出を受け、AIDA (アイーダ:Advanced European Infrastructures for Detectors at Accelerators)は、来週、CERNで公式に立ち上がる。
[英文記事]
From National Science Foundation
11 February 2011
ヒッグスの年?全米科学財団(NSF)からウェブの生放送
オープニングで、CMSとATLASの2つの実験チームの物理学者に、ヒッグス粒子の検索について、また2011年に予測されることについて訊く。
[英文記事]
From Nature
10 February 2011
予算削減の標的となる米国研究機関
予算案で最大のカットを受けたもののなかに、エネルギー研究と環境保全がある。
[英文記事]
From ars technica
10 February 2011
自然科学研究の負担:テラバイト単位の研究データの数十年にわたる保管
自然科学の研究では大量のデータが収集される。こうしたデータをまとめ、保存し、分析し、そのすべてを有効に使うのは、必ずしも簡単ではない。
[英文記事]
From Science Business
2 February 2011
EUの素粒子物理の研究基盤を拡充する26,000万ユーロの計画
EU資金によるこのプロジェクトは、欧州における主要な研究基盤のアップグレード、改良、統合をめざすもの。
[英文記事]
■アナウンス
◇ILC Report
2010-027
Report of the fifth meeting of the ILC Project Advisory Committee (PAC)
◇arXiv preprints
1102.1892
Charged Higgs Boson Physics at Future Linear Colliders
1102.1883
Fermion Condensate as Higgs substitute
■今週のイメージ
プロがとらえたTPC
テストビームの開始を控え、一連の新たなテストに向かって準備を整えるILDタイムプロジェクションチェンバのプロトタイプ-プロのカメラマンの写真。画像提供: Heiner Müller-Elsner氏(DESY)




























