ILC NewsLine 2011年3 月10日号 [英文記事]
■特集記事
Symmetry Magazineより:最初からグローバル?
(From Symmetry Magazine: Global from the get-go?)
素粒子物理実験は、数十年にわたる全面的な国際協力の経験がある。これらの実験の原動力となる巨大加速器も同様にグローバルに躍進するのだろうか?
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| イラスト:Sandbox Studio |
フランスとスイスの国境にある欧州合同原子核研究機関(CERN)にて、最近開かれた会議で、ある物理学者は、文学部教授が口にした名言を思い出した:「物理は素晴らしい」と、教授は言う。「少なくとも、科学者たちはフランス語が話せるようになる」
このコメントは、物理学者の語学力についての自虐的な主張を表したものだったが、物理学者が国を越えて一緒に働くことで得た評判を浮き彫りにするものである。国際協力のモデルは、数十年間の会議で、実験物理学者の間の標準であった。数十か国から集まった何千人もの科学者たちは、現在、世界最高エネルギーの粒子加速器、大型ハドロンコライダー(LHC)のホスト研究機関である、CERNで昼夜を問わず働いている。米エネルギー省(DOE)と米国科学財団は5億3100万ドルをコライダーの建設とその実験に拠出し、現在では1700人の米国の科学者が携わっている。同様に、米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)のテバトロン実験は、世界中でほぼ100の言語を話す科学者の間で、数十年の協力をしてきた、等々を引き合いに出すことができるだろう。
しかし、これらの実験の原動力となる巨大加速器の設計・建設を国際協力で行う習慣は、ごく最近のことである。そして、世界で次の巨大で、ユニークな粒子コライダーは、それに先行したもののどれよりも多くの協力を必要とするのだ。
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イリノイ州Fermilabのコントロールルームから、米の科学者は、欧州にあるCERNのLHCで行っているCMS実験を遠隔操作できる。この遠隔運転センターは、素粒子物理学実験のために長く主流であった世界的な共同研究グループのモデルを踏襲している。写真:Reidar Hahn氏(Fermilab) |
単独で取り組むにはあまりに大きい
世界中の科学者が、例えば、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のHERA、DOEのブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)、CERNのLHCのような加速器の建設に貢献している。しかし、どのケースでも、1つの研究所が、プロジェクトの中心となり、管理を行い、加速器の運転を行っている。現在、科学者は、最初からグローバルな研究者グループとしてプロジェクトを運営する方法の検討に取り組んでいる。
これらの巨大な粒子コライダーの建設には、少なくとも10年かかり、その運転は更に何十年も続く。コストは、数十億ドルに達する。実際には、これは、同時期に建設できる世界加速器は1台だけしかないということで、そして、これは世界の全領域が科学的な進歩に参加するためには、一緒に働かなければならないことを意味する。国際協力の関係を築き、新たな加速器の建設地を同意するプロセスは、時間がかかるものだ。
「何かを作るときの理想的な方法は、一国が一体となって取り組むことですが、私たちの野心は、それを越えてしまいました」と、Barry Barish氏(提案中の国際リニアコライダーの国際共同設計チーム(GDE)・ディレクター)は語った。「そうしたなか、世界中の才能ある人たちの力を集めて取り組むのは、非常に強力なことです」
粒子コライダーを使うと、初期宇宙と類似した状況で、日常なじみのない粒子をつくり、研究することができる。衝突やエネルギーが高くなれば高くなるほど、科学者がより広範囲の物質の基本的な性質を調査することができるようになる。一般に、粒子加速器が巨大であればあるほど、到達可能なエネルギーは高くなり、理論(例えば超対称性や余剰次元)検証が可能になる。
「小型化に意味はないのです」と、Lyn Evans氏(LHCプロジェクト・リーダー)は語る。「大きな問題に立ち向かうことができなければならないのです」
CERN加盟国は、素粒子物理学の地平を拡げる最新の高エネルギー加速器であるLHCを建設するために、チームを結成した。後に、米国、日本、カナダ、インド、ロシア加入した。
「ユニークな大規模な研究施設が欲しいなら、国際的に建設しなければならないのです」と、Steve Holmes氏(Fermilabの現副所長であり、提案中の新加速器(プロジェクトX)のプロジェクト・マネージャー)は語った。これにより、参加国の資源や才能を共同出資し、技術スキルを磨き、そして、持っていない新しいスキルを得ることができるようになる。
| 写真: Reidar Hahn氏とFred Ullrich氏(Fermilab) |
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Fermilabと日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者やエンジニアは、CERNのLHC加速器向けに先進のハイテク四極マグネットの設計、制作し、スイスへ送り出した。将来の加速器建設者は、このレベルを越え、最初から真に国際的な活動を行うことができるか?写真:Reidar Hahn氏とFred Ullrich氏(Fermilab) |
安定した予算の確保
国際的な粒子加速器プロジェクトの仕事の分担は、複雑だ。
例えば、米国では、科学予算は連邦予算から来るものであり、毎年、国会の承認を受ける。これは、長期計画の立案を難しくする。
「来年の予算に大きな不確定性がある状態で、複数年のプロジェクトを計画するのは、非常に難しいです」と、Victor Kuchler氏(国際リニアコライダー・プロジェクトの一般施設の設計者)は語る。
これに対処しようとして、シンクタンクLewis-Burke Associateは、科学技術政策室の室長が、50億ドル以上と評価されるプロジェクトまたはプログラムを「国際科学予算枠(ISZ)」に指定することが出来る法案を起草した。これは、ISZプロジェクトまたはプログラムは、予算審議上特別な扱い対象となり、一年以上まえの時点で予算合意を得ることができる、というものである。これにより、外国人研究者のビザ発給の迅速化や、連邦省庁間の協力グループ編成の促進も図られる。
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提案された国際リニアコライダーの部品を検査するため日本のKEKにセットアップされた部品である、クライオモジュール1には、世界中の貢献した研究所の名前がある。写真提供:ILC国際共同設計チーム |
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バージニア州のジェファーソン研究所(J-Lab)で超伝導高周波空洞の電解研磨工程を準備する技術者。これらの空洞(高お効率で粒子を加速することができる)は、2つの提案された世界的な加速器プロジェクト、国際リニアコライダーとミュオン・コライダーの中枢機材である。写真:ILC国際共同設計チーム |
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世界規模の協力の精神にに基づき、国際リニアコライダーのためにサイト選定、土木工事と加速器技術に取り組むため、科学者は北京の国際ワークショップで会合を持った。写真提供:ILC国際共同設計チーム |
国を超えて働く
国際協力に関わる人々は、時差と言葉の壁を超えて働かなければならない。加えて、外国為替の壁を越えて管理することができる予算も作成しなければならない。多くの共同研究グループは、現物貢献の価値を設定するために、独自の通貨を考案した。提案中の国際リニアコライダーを設計している科学者は加速器が67億ILC単位を要すると見積もる。そして、通貨は2007年の米ドルがベースとなっている。必要条件を満たす超伝導磁石は、どんなに国がその実現に向け、お金や人的資源を費やしたであろうとも、現物での貢献として一定のILC単位の価値があるということである。
国際協力は、多数の国の利益や経済の影響を受ける。1国が危機を被った場合に、他国がそれをカバーできるのか?
おそらく、国際協力が直面する最難問は、どこに加速器を建設するか?である。建設地が決定されると、そのホストに選ばれなかった国は活動を支持し続けるか?
利益を波及させる
LHCは、フランスとスイスの国境に位置する。二国は、加速器をサポートする基盤を提供した。引きかえに、フランスとスイスは、巨大な加速器からユニークな利益を得ている。実験に取り組んでいる数千人の科学者は、フランスやスイスの居住者として両国の経済を後押しする。フランスやスイスの企業は、他の欧州の会社に加え、契約した部品やサービスを提供することで利益を得る。そして、加速器は国家威信の手段ともなる:二国は、科学的卓越の中心としての評判を得た。
しかし、最先端の素粒子物理学ツールの設計と建設に参加する機会を通して、他の国々も、LHCに関係することで利益を得ている。たとえば、米国のエンジニアは、Fermilabでのテバトロン粒子加速器、ブルックヘブン国立研究所の重イオン衝突型加速器向けの超伝導磁石の開発から得られた専門知識をベースとして、LHCの次世代の超伝導集束磁石の建設に貢献している。米企業は、ハイテク電磁石要素を供給した。世界中の国はLHC実験で得られたデータを共有するための世界的なコンピューティング・グリッドの作成に参加し、そして、およそ12カ国がLHCのデータを貯蔵し、コピー配布を行うためにCERNの支援を続ける。
LHCの建設にあたっては、関係する各国の能力と動機のバランスをとることが必要だった。あらゆる国からの科学者は、研究の機会を求めていた。彼らは、最新技術を造る際に専門知識を得たかった。彼らはまた、ある強さを伴って予算を提供したり、彼らの経験を異なるプロセでと共有したりすることができたのだ。ある意味では、経済的に意味をなすだけでなく、参加者を安心させる仕事を分担することになっていた。
屈辱的な教訓
米国の物理学者は、彼らの主要な加速器プロジェクト-SSC-が中止になったばかりだったため、LHCに関わることに特に興味を持っていた。
米国は最初は、単独でSSCを計画していたが、コストが初期の予想を越えて膨らみ始めたときに、他国にも関係するよう求めた。無理もない話だが、他国は自分たちのプロジェクトだと思えないプロジェクトに資金を供給するのを嫌い、デザイナーやホストになってくれることはなかった。議会は、1993年にSSCの予算を打ち切った。
「当時研究所長であった私たち一同は、私たちはもはや地域の加速器を建設することができない段階に達していることを自覚しました。あまりに巨大過ぎるのです」と、John Peoples氏(当時のFermilab所長)は語った。「一度に世界で1つだけ加速器を建設することができれば、幸運なのです」
屈辱的経験は、米国の物理学者自身が最も重要性が高いと考えたプロジェクトですら、そして、DOEと国会に承認されたものですら、失敗することがありえるのだということを示しています」と、米LHC加速器加速器プロジェクトのプロジェクトマネージャーであり、スーパーコライダーに深くかかわっていたJim Strait氏は語った。
米素粒子物理学は、突然その焦点を失った。米エネルギー省は、将来について議論するために、委員会を招集し、結局、LHCを支援することに決めた。
「LHCが次の大きなプロジェクトであったのは、明らかなことでした」とStrait氏は言う。「私たちの世代の最先端の加速器に取り組まなければ、私たちは学ぶことができるいろいろなものから切り離されてしまうでしょう」
新しい車やコンピュータのデザイナーが新たな進歩についていくことができなかったら、次の大きなものに追いつくと思っていることができないのと同じように、LHCに参加することができない場合、物理学者は次の開拓的な加速器の建設を望むことができなくなるのだ。
「何もしないで『ヨーロッパが成功することを期待しています』と言うのではなく、」と、Strait氏は言う。「あなたは『どうやって協力できますか』と言うのです」。結局、私たちは本当に一生懸命につくらなければならないのです。」
次のステップを計画する
次の国際的な加速器プロジェクトへの計画を立てている間、世界的な物理学研究者グループはSSCとLHCの教訓を思い出していた。今度は、国は最初から一緒に働いている。物理学者は、国際リニアコライダー、コンパクトリニアコライダーとミュオン・コライダー、という3つの提案された加速器を開発する際に、この姿勢をすでに示している。比較的控え目な態度で、Fermilabは新しい加速器(プロジェクトX)で、この道に乗り出した。
「SSCから学んだことといえば、はじめから国際的なプロジェクトにするつもりで始めないと、国際的なプロジェクトにすることはできないということです」と、Kuchler氏。「人々は、最初から自分のプロジェクトだという意識を持っていなければならないのです」
今度は、物理学者たちはどこに加速器が建設されても、それが自分たちのプロジェクトであるという意識を確実に持つよう努めようとしている。たとえ今度の加速器が彼ら自身の国に建設されないのであっても、協力を惜しまないことは絶対に重要であって、そうしなければそのまた次の加速器が自国に建設されるチャンスも無くなる、ということを学んだからである。
写真: Reidar Hahn氏、 Fermilab、SSC
[英文記事]
■世界の各地より
フラックス集束型電磁石のミリ秒への挑戦
科学者は、ILC陽電子源の重要な要素である(フラックス集束型電磁石)の設計を完了
(The millisecond challenge of the flux-concentrating magnet
Scientists complete the design of a crucial component of the ILC positron source, the flux-concentrating magnet.)
多くのことは、1ミリ秒で起こっている。一流の通信社は、最初に速報を発表できるよう、ミリ秒単位で競争している。1ミリ秒のうちに、光はスイスのジュネーブからイタリアのジェノバまで進む。
そして、ILC陽電子源の電磁石にとっての1ミリ秒とは、2,820の陽電子バンチからやって来る粒子を絞るのに強磁場を維持すべき時間である。この場合、1ミリ秒間持ちこたえるのは、マラソンをするようなものである。
米ローレンス・リバモア国立研究所の研究者は、ILCのフラックス集束型電磁石(コライダーを通して初期に正しい軌道へと陽電子を誘導する装置)の設計を完成させたばかりだ。このタイプの電磁石は加速器技術でよく見かけるが、普通、そこで強磁場を維持するのはもっと短い時間、わずかマイクロ秒 ― 1ミリの1000分の1秒 程度に限られていた。
「真の課題は、1日24時間年中無休で運転して壊れないものを設計することです」と、リバモアのJeff Gronberg氏は語った。Gronberg氏はフラックス集束型電磁石の設計、制作、試験のプロジェクトのリーダーである。
陽電子標的でつくられた陽電子は、はじめ、向きもエネルギーも大きなばらつきをもっている。フラックス集束型電磁石(フラックス・コンセントレータとも呼ばれる)は、これらの陽電子をなるべく沢山かき集めてその運動の向きをそろえ、下流の加速セクションでの加速を容易にする、という働きをする。
「システム全体として最終的に得られる陽電子を加速器の一パルスの間なるべく一定に保つことが大切です。」と、Gronberg氏。
陽電子バンチトレイン(およそ1ミリ秒)の中の陽電子数を一定に保つためには、電磁石が作る磁場をその1ミリ秒の間同じにもちこたえさせなければならない。(ちなみに、ILC仕様では、これを毎秒5回行わなければならない。)磁場の持久力は、フラックス・コンセントレータを構成する材料の安定度と、その中を流す電流で決まる。
リバモアのフラックス・コンセントレータは、6つの垂直銅板(各々厚さおよそ1センチメートル)でできている。それぞれの銅板には誘導コイルが取り付けており、この誘導コイルに電流を流すと、銅板に電流が誘起される。
六枚の銅板を重ねたもの(スタックと呼ぶ)には、孔が開けられており、その径は一端で大きく、他端で小さくなるよう精密に加工されている。銅板内に誘起された電流が作る磁力線は、この孔の中を通り、集束されることによって大きな磁場を発生する。そして、この同じ孔の中を、陽電子生成標的で作られた陽電子も、孔径の小さいほうから大きいほうに向けて通過する。陽電子の生成と磁場の発生のタイミングを合わせることで、陽電子群の収束が行われ、下流での加速に適した陽電子ビームが作られるのである。
陽電子の収束効率は、磁場の強度分布をどのように設定するかで決まる。入り口でおよそ5テスラ、出口でおよそ0.5テスラ、と言う磁場を、毎秒5回、1ミリ秒の間維持しなければならない、というのが仕様である。この仕様は、米国のアルゴンヌ国立研究所の研究者が粒子の運動シミュレーションを行って決めたものである。
「アルゴンヌは非常に大きな収束効果をもつ磁場の、強度分布計算を行いました」と、Wei Gai氏(GDE陽電子技術領域グループ・リーダー)は語った。「こんどリバモアでやらなければならないのは、それをつくることです」
もちろん、挑戦すべきことは非常にたくさんある。
磁場は、銅板に誘起される電流で作られる。電気抵抗を小さくするため、銅板は冷却されている。だが、窒素温度(摂氏-175.8度または77ケルビン)まで冷却しても、銅板の抵抗はゼロにはならず、陽電子のバンチトレインが通過している間にいくらかの電流損失が生ずる。そうすると、磁場も弱まってしまう。磁場が変動するようだと、コンセントレーターの性能は思い通りにはならなくなる。
銅板で発生する不可避な電流損失を補償するため、リバモア・チームは、誘導コイルに流す電流を、ミリ秒のパルスのなかでどのように調整すれば良いかをモデル化した。リバモアは、そのモデルに基づいて銅板の電流を最終的に安定化するための複雑な制御回路の設計も行っている。
「私たちは、設計を鍛えあげているところです」と、Gronberg氏は語った。
しかし、銅板の電流を安定化するだけではまだ十分ではない。銅板間の絶縁のために使うセラミックや、冷却のための液体窒素系が、運転中発生する10kWの熱に耐えられないなら、フラックス・コンセントレータの構造が破損してしまい、意味をなさないからである。
そこで、リバモアの研究者は、フラックス集束型電磁石の健全性に影響を及ぼすあらゆる要因として、応力、ストレス、陽電子生成標的からの光子による放射(これについてはドイツDESYからの協力を得ている)、部材の強度パラメータ、熱などの効果のモデル化を行った。
「私たちがやろうとしているのは、必要な磁場を発生し、制作可能で、かつ使い始めたら壊れずに使い続けられるものを作る、というこっとです」と、Gronberg氏は語った。
設計フェーズを終えた現在、シミュレーションによれば磁場がうまく作られるはずという所に到達している。次の課題は、このシミュレーションと試作機の比較を行うことである。リバモア・チームは、今年後半に、電磁石の制作を完了する。電流の低下がどれくらい押さえられるかを調べるため、室温で、そして、低い繰り返しでのテストが行われる。Gronberg氏によれば、窒素温度での運転試験がその次に行われる。
「必要とする非常に長い時間(ミリ秒)のあいだの、電流保持の確認ができるのはその時です」と、彼は語った。
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
次世代の素粒子物理学プログラムを議論するFALC
(FALC discusses future programmes in particle physics)
素粒子物理学資金提供機関代表の非公式の委員会である、財政担当者会合(FALC)は、2010年1月22日に米SLAC国立加速器研究所(SLAC)で18回目の会合を開いた。私は、さきごろ、GDEの役員会とFALCの間で、SLACでFALCの会合が開催された直後に、私たちの第2回ベースライン・アセスメント・ワークショップが続いた機会を利用し、興味深い交換会について報告した。今日はFALC会合での議論のいくつかの目玉を紹介したい。
FALCは、世界の素粒子物理学資金提供機関の代表が定期的に会合を行い、巨大な国際的なプロジェクトと共同研究グループのために共同で彼らの計画とプログラムを議論する機会を提供するユニークなフォーラムである。もともとの目的は、ILCのために議論を行うことだったが、その話題はその後拡張され、現在は、主要な国際的なプロジェクトや戦略計画にわたる議論も扱っている。
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FALC委員長Walter Davidson氏と秘書Anne-Marie Brugger氏(NRCカナダ)。 |
LHCの進捗や計画についてFALCで議論するRolf Heuer氏。 |
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FALCに報告する、KEK機構長鈴木厚人氏。 |
会議中のFALCの様子。 |
GDEからのILCに関する報告に加え、長期の計画に関する報告書や3領域の主な研究所のR&Dプロジェクト(2011~2014)があった。
ILCにも重要な話題として、Rolf Heuer氏(CERN所長)はLHCの進捗と次のデータ運転の見通しに関し、詳細で非常に明るい展望の報告を行った。彼は、ビーム強度をより高くし、2012年までの長期のデータ運転を行い、LHCは、ヒッグス粒子を発見するか、除外するかにかんして十分な感度を持っていることを示した。私たちがILC技術設計報告書を準備し、私たちはLHCの結果を注視している。これは動機づけやILCの仕様パラメータにとって重要な情報だ。
イタリア国立核物理研究所(INFN)所長、Roberto Petronzio氏はイタリアのスーパーBプロジェクトの状況について、ネット経由のプレゼンを行った。このプロジェクトは予算と建設のスケジュールと合わせて2010年末に承認されたものである。彼はサイト選定について説明し、決定がまもなく行われることを述べた。彼はまた、2010~2015年の期間に設置されたイタリアの旗艦プログラムのリストにスーパーBが載っていると述べた。イタリア政府は、覚書を通して国際協力を求めている。計画は、重要な米国の貢献としてPEP電磁石の再生使用を見込んでいる。Petronzio氏は、米国の参加を非常に歓迎するが、プロジェクトの実施において絶対不可欠とまで言うほどのことでもないと述べた。
KEK機構長である鈴木厚人氏は、JPARC、KEK、SuperKEKBの状況を報告した。彼は、SuperKEKBの状況を順調、と報告した。SuperKEKBの初期予算は承認され、国際的な共同研究も盛り上がりつつある。
いろいろな研究所やプロジェクト報告書に加え、Michel Spiro氏(CERN理事会理事長)は、欧州のDraft Strategy Documentにむけた活動についての最新情報をもたらした。これは、素粒子物理学に対するヨーロッパの戦略(2006年に採択された)の改訂案となっていくものである。欧州戦略のアップデートは、2012年9月にCERN理事会に提出され、承認を受けることになっている。これに向かうスケジュールのなかでの重要な中間点は、2011年10月に開催される将来加速器国際委員会(ICFA)セミナーである。。FALCの次回会合は、CERNでのその会合の直後に開催されることになっている。
このFALC会議から得られた結論のひとつは、ILC技術設計報告書のタイミングは他のスケジュールと整合性がとれている、ということだ。今年秋のICFAセミナー、2012年前半のコンパクトリニアコライダー(CLIC)の概念設計報告書、欧州の戦略アップデート、そして次のLHCデータ運転からの結果などが関連して近未来に得られるものである。私たちはこれらの展開から得られるものに留意しつつ、また、ヨーロッパの戦略アップデートに情報を提供しつつ、今後の道を歩んでいくことになる。
[英文記事]
■ブログライン
7 March 2011 - Fermilab
Fermilab in the news: dark matter, budget cuts, Tevatron’s staying power
2 March 2011 - CERN
Why don’t we just say collision rate?
Follow all Quantum Diaries
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
End Station Test Beam (ESTB) Workshop 2011
SLAC
17 March 2011
2011 Linear Collider Workshop of the Americas (ALCPG11)
University of Oregon, Eugene, Oregon, USA
19-23 March 2011
2011 Particle Accelerator Conference (PAC'11)
New York Marriott Marquis Hotel, New York, NY, USA
28 March - 1 April 2011
今後のスクール
Course on Synchrotron Radiation and Free Electron Lasers
Joint US-CERN-Japan-Russia School on Particle Accelerators
Ettore Majorana Foundation and Center for Scientific Culture, Erice, Sicily, Italy
6-15 April 2011
■ニュース記事
From New Scientist
2 March 2011
テバトロン停止:老いてまだ盛ん
・・・テバトロンは9月にデータ収録を停止するが、これは私たちが解析データを使い果たしてしまうということではない。何年にもわたる運転で、CDFとDZeroの2つの実験は、恐るべき量のデータを集めてきた。
[英文記事]
From UChicago News
2 March 2011
Bruce Winstein氏(物理学者、1943年~2011年)
Bruce Winstein氏(宇宙の出生の残像を調査した実験物理学者)は、4年間のがんとの闘病の末、2月28日に亡くなった。67歳だった。
[英文記事]
From Science
4 March 2011
物理学者はダークマタ―素粒子を垣間見たか?
この10年、天文学者は銀河に星々をつなぎとめておく重力の源として、ダークマタ―の存在を示唆する観測結果を得ていた。今や、素粒子物理学者は、ここ5年から10年のうちにダークマタ―の素粒子が見つかることを期待している。
[英文記事]
From physicsworld.com
8 March 2011
Simon van der Meer氏(1925--2011)
1984年のノーベル物理学賞をCarlo Rubbia氏と共同受賞したSimon van der Meer氏が、3月4日85才で亡くなった。二人は、ジュネーブ近郊にあるCERN素粒子-物理学研究所のスーパープロトン・シンクロトロン(SPS)でWとZ粒子-弱い力を運ぶ粒子-を発見するうえでの貢献に対して賞を授与さられた。
[英文記事]
■アナウンス
◇ILC NewsLineが生まれ変わります
読者のみなさま、来週、2011年3月17日より、ILC NewsLineオンラインと電子メール・バージョンは、新たなデザインに生まれ変わります。件名に[ILC NewsLine]と日付の 同じアドレス(ilcnewsline@ilcgde.org)から、通知電子メールをまだ送られていることと思います。電子メールは、午後12時00分(シカゴ時間)頃に送信されます。電子メールの受信が遅れた場合、私たちのウェブページ をチェックし、問題があれば報告してください。新しいデザインをお楽しみに!
◇arXiv preprints
1103.1071
A Search for leptophlic Zl boson at future linear colliders
1103.1069
Physics and measurements of magnetic materials
1103.0952
SUSY Predictions for and from the LHC
1103.0820
The flavor-changing bottom-strange quark production in the littlest Higgs model with T parity at the ILC
1103.0493
Testing Higgs models via the H± H∓ Z vertex by a recoil method at the International Linear Collider
1103.0481
Estimating the Spin-Independent WIMP-Nucleon Coupling from Direct Dark Matter Detection Data
1103.0069
Supersymmetry Breaking Scalar Masses and Trilinear Soft Terms From High-Dimensional Operators in E_6 SUSY GUT
■今週のイメージ
18世紀のフレームワークの今日のテクノロジー
(Today's technology in 18th-century framework)
2月28日から3月3日まで、ミラノ大学とINFN Sezione di Milanoがホストをつとめる、TESLA技術共同研究グループ会合が開催された。画像:峠暢一氏

























