ILC NewsLine 2007年1月25日号 [英文記事]
■世界の各地より
共通語を求めて-日本土木学会、ILC関連の活動をプレスに説明
(Finding a Common Language — Japan Society of Civil Engineers Announces
Their ILC-Related Activities to the Press)
昨年11月29日に、日本土木学会(JSCE)は、リニアコライダー土木技術小委員会(ILC小委員会)の活動背景と現状について、記者懇談会を行った。LC小委員会は、2006年6月に発足したものである(NewsLine2006年8月24日号参照)。委員会の目的の1つは、日本でILCを建設するための土木工学的な側面を理解するために、土木工学と物理学者の間の協力関係を活性化することである。小委員会は、プロジェクトに必要な計画、地質調査、設計、建設と維持管理の研究を行う。LC小委員会は、日本初となる物理学と土木工学の間のコラボレーションであり、今後の共同研究や支援への道を開く。
説明会の間、JSCEは日本の科学技術の現状、特に土木技術の現状や可能性について多くの質問がされた。具体的に、ILC施設は約40kmの双設トンネルと巨大な地下ホールと、それらに入っていくための立坑や斜坑のような地下構造物から成るだろうということを、土木技術者は説明した。「現段階では、これまで施工してきた地下発電所や地下備蓄基地や道路や鉄道トンネルなどの技術を活用し、建設することが可能であると考えられます」と、代表者は述べた。「一方で、急速施工技術、低価格施工、地山を緩めない高品質施工、周辺環境への環境緩和技術などの研究が引き続き必要であると考えています」
GDEのDesign Costボードのメンバーの一人である榎本收志氏(KEK)は「40kmに及ぶ長大な加速器施設を決められた精度、工期、コストで建設するにあたって、我々はJSCEとのより緊密な連携を築き、直面する技術的な課題を解決するために支援を得る必要があります」と述べた。
参加者は、これが物理学と土木技術(主に岩盤工学とトンネル工学) という2つの大変異質な学界の、初めてのコラボレーションであると強調した。「日本語の会話であるにも拘らず、共通の用語が少ないため、理解し合うのが難しいと感じることが時々ありました」と、今回の経験を初めて国際会議に出席することに例えた。「この壁を乗り越えることが重要であると考えています。お互いを理解し合うということです」
[英文記事]
■特集記事
Fermilab Todayより-ファイナル・カウントダウン:ILCテストビームに設定される中間子施設
(From Fermilab Today: The final countdown: Meson Facility set for ILC Test Beam)
Erik Ramberg氏が、最近改良された中間子テストビーム施設を紹介する。施設とビームラインは、最新世代の粒子検出器テストをホストするために、大規模なリフォームを行った。
水曜日に開かれたILCテストビームワークショップのオープニングセッションで、参加者に対して、中間子テストビーム施設で、ILCで検討されている高精度の測定器開発のためにどのような改造が行われたかについて説明された。この施設は、来週、運営がはじまることになっている。
ILC測定器の仕様は、現在まだ、大部分がビーム試験で達成実証されているわけではない。このため、ILCでの必要条件を満たすべく測定器性能を改善し、ILC加速器の完成と歩調を合わせて測定器開発研究を進める必要がある。その方法について議論するため、世界中の高エネルギー物理研究所の100人以上の研究者が、Fermilabで会合を行った。
Young-Kee Kim(Fermilabの副所長)によると、Fermilabはこの目的を達成するために、人員、基盤、研究開発用として2500万ドルをILCプログラムに投資してきた。この一部には、中間子テストビーム施設の6ヵ月にわたる大幅な改良が含まれている。中間子テストビーム施設で、低エネルギー衝突について習得することは、科学者たちがILCで最適な測定器を設計するのに役立つと期待されている。「次世代のカロリメータの鍵は、低エネルギー粒子の振る舞いを押さえるところにあります」と、施設ツアー中に、中間子テストビーム施設の運営管理者であるErik Ramberg氏が述べた。これまで、施設では低エネルギー(4GeV以下)のパイ中間子ビームを生成することができなかった。しかし、改良の結果、最低1GeVのビームも生成できるようになった。新施設は、ILCビームの時間構造(1ミリ秒という短時間の間にビーム衝突が集中して起こると、次の200ミリ秒は空白の時間帯となる)もシミュレートする。他にも、ビームライン上の可動標的の導入、実験の邪魔になる余剰物質の除去、テスト装置にビームをよりよくフォーカスする能力の向上、などが行われた。
会議室と4番目の追跡基地の追加、そして完全なケーブルネットワーク、移動テーブルと高精度ビデオシステムの設置など、研究生活環境の増強も行われた。
Ramberg氏は、水曜日の夕方、改良された中間子施設を見学者グループに紹介した。「新施設はなかなかの出来と言ってよいと思います。みなが非常に一生懸命に取り組みました。来週の稼動を本当に楽しみにしています」(Ramberg氏談)
[英文記事]
■ディレクターズ・コーナー
加速器諮問委員会(MAC)は、ILC基準設計をレビューする
(The Machine Advisory Committee Reviews the ILC Reference
Design)
ILC基準設計報告書(RDR)の完成と発表に向けた作業は順調に進み、新年1月10-12日に開催された加速器諮問委員会レビュー(MAC)にいたった。これは、2月4-7日に北京で開催される次のGDE会議でのRDR公開に先立つものである。2007年1月4日のコラムで述べた12月の「内部」コストレビューとは対照的に、このレビューは基準設計とコスト評価の両方をカバーした。
この最新のレビューは、第3回MAC会議であった。委員会が問題により精通するようになり、委員会に仕事を提示する我々の能力も向上し、毎回の会議は以前のものと比べて、より実質的で役に立つものとなってきた。委員会報告書は非常に支えとなる一般的なコメントで始める。「GDEの強い指導力により、かなりの設計の進化が成し遂げられてきたことをMACは評価します。2006年夏の状況と比較して、総プロジェクト・コストの削減が成功に終わりました。コスト削減のために多数の設計変更が行われ、性能重視のベースライン構成から、コストを意識した設計へ転換が進んでいます。これらの重要な変更を実行する難しいプロセスが設計を遅延させず、むしろ設計活動の関心を強めたことは、注目に値します」
MAC報告書の本文には、多くの有効なコメントが含まれており、その幾つかを我々はRDRに取り込むつもりである。ILCの技術設計に取り組むに際して有用なコメントも寄せられた。国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)は、このレビューについてMACに以下の諮問を与えた:
- 全体的なRDR概念の妥当性をレビューし、問題点を指摘、必要なR&D項目を調べ、目標性能を実現できそうかどうかについて答申しなさい。
- コスト評価の方法論をレビューし、問題点を指摘、答申しなさい。
GDEが過去半年にわたり行ってきた設計変更は、特にコストにかかわるものが非常に多く、MACへの2つの諮問項目は互いに強く関係している。従来、コスト情報が得られない状態での設計作業であったため、GDEによるILC設計のベースラインは性能重視に傾斜し過ぎたものであることを、MACはこれまでのレビューで指摘していた。今回、コスト削減のための半年の集中作業とその結果報告に接し、MACは、GDEの現在のRDR設計でコストパフォーマンスのバランスが回復されたとした。MACの言葉で結論付ける:
「GDE報告によれば、2006年7月に議論された最初のILCコスト評価は、高額過ぎるものでありました。これを受けて、コスト削減をめざす多数の設計変更が提案、検討されました。それぞれの変更提案に関する詳細な検討の結果、一部は採択、または却下、延期となりましたが、全体として、ILCの基本性能を損なうことなく、約20%のコスト削減が達成されました(2×250GeVの質量中心エネルギー、2∙1034cm-2s-1のピーク・ルミノシティ、4年間でfb-1の統合ルミノシティ、0.1%より小さいエネルギー拡散、1TeV c.m.へのアップグレードの可能性)」
私は、上のMAC答申が全てを物語っていると思います。プロジェクトは、ILCの物理学的な目的に合うコスト効率の良い基準設計へと進化を遂げてきた。我々が現在文書化しているこの設計は、我々のR&Dプログラムと技術設計活動の両方にILC建設提案を展開するために必要な強いガイダンスを与えてくれる。ILC設計は、主にバリュー・エンジニアリングの結果とR&Dプログラムの結果として、確実に我々の構成管理プロセスで進化し続けるだろう。
[英文記事]
■カレンダー
今後の会議、ミーティング、ワークショップ
USPAS
Texas A&M
University
15-26 January 2007
The 9th ACFA ILC Physics &
Detector Workshop & ILC GDE Meeting
IHEP, Beijing
4-7 February
2007
TESLA Technology Collaboration Meeting
Fermilab, Batavia,
Illinois
23-26 April 2007
Annual WILGA Conference
Warsaw University of Technology
Resort, Poland
21-27 May 2007
=
Collaboration-wide Meetings
■ニュース記事より
From PhysOrg.com
23 January 2007
物理学者は『ストリング理論』のテストを展開する
何十年も、科学者は-宇宙論は基本力と自然の物質は、ストリングと呼ばれる小さくて一次元のフィラメントに帰着することができると主張する-「ストリング理論」(それがテストされると予言しないので)に反対してきた。
[英文記事]
From PhysOrg.com
22 January 2007
新宇宙論は、最大の謎の2つを結合する
物理学者は、宇宙の謎を広く研究した2つの理論を結びつける理論を考案した:なぜ物質と反物質の間にはアンバランスが存在するのか(科学者は物質と反物質は同じ量を見ると思っているが、実際の観察では、反物質の量が少ない)。そして「ダークマター」の正体-得体の知れない素粒子は、遠い銀河で観察される余分の引力を説明するものと考えられていた。
[英文記事]
From ChinaNews
18 January 2007
科学者は、宇宙論的スーパーストリングが歌っているのを捜し求める
アルバート・アインシュタインは宇宙論学者たちは見ることができないものがそこに存在していると推理した。しかし、現在、科学者たちは重力波を生成する宇宙論的スーパーストリングが歌っているのを聞くことができるかもしれないと考えている。
[英文記事]
■アナウンス
第9回アジア地域次世代加速器推進委員会(ACFA)ワークショップとGDE会議
北京ワークショップの主催者は、印刷してタクシー運転手に見せると便利な地図やシャトルバスや登録に関する情報などを含んだ3回目の案内を発行しました。
ILC関連プレプリント
hep-ph/0701164
19 Jan 2007
Precision Calculations for
Future Colliders
hep-ph/0701156
21 Jan 2007
Scalar Dark Matter Effects
in Higgs and Top Quark Decays
EuroTeV Report
EUROTeV-Report-2006-106
Energy Adjustment Strategy for
Dispersion Free Steering at the ILC using the MERLIN Package ILCDFS