ILC NewsLine 2011年10月27日号 [英文記事]
■世界の各地より
「かまぼこ型」?トンネル
(Proposing a fishcake shape)
Rika Takahashi | 27 October 2011
「かまぼこ型」といえば、日本人であればピンと来る特徴的な形だ。このかまぼこ型が、アジアサイトにおけるILCトンネルの形として採用された。
10月12日、13日の2日間、ILCの土木・サイト選定に関する会議が行われた。ILC国際共同設計チーム(GDE)が「SB2009」とよばれる、コスト/設計を最適化した新たな設計ベースラインを発表した時に採用されたのが、基準設計報告書(RDR)で採用された「ダブル・トンネル」に代わる「シングル・トンネル設計」であった。SB2009発表時には、日本の研究者は「日本版シングル・トンネル」と呼ばれる、一見するとトンネルが2本あるような設計を提案していた。
日本のILCの土木・サイト選定研究チームは、産業界の専門家と協力して、詳細なサイト分析を行い、8タイプの異なるトンネルデザインについて検討を重ねて来た。GDEプロジェクト・マネジャーの山本明氏(高エネルギー加速器研究機構:KEK)はこの会議で「多くの方の多大な努力の結果、この『かまぼこ型』トンネルを、山岳サイトにおけるトンネルデザインとして提案したいと思います」と述べた。
「SB2009の時には、日本の山岳サイトに適するトンネルの設計を検討する際に、トンネル・ボーリング・マシン(TBM)を使った掘削方法をベースにしていました」と語るのは、土木・サイト選定チームの宮原政信氏(KEK)。しかし、この時提案された「シングル・トンネル」のトンネルは、1本ではなかったのだ。「設計図を見ると、2本のトンネルが平行に走っているのがわかります。これは、日本では、大規模工事の際に、本トンネル掘削の前に『先進導坑(パイロットトンネル)』を掘る場合が多いことに起因しています」と宮原氏は言う。
TBMは主要なトンネル掘削手法の一つだ。もうひとつの掘削方法としてNATM – 新オーストリアトンネル工法がある。加速器を建設するためには、堅固な地盤を要する。TBMは一般的に、岩盤等の固い地盤の掘削に優れていることから、ILCトンネルの工事方法として、米国、欧州、アジアの全地域での工事方法として採用する方針が採られて来た。
TBMマシンは、巨大な円柱型の掘削機。様々なタイプの地質に対応することが可能だ。特に、堅い地盤における工事に適しており、周囲の地盤への影響を与えることが少なく、掘削面は非常に滑らかなことが特徴だ。TBM工法は、短い工期が求められる工事にも適している。「TBMを使った工事では、TMBマシンは工事現場の最前線に据えられ日夜トンネルを掘り続けます。もし、TBMマシンが地下水や、緩い地盤の箇所に突き当たると、困ったことになります」と、宮原氏は言う。「日本の国土は70パーセント以上が山岳地帯です。そこで、日本では、トンネル工事の際に「先進導坑」を掘り、まず地質情報を収集しておく、という場合が多くなっています」。
地質情報が無いと、突然の出水やトンネルの崩落など、危険な状況に陥ることにもなりかねない。最悪の事態を回避できても、復旧工事には時間を要し、工事の遅延につながることもある。では、NATM工法を使うと、どんなメリットがあるのだろうか?
「RDRとSB2009の時には、NATM工法は掘削オプションとしては除外していました。NATMは、月間平均120メートルと掘削スピードが非常に遅く、TBMと比較すると数倍工期が長くなってしまうのです」と宮原氏。「しかし、検討の結果、異なる箇所で工事を同時に進めるなどNATMの工事スケジュールを最適化することで、TBMよりも短い工期で、比較的安価でのトンネル工事が可能だということがわかったのです」。
カマボコ型トンネルは、幅11メートル高さ5.5メートルで、中央を厚いコンクリートの壁で2つの部屋に区切られている。今回の会議では、KEKの放射線科学センターの佐波俊哉氏から、この新しいトンネル設計に対する放射線安全に関する解析結果も報告された。解析によれば、壁厚を3.5メートルにすれば、基準設計で採用された2トンネルと同様の安全性が担保されると言う。
また、NATM工法を採用することで大幅なコスト削減も期待できる。「TBMマシンは非常に高価で、これがTBM工法の最大のデメリットになっています。NATM工法で使う掘削機械は、TBMより安価であるため、同時に何台もの機械を使って掘り進めることが可能となります」と宮原氏は言う。
「また、先進導坑を掘る必要もなくなります。NATM工法では、掘削機は工事の最前線から少し下がった場所に配置されます。そのため、出水などの非常時にも、フレキシブルな対応を採ることが可能となるのです」と、宮原氏はNATM工法の利点を強調した。
「基準設計報告書の設計に比較して、10パーセント以上のコスト削減が可能となる検討結果を報告することができ、非常に満足しています」と、GDEのプロジェクトマネジャーである山本明氏は語った。これは、産業界と協力して行った検討としては世界で初めて試みとなるものだ。今後、欧米でも同様の検討・調査が行われる予定となっている。
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■特集記事
CERN Bulletinより:計画段階の測定器
(from CERN Bulletin: Detectors on the drawing board)
欧州合同原子核研究機関(CERN)内外のリニアコライダー測定器の開発者らは、次世代の測定器技術に取り組んでいる。高エネルギーリニアコライダー測定器の開発に焦点が当てられることは、同時にその革新的なコンセプトと設計が、次世代測定器のどんなものにも適用可能になるということだ。
「現在のところの、測定器技術の最先端は、大型ハドロンコライダー(LHC)実験で使われている技術になりますが、その設計や専門知識はすでに10年以上前のものだという事実は驚愕に値するかもしれません」と、Lucie Linssen氏は語る。Linssen氏は、CERNのリニアコライダー測定器(LCD)グループのプロジェクト・マネージャだ。「次世代の測定器は、LHC実験の業績を凌ぐものでなければなりません。これは、容易なことではありません。現在運転中の測定器を観測し、ここ10年間の技術の向上を取り入れることで、意味のある進展を果たしてきました」
LCDチームは、現在、コンパクトリニアコライダー(CLIC)実験用測定器の開発に取り組んでいる。「CLICのような電子-陽電子コライダーは、LHCよりかなり高い精度の測定器が必要です」とLucie氏は説明する。「この精度とその他CLICに特有の問題に対処するために、様々な技術を研究してきました。これらの多くは、これまでに行われてきたリニアコライダー研究から開発されたものですが、CLICのユニークな仕様パラメータに適応させる取組みを続けて来ました」。これらの研究成果は2台の測定器設計へとつながり、CLICの概念設計報告書の中で発表された。
一見すると、リニアコライダー実験はコンパクト・ミュオン・ソレノイド(CMS)実験のように思えるかもしれない。確かに良く似てはいるのだが、リニアコライダー向けには、測定器の効率と精度を改善するために、下記のようないくつかの新しい要素を取り入れている。
- より精密なバーテックス測定器:リニアコライダー測定器設計の中心にあるピクセル測定器は、最高40倍多の読み出しチャネル数と非常小さなピクセルサイズ(およそ20×20μm2CMSは100×150μm2)を持つ。
- 粒子フロー分析:この技術は個々の粒子(ジェット内の粒子を含む)から最大の情報を得るため、測定器の様々な部分から得られる情報を統合する。この技術を十分に活用するために、リニアコライダー実験は、超微粒度のカロリメータの開発を行っている。
- タングステン・カロリメータ:CLICの衝突エネルギーは、最高3TeVと非常に大きいため、エネルギー・リークを避けるために、カロリメータ設計は、深くかつ高密度である必要がある。これを達成すべく、通常使われる鋼の代わりに、タングステン製のアブソーバーを用いるハドロンカロリメータを設計した。タングステンは非常に高密度であるため、測定器のサイズを巨大化することなく、必要な密度を提供可能だ。CLICのタングステン・カロリメータについてはこちら。
LCDチームは、CLIC測定器を使った新しい物理事象の発見と精密物理学の可能性を研究するため、6つの物理学分析を行った。これらの分析は物理イベントのシミュレーション図とバックグラウンドイベントのシミュレーション図を重ね合わせ、電子-陽電子衝突が起きた時の環境作って行われたものだ。これらのデータは、現実的な読み出しを行うために、測定器のコンピュータモデルへと送信された。最後に、非常に特殊なソフトウェアを用いて、物理信号が、測定器読み出しから抽出されたのである。
入力した物理イベントと、抽出された物理信号を比較することで、それが基礎粒子、あるいは複合粒子であるかどうかに関係なく、たとえば、ヒッグス粒子の特性を計算したり、研究したりすることができる。LCDの分析によると、ヒッグス複合スケールへの感度がLHCで可能なものよりもかなり優れていることがわかった。
「今後も測定器技術の開発を続けて行く必要がありますが、分析によってこの測定器コンセプトが実現可能なものであることがわかりました」と、Lucie氏。「このコンセプトは実現可能なだけではありません。これまで理論上の存在でしかなかった相互作用をこれまでにない高いレベルで示すことができました」
最終的に作られる測定器がどのようなものになろうと、その設計にはこれらのリニアコライダーコンセプトが取り入れられることだろう。
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■ディレクターズ・コーナー
グラナダで考えたこと-部屋の裏からの眺め
(Thoughts from Granada – a view from the back of the room)
今週のディレクターズ・コーナーは、GDE米州地域ディレクター、Mike Harrison氏の担当。
Mike Harrison | 27 October 2011
最近、スペインのグラナダで開催されたリニアコライダー・ワークショップ2011(LCWS11)会議で明らかだった事実のひとつは、リニアコライダー研究者グループの統合が進み、意識の共有が進展してきたことだ。グラナダの会議は、CLICとILCの合同ワークショップとしては、昨年CERNで開催された会議に続く、第2回目となる。ILCとCLICコミュニティは、ここまで2年以上、合同技術ワーキンググループを開催している。今回の会議の全体会議と並列セッションを見れば、両グループが、その能力や直面している問題についての相互認識がかなり進んでいることが伺えるだろう。両プログラムともに、技術に関する詳細な報告を行った。初日の総会では、Rolf Heuer CERN所長が、最新のLHCのニュースに加え、高エネルギー物理学研究者グループ全体の統合に向けた力強いメッセージを届け、世界的なリニアコライダー・プログラムへの更なるサポートについて発言した。この協調強化という観点は、将来加速器国際委員会議長の鈴木厚人氏からも繰り返し強調された。鈴木氏は、リニアコライダー・プロジェクトの実現に向けた具体的な方法について述べた。
技術セッションで最も印象的だったことは、超伝導高周波(SRF)空洞プログラムの最近の進捗であった。性能を制限する原因の解明が進み、空洞高加速勾配の性能歩留まりは劇的に改善されている。空洞の診断、製造行程のコントロール、製造過程または事後に生じた欠陥の補正に関する知見が蓄積され、技術が向上している。ハイレベルRF系が、ある程度の加速勾配の幅を持つ空洞に対処できることを考えると、100%の性能歩留まりも可能かも知れない。2007年にR&Dプログラムを開始した頃には、「1メートルにつき35メガボルト(35Mv/m)」の加速勾配は、いささか無理のある目標設定だと考えられていた。今となっては、それは保守的にも思えるほどだ。ILC SRFプログラムは世界的なR&Dの最優先事項のうちのひとつであり、このレベルまで達することができたことに非常に満足している。SRFは世界的に、基本的加速器技術としての地位を確立しており、順調に予算も投入されることだろう。ILCプログラムがこれらの活動の最前線にあり、良く計画された国際共同研究の力を実証し続けているといっても過言ではないだろう。並列セッションのJim Kerby氏を引用すれば「過去2年は注目に値した」ということになるだろう。
技術設計報告書(TDR)の準備作業中であることもあり、今回のワークショップ会期中には設計の統合に関する多くの作業が行われた。一般施設とサイト検討(CFS)グループは、大部分のシステム・グループとともに合同会議を開催し、ベースラインを固めた。このステップは、私たちがTDR発表時に成熟したプロジェクト設計を示すことが可能となる証拠になろう。
今回のワークショップの開催期間中の「部屋の隅の象(誰もが解っているのに話題にするのを避ける問題)」は、相変わらずCERNのLHCの結果であった。加速器と測定器は、順調に運転している。3インバース・フェムトバーンを超えるルミノシティに達し、そのほとんどが分析されている。標準理論を越えたヒッグス粒子、あるいは物理学の兆候が見られれば、リニアコライダーの建設は意義あるものであり続け、次世代の実験に必要なエネルギーとルミノシティスケールも明瞭である。しかし、現時点で、これらの物理学は明らかになっておらず、次のリニアコライダーにどんなマシンパラメータを採用すべきか、も不透明なままだ。この状況は、2012年末までに、何らかの結果がでるかもしれないが、明確な結果は2015年に14TeVで運転を行うまで解らないかもしれない。適切な設計エネルギーが明らかになるまで、TDR以降、SRF技術開発を続けるとともに、コストパフォーマンスに特に力を入れて、様々なエネルギーに対処できるようILC R&Dプログラムを継続して行くことが正しい方向性であろう。
政治的に見ると、今後重要となるイベントは、2013年前半に発表される欧州戦略だ。これは欧州連合高エネルギー物理学プログラムの5ヵ年計画であり、それ自体、全分野に大きな影響を及ぼすものだ。Brian Foster氏とSteinar Stapnes氏は全体会議セッションで、欧州戦略の決定プロセスついて報告した。全リニアコライダー研究者グループからの政策方針書が提出され、研究グループによって検討が行われる。これらの検討は、2012年末までに行われることになっており、これはGDEのミッションが終わる時期と平行している。前途は不確かだが、将来は、依然として面白いままである。
ワークショップのハイライトのひとつは、間違いなく、アルハンブラ宮殿の見学であった。この素晴らしい古代遺物は、過去に存在していた人々と、彼らが成し遂げ、後世に残した価値を提示している。これは人間の飽くなき追求欲を表しているのだろう。時代とともに技術は進歩した。しかし、私は、物理学の分野で、アルハンブラ宮殿を造った人たちと同じ気持ちを共有しているのではないか、と感じた。訪問後、私はCFSグループのVic Kuchler氏とJohn Osborne氏がメモを共有しているのに気がついた。ILC実験ホールも、歴史的な建造物になると思いたい。
24 October 2011
Frank Simon
Breathe
22 October 2011
Frank Simon
The CLIC Physics and Detectors CDR
- 2011 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference
Valencia, Spain
23- 29 October 2011 - ILC Source/RTML/BDS+MDI Technical Baseline Review
DESY, Hamburg, Germany
24- 27 October 2011 - TESLA Technology Collaboration (TTC) Meeting
IHEP, Beijing, China
05- 08 December 2011 - 2nd International Workshop on Accelerator-Driven Sub-Critical Systems & Thorium Utilization
Bhabha Atomic Research Centre, Mumbai, India
11- 14 December 2011 - SiD Workshop
SLAC
14- 16 December 2011
- Sixth International Accelerator School for Linear Colliders
Pacific Grove, California, USA
06- 17 November 2011
■ニュース記事
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from Science 2.023 October 2011
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6つのハドロン・ジェットと大量の行方不明の横のエネルギーを含んだイベントが選択された。これは、超対称性粒子の崩壊から起きる兆候だ。しかし、もし、超対称性粒子が存在し、その質量が非常に小さい、という前提ではあるが。
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from Wired21 October 2011
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CMS実験から得られたデータは、3ビットバイト(超対称性と呼ばれている理論の証拠と解釈されることができた結果)でつくられているレプトンとして知られる粒子がかなり過剰であることを示している。
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from APS Physics20 October 2011研究者は、次世代の粒子加速器に必要な強い陽電子ビームを生成するのに必要な器材の重要な部分の実証を行った。
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from DESY20 October 201116か所の欧州の物理研究センターは、次世代研究基盤の中心技術問題に関し、相互の利益となる共同研究を行うために、欧州プロジェクトCRISPの枠組み内で初めて協力することになった。
■スライドショー
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Jean-Pierre Delahaye氏、引退 (Jean-Pierre Delahaye retires)画像: Erk Jensen氏、Perrine Royole-Degieux氏 今月始め、Jean-Pierre Delahaye氏はCERNのCLIC研究リーダーを引退した。彼に敬意を表したレセプションがCERNで行われた。 |











