ILC NewsLine 2011年8月4日号 [英文記事]
■世界の各地より
欧州、素粒子物理学戦略の最新情報を発表
(Europe launches update of strategy for particle physics)
Perrine Royole-Degieux | 4 August 2011
欧州合同原子核研究機関(CERN)のSteinar Stapnes氏は、7月23日に仏・グルノーブルで開催された将来加速器欧州委員会(ECFA)-欧州物理学会(EPS)特別会議で、欧州の素粒子物理学戦略のアップデートについて発表した。
画像:LPSC/Tomas Jezo
欧州の今後20年にわたる素粒子物理学ロードマップの策定に取り組む機関は、CERN理事会だ。 20の加盟国の代表が科学プログラムと財源を決定するCERNの運営組織である。2006年7月に発表された、欧州の戦略には、新たな加速器と測定器技術に向け、加速器ベースと非加速器ベースの素粒子物理学が共同でR&Dを行う、と記載されている。当時、研究者グループは、2010年内に最新情報が得られると期待していた。LHCからヒッグス粒子に関する結果が得られ、標準理論を越えた物理学が明らかにされると信じていたのだ。「私たちは計画を若干変更し、2012年には、ヒッグス粒子が存在するかどうかが判明し、その時までに、宇宙粒子実験から、たとえば、ダークマターやニュートリノといったものについてより深い理解が得られると考えています」と、Michel Spiro氏(CERN理事会理事長)は語った。「最新版の発行は2年遅れとなってしまいましたが、私たちは2006年の戦略文書に盛り込まれた勧告の多くに従ってきました」。
素粒子物理学プロジェクトは、現在、真に国際的な活動である。そのため、CERNの欧州戦略グループは、素粒子物理学の欧州戦略が他の領域の展望とつながりを持つべきとの考えだ。「私たちの決定はCERNのプロジェクトによる影響を強く受けますが、欧州、そして国際的なレベルをはるかに超えたところにあるのです」と、Spiro氏。「私たちは、戦略策定にアジアやアメリカからの積極的な参加を希望しています。そのため、これらの領域の代表に予備作業に参加してもらいました。また、欧州戦略グループの会議には、欧州外の多くの国からオブザーバーが参加しています」。
2011年7月25日、EPS-HEP2011記者会見中に、欧州の素粒子物理学戦略を述べる、Michel Spiro氏(右)(CERN理事会理事長)。この写真には、Rolf Heuer氏(CERN所長)とStavros Katsanevas氏(フランス国立科学研究センター/IN2P3)(中央)もいる。画像:LPSC/Tomas Jezo国際リニアコライダー(ILC)に関しては、2012年内の決定につながるような、ヒッグスや新しい物理の結果をLHCが出すことができるかどうかを判断することは、現在Michel Spiro氏にできることではない。「いずれにせよ、私は2012年以降も国際的な活動を継続することが必要であり、個人的に、ILCとCLIC(コンパクトリニアコライダー研究)プロジェクトが、技術的なR&Dプロジェクト・マネジメントや科学研究に関してより密接に協力することを期待しています」と、Michel Spiro氏。
欧州戦略は、欧州の研究者の欧州の素粒子物理学プロジェクトへの参加はもちろん、欧州を超えたロジェクト参加についても記載している。また、ダークマター、ニュートリノ、宇宙論など、素粒子物理学プロジェクトと共通部分がある、宇宙粒子や原子核物理学の全ての特殊分野もカバーしている。
EPS-HEP2011会議で始まる欧州戦略を更新するプロセスは、欧州戦略セッションの科学秘書であり、CERNのリニアコライダー研究のリーダーをつとめる、Steinar Stapnes氏のオープニング講演(スライドとビデオ参照)から開始されたことになる。予備作業グループのメンバーも出揃い、様々な提案中のプロジェクトからの情報収集を行っている。10月にCERNで行われる会議では、アジアとアメリカの次世代の素粒子物理学の展望が提示される予定だ。高エネルギー物理学の冬の会議開催後の2012年4月頃には、戦略文書の初版向けに2006年に仏オルセーで行われたのと同様に、物理研究者グループによる議論が求められるだろう。そして、2012年夏の会議の後、CERN理事会の代表は、1週間かけて手続きの分析を行うのだ。「今後5年間の中心的な優先事項について、合意に達しようとしています」と、Spiro氏。
2012年末、CERN理事会は最終的に、新しい欧州素粒子物理学戦略をキックオフする特別な会議をブリュッセルで(おそらく、省レベルでの)開催する予定だ。この会議では、次世代の素粒子物理学の新しいビジョンへの承認が中心となる。
2012年は、次世代の素粒子物理学の多くの側面において、重要な年である。同時に、重要な高エネルギー実験から生まれた意義深い成果が発表されることだろう。それは、経済協力開発機構(OECD)による、CERNの活動の社会的、経済的影響についての研究結果である。欧州戦略の発表は、素粒子物理学における欧州の国家間のそして国際的な共同研がいかに広範囲に及ぶものか提示する理想的な機会でもある。そのために、CERN加盟国は、様々な広報イベントや教育イベントを企画している。
わずか数秒で高勾配に
(Good gradients in seconds flat)
米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)の科学者は、ビーム安定性を改善するために、個々の空洞に着目している。
左のように、加速勾配曲線はそのピークで均一になるのが理想的だ。これは空洞にビームが投入されていないときの加速勾配である。ビームが空洞に投入されると、右図のような傾きが現れる。今回の実験では、最高5mAのビームを使った空洞の中での均一な加速勾配が達成できた。画像:Julien Branlard氏「かなりスムーズに行きました」と、Julien Branlard氏は語った。Branlard氏は超伝導空洞の低レベル高周波技術に取り組む研究者だ。今回のテストでは、一つの電源から一連の空洞に電力を送り、個々の空洞の加速勾配をコントロールすることに重点的に取り組んだ。
大部分の超伝導直線加速器は、各空洞に別々の高周波電力源を持つ。FermilabのGustavo Cancelo氏によれば、何十年もの間、各空洞の加速勾配の制御を容易にすべく、直接電源を制御してきた。新しく、高い加速勾配をもつ超伝導直線加速器のためには、一つの電源から複数の空洞に電力を供給するのが、より費用効果が高くなる。したがって、研究者は一連の空洞の全体的な加速勾配を制御することに重点を置くようになった。
2010年に久保浄氏が発表した論文によって、研究者は、個々の空洞の加速勾配を均一にすることの重要性を再認識した。
加速勾配の値が一定の時間、例えば1ミリ秒以上、1メートルにつき20メガボルト(MV/m)の値を持続すると「均一」となり、グラフには水平なラインとして表される。もし、1ミリ秒の間に20MV/mから17MV/mに加速勾配が落ちれば、グラフは傾く。理想的な空洞は、粒子ビームが通過しているときに、均一な加速勾配を維持する。
加速空洞の傾きは、空洞ミスアラインメントとともに、加速されたときに粒子ビームが横にけられる原因になる。(特に、電子-陽電子コライダーにとって、1パーセントの加速勾配の傾きは、直線加速器の最下流での粒子の軌道に重大な変化をもたらす)
「どの空洞も同じ加速勾配を持っていれば、この問題について心配する必要はなくなります」と、Cancelo氏。しかし、すべての空洞が異なる加速勾配を持っているのは事実だ。「問題は、個々の空洞が傾いているということです」
「負荷時のQ値(QL)」は、これらの障害を空洞から取り除くうえで鍵となるもののうちのひとつで、空洞の加速勾配を決めるものだ。電力が電源から空洞まで分配される方法を制御することにより、QLを制御し、傾く傾向になる空洞特定に対処する。この傾きの原因の一部として、どれくらいのビーム電流が空洞を通過するか、ということがある。
正確に正しいQLを予測することで、研究チームは一定の加速勾配値の0.5%以内で傾きを均一にすることができた。これは、0~5mAの間のどんなビーム電流にもあてはまった。
研究チームはまた、均一な加速勾配設定から電流を上げたり、下げたりし、傾きの程度が、電流の変化により、線形で増加していることを実証した。
これは役に立つ発見である。また、今後の更なる研究で解決すべき、実際的な問題を提示するものでもある。その問題とは、傾きのないQLは、ある特定の電流に独特のものだ。「加速器に電源を入れるのは、電気のスイッチを入れるようなものではありません」と、Cancelo氏。
望む電流を得るまでの間、加速勾配を持ちこたえる必要がある。おそらく、ある空洞にとってはあまりに高い電流のため、クエンチを引き起こしてしまうこともあるだろう。研究チームは、この問題への対処法を考え出した。これはFLASHやFermilabのNML施設でまもなくテストされる予定だ。この問題に対処するために、電流の上昇と期待される電流からのどんな予想外の離脱を考慮する、QL調整を自動化することが重要である。言うまでもないが、手動でするにはあまりにも遅いのだ。
「自動化プロセスを考え出す必要があります」と、Cancelo氏。
「私たちが信用できるとわかると、FLASHの専門家は、加速器を自由に使わせてくれまた」と、Branlard氏は語った。「私たちはラッキーだったのかもしれないし、十分に準備をすすめていたから、あるいは、その両方かもしれません。いずれにせよ、本当にうまくいきました」。
ありがとう、Peter!
(Thanks, Peter!)
2005年、ILCの基準設計の国際的なバリューコスト予測の方法論の開発、実行にむけ、私は、Wilhelm Bialowons氏(DESY)、設楽哲夫氏(KEK)、Peter Garbincius氏(Fermilab)3人のコストエンジニアを任命した。ILCはグローバルプロジェクトであり、そのコストは国際的に理解されうるものでなければならない。Garbincius氏とチームメンバーは、ILCのコスト評価に関して素晴らしい仕事をしてくれた。そのうえ、Garbincius氏はGDEの役員会のメンバーをつとめ、様々な活動に活発に参加した。Garbincius氏は最近Fermilabの中で人事異動があり、この異動はGDEにとって大きな損失となった。しかし、非常に幸運なことに、コーネル大学のGerry Dugan氏がGarbincius氏の任務を引き継いでくれることに同意し、技術設計報告書(TDR)でのコスト算出を担当することになった。
GDEコストエンジニアが取り組んでいる仕事は、非常に挑戦的なものだ。リニアコライダーは新種の加速器であり、多くの新たな機能や課題があり、なによりILCは国際プロジェクトであるからだ。例えば、重要なテクノロジーは、複数年のR&Dプログラムを通して開発中であるし、TDRに向け、加速器設計は新ベースラインをもとに進められている。建設地が決まっていないため、実際の建設の世界的なモデルを明確にすることは困難だ。課題は山積している。
しかし、プロジェクトには巨額なコストを要するため、信頼できるコスト試算をつくらなければならない。それに成功するためには、コストエンジニアはコスト試算が信頼しうるもので、世界のどの国でも適用できることを確認するために、また、特別なコスト算出ツールを開発するために、設計者と継続的に連絡を取りつつ、非常に密接に協力する必要があった。Peter Garbincius氏は、素晴らしい能力でこの難しい仕事をやりくりしてくれた。基準設計報告書(RDR)の見積書が国際的委員会によって非常に高く評価されたことが、それを証明している。
Garbincius氏は、2009年にGDE役員会のメンバーに任命されて以来、GDEの活動に欠かせない存在になった。GDE役員会は、機能的にGDE活動を導くグループであり、方針を決定し、ハイレベル決定をする場だ。予想通りに、次世代活動の戦略を練る世界的なR&D努力を監督することから、Garbincius氏は委員会の重要なメンバーになり、活発に全てのその様々な活動に参加してくれた。Garbincius氏の活発な関与や私たちのベースラインを特にコスト影響にタイムリーな情報を提供する、技術的設計への変更を決めるうえでの役割は、特に注目に値するものだった。
Peter氏は、先月カリフォルニア工科大で開かれた、Garbincius氏にとっては最後となる、GDEの会議に出席した。そこで、コスト算出の任務を正式にGerry Dugan氏に引き継いだ。Garbincius氏は、これまでと同様、計画と、RDR以来初めてとなるコスト試算に関するデリケートな問題に関する多くの議論に精力的に参加した。2007年のRDRコスト試算からは、インフレ−ション、為替相場、設計への修正、建設の異なるモデルなど、多くの状況が変わった。Peter氏は、この新たなコスト試算を始めるのをサポートするために、膨大な知識と高い見識を寄与してくれた。
Gerry Dugan氏が、米州のTDRコスト算出責任者の後任を引き受けてくれたことは、幸運である。Dugan氏は、ILC、そして、コスト試算における経験が豊富で、この仕事に非常にふさわしい人物だ。それでも、私たちは膨大な知識と歴史を持ち、そしてコスト制御を維持する重要性を良く理解しているGarbincius氏を失うことは非常に残念だ。Garbincius氏のやり方は独特だ。彼は、大きなエネルギー、献身、激務を通して模範を示して指導するのだ。Garbincius氏は誰にでも質問するし、常に『ありのままに言う』ので、彼との交流は、いつも面白いものであった。GDEにGarbincius氏がいなくなって寂しいが、彼の幸せを祈っている。私は、プログラム・プロジェクト支援部長としての彼の新しい任務が、Fermilabにとっての大切な財産となると確信している。
Peter氏の幸運をお祈りします!
- Meeting of the Division of Particles and Fields of the American Physical Society (DPF 2011)
Brown University, Providence, Rhode Island, USA
09- 13 August 2011 - Lepton Photon 2011 XXV International Symposium on Lepton Photon Interactions at High Energies
Tata Institute of Fundamental Research, Mumbai, India
22- 27 August 2011 - ILC positron collaboration meeting
IHEP, Beijing, China
27 August 2011 - POSIPOL 2011
IHEP, Beijing, China
28- 30 August 2011 - Supersymmetry 2011 (SUSY 2011)
Fermilab, Batavia, IL
28 August- 02 September 2011 - XXXI Physics in Collision (PIC 2011)
Simon Fraser University, Vancouver, Canada
28 August- 01 September 2011 - The 2nd International Particle Accelerator Conference (IPAC'11)
San Sebastian, Spain
04- 09 September 2011
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from The New York Times1 August 2011
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最近、物理学者はすごい勢いで、トランプをひっくり返していた。最もそれが顕著だったのは、フランス、グルノーブルでの会議中だ。これまでのところ、エースはいまだ行方不明である。そして、見される可能性のあるカードの何枚かには、エースが隠されていないことが明らかになった。しかし、現在、ヒッグスがどのカードの下に隠れているか、見当がついていると考える物理学者もいる。いつ発見されるかについては、合意されてはいないが。
- from Physics Today
August 2011私たちの基礎粒子の理解は、はじめて原子核を発見した100年前には想像も及ばなかった方法で発達した。
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from Physics Today29 July 2011下院は2012年の、DOE予算の60億ドルの削減を承認したが、上院はその多くを復活させるかもしれない。
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from Reuters27 July 2011
Fermlab Todayは、グルノーブルで行われている会議からの報告として、LHCのライバル加速器「テバトロン」の研究者が、ヒッグス捜索実験にさらに力を入れると語った、と伝えた。-
from physicsworld.com27 July 2011本日Nature誌で発表された、最新情報は反陽子ヘリウムに関するものだ。ヘリウム原子の中の1つの電子が反陽子と入れ替えられるとき、負の電荷を持つこの風変わりな「原子」がつくられる。
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from Discover27 July 2011
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大量の実験結果が、仏グルノーブルで開催された、高エネルギー物理学欧州物理学会年次会議と、米マサチューセッツ州ケンブリッジにあるMITで開かれた素粒子と核の国際会議(PANIC11)2つの巨大国際会議で提示された。
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超伝導の科学者たち(Superconductor scientists)画像: George Joch氏先週、シカゴで開催されたSRF2011会議には、ほぼ400名の研究者が集まった。
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